火事の次は隣人逮捕

公開日 : 2009年11月26日
最終更新 :

 前回、火事に遭ったことを書きましたが、燃えてしまった下水管やネットや電話のケーブルもギリシャとしては異例のスピードで無事修理され、やっと通常通りの生活に戻りました。メール等下さった多くの皆様、ご心配おかけしました。体調もすっかり大丈夫です。家中、ススだらけになった掃除は大変でしたが、年末大掃除を早めに済ませてしまったと思えば気分もいいし、キレイになった我が家を眺め回しては自己満足に浸っておりました。

 ところが、そんな夜、またもやイソギオ(日本の1F)のブザーが夜更けに鳴り響きました。「警察です」と言うのでブザーを押すとドアが開き、続々と数人の警官が入ってきます。写真は放火された車。

Fire1.jpg

 我が家は1F(日本の2F)なのでドアを開けると、エレベーターを使わず階段を登ってくる警官たちがすぐ見えます。「何事?」と尋ねると「静かに。階段の電気をつけないで。ドアを閉めて外に出てこないでください」と言って暗闇の中をなんと10人もの警官が登っていきます。

 連日の聞き込み調査ではいつも2人の警官がやってきたので、10人というのは明らかに何か違う雰囲気。しかも全員、防弾チョッキを着ていています。お向かいさんの姉妹のお母さんも驚いてドアを開け「何事?」と言いますが、再び警官が同じことを言うので、やむなくドアを閉めました。

 なにやら無線のような声がするので、バルコニーから外を見ると、隣のポリカティキーア(マンション、集合住宅)のピロティに何台ものパトカーやバイクが停まっています。待機している警官も数人おり、無線で連絡を取り合っているようです。突然、捕り物帖のような展開にびっくりしながらも流れ弾にでも当たったら大変と思い、家の中に入りました。

 1時間くらいたった頃でしょうか。階段を降りる足音が…。ドアの覗き穴から見ると電気がついていて、なんと3Fに住む医師のIさんが手錠をかけられて連行されていきます。このポリカティキーアにはMさん(男性)とDさん(女性)という2人の裁判官が住んでいるのですが、Iさんは裁判官のDさんの夫。住人の大半が「あの夫婦は変わっている」とよく言ってましたが、私には2人ともいつも優しく、日本にもいろいろ興味を持ってくれたりして入口付近で長い立ち話をしたりしていたのでショック。

 翌朝、オーナーの奥さんに聞いたところによるとなんと拘束理由はエアガンの不法所持と乱射!Iさんは以前150キロの巨漢で、減量、ダイエットのために、胃の一部切除手術(胃バイパス術)を受けたらしいのです。その後、スリムにはなったというかひょろひょろになってしまい、私が住み始めた時にはギリシャ人にしてはひどく痩せてるな〜と思うくらいの激ヤセ体型に。

 手術との因果関係は不明ですが、本人曰く、術後から様々な形で体調に異変が。特に今夏、不調がピークに達し、歯が10本以上も同時に抜け落ちたり、転ぶとすぐに骨折したりと万年病人状態になってしまいました。医師として働けなくなり、家にこもる日々が続き、だんだんノイローゼ気味になってきたというのです。

 そんな彼がストレス発散のために始めたのが、なんとエアガンのバルコニーでの乱射!もちろんギリシャでもエアガンはライセンスが要り、競技場など限られた場所での使用が義務付けられています。ところが、Iさんは1日中、バルコニーにとりつけた的に向かって撃ち始めたらしく、上下階の住民はその音に相当悩まされていたとか。我が家は庭側に面し、Iさんは反対側の通り側なので聞こえなかったのですが、騒音に限らず時には弾が通りや通りを挟んだ向かい側のポリカティキーアのバルコニーに飛んできたりして、危険だとずいぶん苦情が出ていたそうです。そこで止めないというのが相当気を病んでいた証拠なのでしょうが、「ウチの妻は裁判官だから、何を言ってもムダだ!特権があるんだ!」みたいなことを怒鳴り返していたというからびっくりです。

 奥さんの方もイソギオの一部の空間を無断改装しようとし、オーナーの反対にあうと、職権濫用で国の許可証をもらってきたり(オーナー談)と問題アリの住人だった模様。またギリシャは冬になるとカロリフェル(なぜかフランス語)と呼ばれるセントラルヒーティングシステムを使うのですが、「ウチは暖炉があるから使う必要はなかった」などと言い、オイル代を踏み倒したりとオーナーにとっては常に頭痛のタネだったらしいです。

 この日は夕方頃、乱射が始まり、なんと向かいの建物のバルコニーにいた幼児の腕をかすったとか。いくらプラスティックの弾とは言え、当たれば怪我をするし、目にでも当たったら失明の恐れもあります。激怒した近所の住民たちが一斉に警察に訴え、夜を狙って突然の拘留となったようです。しかし数人の住人は「彼が火をつけたのではないのか」とまで推測。車に放火されたNさんは、カロリフェルやイソギオの改装の件で真っ向からIさん夫婦と対立していたとか。確かに2人が町内全体に響き渡るくらいものすごい言い争いをしていたのは聞いたことがありました。その際、Iさんが「オレは知ってるんだそ、お前のブラジルの船のことを…アマゾン川の件だ」とか叫んでいたのは、もうまるで土曜ワイド劇場のようでした。

 しかしギリシャ人はケンカも派手だし、言いたいことを激しく言い合いますが、その分、後はケロッとして挨拶を交わすような国民性。そんな口争いから放火をするほど精神を病んでいるようには見えないのですが…いろいろな噂が近所中に広まっている始末。

 昨日、バルコニーで洗濯物を干していたら、火事を発見してくれた隣の建物のおばさんが話しかけてきて、Iさん逮捕劇を興奮して話します。「あなたんとこの建物はなんだか映画みたいだねえ。火事の次は逮捕かね〜。今度何かおこったら、うちは3Fに空きがあるから引っ越しておいで」などと言われてしまいました^^;逮捕の翌日には朝からテレビ局のリポーターが来て、まさに事件の現場となったイソギオや車庫から中継しておりました。

 そして逮捕から5日後、ポリカティキーアの門を開けて外出しようとした私に、目の前を走る車からクラクションが。中を見るとなんとIさんが帰還!奥さんのDさんが運転、本人は助手席からなんとVサインをしながら満面の笑みで手を振っています。思わずあっけにとられてしまいました。さすがは打たれ強いギリシャ人です。

 とりあえず放火容疑がかかったのかどうかは不明ですが、釈放されてしまいました。皆、早期釈放は奥さんのDさんの力だと囁いています。ギリシャはけっこうコネや賄賂がまかり通る国なので、そうなのかも知れませんが、放火犯は謎のまま。

 警察が来て説明した最新情報は明らかに放火。Nさんの車のボンネットを開けて一部を破壊し、オイルを撒いて火をつけてあったそうです。それを聞くとやはり政治汚職スキャンダルに関わるNさんに対する脅しだろうと思うのですが…。

 今日は焼けた車がついに撤去され、車庫を洗う大きな洗浄車が来ています。今後、何も起こらないのを祈るばかり。身を守るためにも、「家政婦は見た!」を地でいくような近所のおばさまがたの井戸端会議には参加して情報収集に努めておいたほうが良さそう。「近所の住人に気をつけてね」と周りに言われる日々です。

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