アテネの第一墓地はまるで博物館

公開日 : 2010年07月20日
最終更新 :

 アテネの第一墓地は都心にありながら、緑に囲まれた広大な墓地です。名画「日曜はダメよ」の主演女優であり、パルテノン神殿から略奪されたエルギン・マーブルの返還運動に力を注いだ政治家でもあったメリナ・メルクーリをはじめとし、多くの政治家や俳優など著名人の墓があり、お墓参りに来る人が後を絶ちません。見事な大理石の霊廟や、素晴らしい彫刻があることで知られており、まるで博物館のような墓地と言われています。

seme2.jpg

 以前から、この近く,に住むギリシャ人の友達に、第一墓地をリポートするべきだと言われていました。メトロのシングルー・フィックス駅から歩いて15分くらいですが、訪ねてみると緑の木陰も多い爽やかな場所で、まさに都会のオアシスです。アテネを何度も訪れているリピーターの旅行者で、主な観光地をほぼ制覇してしまった方などにおススメ。墓地の近くには老舗ジャズクラブ・ハーフノートがあります。

 広大な敷地ですが、入るとすぐに目にとまるのは、現首相パパンドレウのお父さんアンドレアス・パパンドレウのお墓(画像右下)。今までギリシャの首相なんて日本で知られていなかったと思うのですが、今回一時帰国して、もう誰もがパパンドレウ首相を知っているのには笑えました。まああれだけギリシャ危機が報道されればそうなるでしょうね^^;彼や彼のお父さんはともかくとして、おじいさんにあたるゲオルギオス・パパンドレウさんは数々の英断を下した大政治家として知られています。

 左下の画像は以前べナキ博物館のカフェの紹介の際に書いた綿花商人・べナキス一族の墓です。墓というよりはもうほとんど霊廟というか、家屋(?)のような造り。最高級の大理石でつくられており、べナキス家の財力のほどが伺えます。

seme.jpg

 優れた彫刻として一番有名なのは、トップの画像&下の画像の「眠る少女の像」。この少女は18歳くらいで亡くなったのですが、資産家だった両親はそれを嘆き、彼女がただ眠っているだけだと信じたい一心で、当時、若くして才能ある彫刻家として知られていたヤヌーリス・ハレパス(1851〜1938)に依頼してつくらせたもの。この少女像は彼の作品の中でも最高傑作と言われ、ギリシャ国内はもちろん、芸術愛好家の間では、ヨーロッパ中で有名なのだそうです。

 少女の表情も柔らかで美しく、確かに亡くなったというよりは優雅に眠っているかのような雰囲気を漂わせています。実際に見ると衣服や寝具の質感などが見事にあらわされており、いつまでも見ていたいような気持ちになります。

seme3.jpg

 ギリシャを代表する彫刻家のハレパスは大理石の採掘夫の息子としてティノス島に生まれました。アテネとドイツのミュンヘンで芸術を学び、若くして頭角を現しました。この少女像は彼が26歳の時の作品です。しかしその翌年、神経を患い、自分の作品を全て壊してしまうほど病状が悪化し、数年後にはコルフ島の精神病院に入院するまでになってしまいました。その後、母にティノス島に連れ戻されましたが、厳しい管理下に置かれてしまい、一切の創作活動を禁止されてしまいます。

 この状態は1916年に母親が亡くなるまで続きました。母亡き後、65歳になっていたハレパスでしたが、かなり長いブランクの後、再び創作活動を開始しました。母校のアテネの芸術学校やそこでの仲間たちが彼を支え、再び見事な作品を創り上げるようになり、数々の名誉ある賞も受賞しました。87歳で亡くなるまで精力的に創作に励み、最後の8年間はアテネで過ごしたといいます。創作期が若い時期と老いてからの2期に分断されていることでも珍しい彫刻家だと言われています。

seme5.jpg

 他にも美しい彫刻やお墓にしてはユーモアたっぷりの彫刻などたくさんあり、墓地を訪ねているというよりは彫刻の展覧会にきたような気分になるくらいです。下の画像は前述のメリナ・メルクーリの墓。入ってすぐの左手にありますが、入口の門の辺りにいるおじさんたちに聞けば、有名人のお墓をいろいろ教えてくれます。

 様々な大理石の彫刻を見ながら、ギリシャの近代史のひとコマを垣間見ることが出来るくらい、多くの著名人の墓があります。真夏は暑いけれど、午前中に訪ねれば緑の木陰や花々が咲き乱れる中で、散歩を楽しめるのではないでしょうか。春や秋はもっとおススメです。

seme6.jpg

 さてここでトップの画像をもう一度、見てみてください。最高傑作なのですが、出来上がった際、ハレパスの若い弟子が「先生、素晴らしいけれど、少女はベッドで眠っているのでしょう?ひとつ間違いがあります」と言ったそうです。「間違い」というほどのことではないですが、依頼は亡くなったのではなく、眠っているだけ(生きている)の少女の像をつくってほしいという内容でした。そうなると確かに不自然な点があります。これは特につくり直されることはなく、そのままになっているのですが、何かお気づきになったでしょうか?

【記載内容について】

「地球の歩き方」ホームページに掲載されている情報は、ご利用の際の状況に適しているか、すべて利用者ご自身の責任で判断していただいたうえでご活用ください。

掲載情報は、できるだけ最新で正確なものを掲載するように努めています。しかし、取材後・掲載後に現地の規則や手続きなど各種情報が変更されることがあります。また解釈に見解の相違が生じることもあります。

本ホームページを利用して生じた損失や不都合などについて、弊社は一切責任を負わないものとします。

※情報修正・更新依頼はこちら

【リンク先の情報について】

「地球の歩き方」ホームページから他のウェブサイトなどへリンクをしている場合があります。

リンク先のコンテンツ情報は弊社が運営管理しているものではありません。

ご利用の際は、すべて利用者ご自身の責任で判断したうえでご活用ください。

弊社では情報の信頼性、その利用によって生じた損失や不都合などについて、一切責任を負わないものとします。