火事に遭いました〜

公開日 : 2009年11月21日
最終更新 :

 先週の土曜日の夜更けのことですが、なんと火事に遭いました。今まで火事を近くで目撃したことはありましたが、まさか自分の住んでいる場所が火事になろうとは…。ポリカティキーア(日本風に言えばマンション、集合住宅)の地下にある車庫、住民全員の車の駐車場から出火。怪我をした人はいませんが、1台の車が完全に焼け、車庫内は黒焦げ。消火活動は4時間くらいかかりました。しかもなんと放火の疑いがあるというのです。

 土曜の夜の11時ごろ、DVDを観ていたら、なんだか外でバーン!という爆発音のような音が…。10月末の銃声のこともあるので、もしや再び何かの襲撃では…と思ったのですが、猫もスヤスヤ寝ているし、まあいっかと映画鑑賞を続行。するとまた同じような音がします。これは何かおかしい!と思った瞬間、イソギオ(日本の1F)のブザーがけたたましく鳴りました。欧州はたいていそうですが、ギリシャの集合住宅もオートロックなので、訪問する人は、まずイソギオの建物全体の入口で、訪ねる人の部屋のブザーを押します。中の人が画像で誰か確認してOKならブザーを押すと入口が開くシステムになっています。

 「何かおこったんだ」と思いつつ、玄関に走ってインターホンをとると、最上階に住むオーナーの奥さんの声で「フォティア!(火事)」と叫んでいるではありませんか。他の部屋のブザーも次々に押して知らせているようです。驚いてドアを開けると続々、住民が階段を駆け下りてきて、向かいの部屋の小学生の姉妹も咳込みながらパジャマで外へ急ぎます。黒い煙がもうもうとたちのぼってきます。

 私もパジャマだったのでその上に急いでコートを羽織り、猫2匹は火元とは反対側で、庭に上り下りができるバルコニーに出しました。外へ出ると玄関付近や通りは近所の住民など野次馬でいっぱい。

 車庫の方を見ると、入口のシャッター近くのNさんの車が燃えているとのこと。両隣の車も少し燃えています。男性陣が庭用の水道ホースや消火器を使ってかなり火は下火に。そうこうするうちに消防車もすぐに到着して消火活動を開始。しばらくして炎は見えなくなったのですが、燃えているものがなんといっても車。ガソリンも含まれるため、匂いも強烈だし、そう簡単には鎮火しません。くすぶった黒い煙が途切れることなく漂ってきます。私が聞いた爆発音はタイヤが破裂する音でした。

 皆、軽いパニックで自分の車が大丈夫か確認したいのですが、中は煙で全く見えないし、警察が近寄らないようにと注意します。地下には部屋ごとの物置もあるので、中のものの安否も気になります。特に中年のギリシャ人女性たちはパニックで、皆まくし立てて質問しあったり、どんなにびっくりしたかを説明したり、とにかくすごい剣幕で話しています。

 真夜中の3時ごろになってようやく消火。煙もだいぶ消えて中が覗けるようになり、我が家の車は燃えた車とは一番離れた奥の方だったので真っ黒だけど無事が確認できました。ほっとしたけれど、物置スペースのドアも真っ黒。熱くて開けられませんでしたが、中は燃えていないにしても、ススで真っ黒なのは予想がつき、げんなり。

 オーナーの奥さんに「誰が火事を発見したの?」と聞いたら、隣のポリカティキーアの住民がたまたまお風呂の窓を開けたら、煙がすごくて身を乗り出して外を覗き、ウチの建物の車庫からの煙に気付いたとのこと。ギリシャは夏なら皆バルコニーで夜遅くまで食事をしたり、くつろいでいる人が多いので発見も早かったでしょうが、冬はさすがに夜、窓など開けたりしないので、偶然、窓を開けた人によっての早期発見は不幸中の幸いでした。もし長時間、誰も気付かなったら、どんどん上に延焼してきたり、車庫にあった全ての車が焼けて、最悪、上の階が陥没した可能性もあったと説明され、ぞっとしました。

 しかしこういう際も国民性の違いを痛感^^;私は逃げる前にとりあえず鎮火はされそうだから、逆に消火活動の浸水が心配で窓は完全に閉めてきたのですが、他の人たちは窓を全て開けてきたというのです。警察が一時的に中に入っていいと言った際、消防の人々も「煙が広がったり、水が入るから窓を閉めた方がいい」と言っていました。私は中に戻った際、煙が入らないようにドアの隙間にテープを貼ったり、外は寒いのですっかり着替えてきたのですが、ギリシャ人女性たちは出てきた私に、「窓を全部開けてきちゃったわ」とか「寒いけど中に入るのは危険かしら」とか言いながらシルクのパジャマ一枚でいるので、「寒いでしょ。何か着たり、煙はまだどんどん出ているから窓を閉めてきたほうが…」と言いかけると、もう既に聞いてない^^;「車はホントに大丈夫かしら?」とか「物置の中のものはめちゃくちゃね」とか別の質問に移行しております〜。慣れてはいるものの、ホント尋ねておきながら人の答えを聞いちゃいない!興奮してるから寒くないのでしょうか。ずーっと話し続ける間に「今、この話している間に、窓を閉めてくればいいのに」と思いつつも、何を言ってもダメだと思い、ずっと聞き役に回っていました。そして警察が「イソギオの入口にこじ開けたような跡がある」と叫ぶと、皆で一斉にそこへ走って行って、「この傷は前からなってたよ」、「そんなわけないよ〜」とわーわー議論。皆でドアをベタベタ触ってしまって、私は「そんな皆で触ったら、犯人の手がかりがなくなるのでは…」と心配になりましたが、興奮しているので止めるのは不可能。皆がしゃべっていてお互い他の人の言うことを聞いちゃいません^^;もう朝まで生テレビ状態です。

 また放火された車の持ち主のNさんは、昨年ギリシャで最大の政治汚職スキャンダルとなったS社事件の関係者。ふだん会って挨拶をする限りでは穏やかで、庭の草木の手入れなどをしてくれていて好人物にしか見えないのですが、昨年は1ヶ月拘置所にいたことのこと。黙秘を貫いて保釈金により釈放されたのですが、裁判係争中だとか。ウチと同じ階のDさんは「Nさんに対する何かの脅しじゃないのか」と言います。また一方でこのポリカティキーアには変わった判決を出すことで有名(?)な裁判官がなんと2人も住んでいるので、彼らが出した判決で恨みを買ったのではという推測も囁かれました。Nさんの隣の少し焼けた車は裁判官のMさんのものだったので、Nさんは「Mさんの車と間違えらえて放火された。とばっちりだ」とか言ってるし…。

 やっと部屋に戻れたのが4時。その間、猫たちは人間たちの騒ぎをよそに、バルコニーのカウチでぐっすり眠っておりましたが…。私は精神的なショックと寒さでどっと疲れ、ベッドに倒れこみました。

 しかし翌日、なんと地下の車庫を通っていたトイレの下水管がダメージを受けていることが発覚。汚水が車庫に流れてしまうため、トイレが使用できず…。日本のように日曜日でも24時間、水のトラブルサービスなどは期待できません。チラシなどはポストに入っていることもありますが、すごい高い料金をふっかけてきて態度のデカい割りに、腕はイマイチのオレ様修理人しか来ないからダメだとオーナーは説明します。しかも電話とインターネットのケーブルも焼き尽くされてしまったとのこと。電話もネットも使えない状況に…(涙)。

 でもなんとかコネで月曜日にしっかりした腕前の修理人が5人も来て、3時間ほどで配管を全て取り替えてくれました。取り外された配管は50mにも渡って黒焦げになっていました。トイレが使えてこんな嬉しいのは初めてでした。2日間だけでも大変なのに、地震で被災したりすると大変だろうなあと実感したものです。

 ネットの方はそれぞれの部屋によってプロバイダーは違うのですが、大元のケーブル修理はOTEという電話局の管轄。これがまたお役所仕事で悪名高い会社なので、もう1ヶ月くらい不通だわね〜と覚悟していました。私はメールで仕事の原稿や画像を日本に送っているので大パニック。人のオフィスのパソコンを借りたり、携帯モデムを使ったりしながら、超急ぎのものだけ返信したりしていました。しかしなんとOTEも予想外に早く、火事から4日後の木曜日の朝、修理人がやって来ました!地中のケーブルなので、地面を掘り返す大変な工事なのですが、その夜、外出先から帰宅するとネットが回復していました!

 窓を開け放していた他の部屋に比べ、一番被害がなかった我が家ですが、それでも床やカーテン、特にプラスティック製品はススで真っ黒になっており、洗濯や拭き掃除をしまくる羽目に…。まるで大晦日の大掃除。改めて煙の凄まじさにびっくりしました。お隣はこの夏にリノベーションをした白くて真新しいキッチンが真っ黒に…。気の毒で言葉もありません。 

 そして車や部屋の安否を気にしながらの寒空の下の4時間は堪えました。すっかり風邪をひいてしまい、おまけに煙で喉をやられ、しばらくの間、老婆のような声でした…。しかし驚きの事件はこれだけに済まなかったのです。ネットの回復した夜、「ひと段落したね〜」と話していた時に、またもや突然、玄関ブザーが!そのお話は次回に書こうと思います。

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