パスハ(イースター)までの不思議な暦

公開日 : 2009年02月27日
最終更新 :

 ギリシア正教における宗教行事として、最も重要で盛大なパスハ(復活祭・イースター)。前回も書きましたが、パスハの前の 40数日間はサラコスティと呼ばれる節食期間。チクノペンプティの後、宗教的な人はまず肉を断ち、カサラ・デフテーラ(聖灰月曜日ことしは3月2日)からは卵やミルク、チーズなどの動物性タンパク質を断ちます。でもタコやイカ、貝類などのシーフードはOKで、それと野菜を中心とした食事をとります。しかしパスハ直前の1週間はキリストの受難週(ことしは4月13日〜)で、その週はギリシア料理のほぼ全てに使われるオリーブオイルさえ使用しないようにして、数日前は全く何も口にしない人もいます。

 昔は聖職者だけでなく一般の人々の大半もそれらの決まりに従っていたので、パスハまでのこの期間のための特別な暦を用意したそうです。その暦はひとりの女性の姿をしています。彼女の名は「キラ・サラコスティ」。あえて訳すと「マダム節食期間?!」というカンジでしょうか(笑)。彼女は口がなく、眼も開けていません。そしてなんと彼女は足が7本あるのです!

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 この7本の足がパスハまでの7週間をあらわしています。昔、きちんとしたカレンダーがなかった時代に紙細工や小麦粉の練り粉細工で、この「キラ・サラコスティ」を作っていたとか。もちろん今日のアテネにこの習慣は残っていませんし、田舎の方でもしているかどうかわかりませんが、今でもアテネの小学校などではこの習慣を教えるそうです。写真のプリントは小学校の先生をしているギリシア人の友達からもらったもの。

 まずサラコスティさんに色を塗りますが、宗教的な存在なので、服の色は黒、他も暗めの色のみで塗らなければいけないそうです。節食期間のシンボルなので口がなく、目を閉じ、手を組んで祈っているポーズをしています。そしてサラコスティの期間に入って1週間過ぎるとサラコスティさんの1本目の足を切り取るのです!そうしてパスハまで週ごとに順番に足を切っていきます。学校では皆が足を切りたいのでモメるらしく、各週ごとに最もよい行いをした子が切ることになっているそう。

 キリストの受難週にあたる最後の足は、切り取ったらドライフルーツのいちじくの中にたたんで隠します。そして同じドライフルーツのいちじくを人数分用意して、皆、選んで食べますが、中にこの足が入っていたいちじくに当たった人は幸運に恵まれるということです。しかし学校はこの週から休暇に入るので、それまで足を切るのに夢中だった子たちもすっかりこのカレンダーの存在を忘れてしまうようです。なんだかふんだりけったりのサラコスティさんですが…^^;。

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 私は日本で大学までミッションスクールに通っていたので、授業には聖書の時間もあり、中間や期末試験にはテストもあったりして聖書の一部をまる暗記しなければならず、けっこう大変でした。しかし今、キリスト教圏の国に住むにあたり、知識的に役立つことも多かったりします。けっこう似たような行事を学校でした覚えがあり懐かしくなり、私も「キラ・サラコスティ」さんを壁に貼ってみました。パスハまでの数週間、足を切りながら待つとしましょう!

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