バンコク出身の25歳女性起業家が語る、エコビジネスへの情熱

公開日 : 2021年07月28日
最終更新 :
筆者 : 日向みく
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サワディーカー。バンコク2特派員のぴっぴです。今回は、バンコクで地球環境に配慮したエコフレンドリー商品を販売しているタイ人女性起業家、Gip(ギップ)さん(25)にインタビューさせていただきました。

なぜ彼女は当時22歳という若さで「起業の道」を選び、さらにエコビジネスを始めるに至ったのでしょうか。その生き方や環境保護に対する考え方についても深く迫ります。

彼女の人生を変えた1冊の本『金持ち父さん 貧乏父さん』

――それではGipさん、まずは簡単な自己紹介をお願いします。

バンコク出身のGipです。アサンプション大学でビジネス英語を専攻して卒業しました。現在はタイで「EarthTeam」というオンラインショップを運営し、エコフレンドリーな製品を販売しています。

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▲EarthTeamで販売されているエコフレンドリーな製品

――いつ、どうして独立しようと思ったのですか?

最初にお伝えしておくと、私の両親は経営者ではないですし、私自身もともと「ビジネスをする」という発想はありませんでした。大学を卒業したら就職して、一生懸命働いて、昇進して......そんな人生を歩むのだとずっと思っていました。

でも大学時代に『金持ち父さん 貧乏父さん』という本に出会ったんです。その本を読んで初めて、「起業家になりたい」という感情が芽生えました。

大学在学中にはビジネス志向の仲間たちと交流する機会に恵まれ、そこで起業家としてのマインドセットができましたね。卒業後は2年ほど英語教師として働き、その仕事を辞めたあとに独立しました。

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▲Gipさんの人生を変えた本『金持ち父さん貧乏父さん』

――なるほど。1冊の本がGipさんを起業家人生へと突き動かしたんですね。『金持ち父さん貧乏父さん』で、どの部分にとくに影響を受けたのでしょうか?

この本は私に「感情に左右されない人生を送ること」の大切さを教えてくれました。「ラットレース(働けど働けど楽にならない生活)の概念」についての話もハッとさせられましたね。

以前の私であれば将来に大きな不安を感じて、ほかの生き方を模索することなく、安定を求めて会社員になっていたと思います。でも本を読んでから自分の人生を見つめ返し、「私は本当はなにがしたいのか、なにができるのか」について深く考えるようになったんです。

「会社員になるのが悪い」という意味では全くなくて、自分で能動的に選んだ生き方であるなら、どんな道でもすごく素敵だと思います。問題なのは、不安とか恐怖とかそういった感情に支配されて、生き方について考えることを放棄してしまうことです。私は自分の生き方について真剣に向き合ったことで、「起業してみたい」という本心に気付くことができました。

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▲Gipさんのバイブル本『金持ち父さん貧乏父さん』にはたくさんのマーキングがされている

――大学在学中に本に出会い起業を決意したとのことですが、英語教師として働いているときもずっとその野望を秘めていたのでしょうか?

はい。本を読んだ直後はまだ、起業に向けた具体的な計画は立てていませんでした。ただとても強いインスピレーションが私のなかにあって、漠然と「いつかビジネスをしたい」という夢を持ち続けていました。卒業後はひとまず、長年の夢であった英語教師として働くことにしたんです。

それからしばらくして「そろそろ起業しよう!」という思いに至ったのは、私がエコロジー製品に興味を持つようになったから。「私には世の中に伝えたいことがある。作りたいものがある。ビジネスを通じて、そのメッセージをより多くの人に届けたい」という思いが沸々と湧き上がってきたのです。

エコビジネスを始めたきっかけは、台湾土産のエコストロー

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▲EarthTeamのプロダクト「エコストロー」

――エコビジネスを始めたきっかけは何だったのでしょうか?

教師を辞めてしばらくしたある日、台湾人の友人が台湾土産にエコストロー(再利用可能なストロー)をプレゼントしてくれたんです。当時は今ほど環境に配慮した取り組みがなされてなくて、人生で初めて触れたエコロジー製品に衝撃を受けました。

「そうか、個人レベルでも環境を守るためのアクションができるんだ」と気付いて込み上げるものがあり、嬉しくて泣きそうになりました。このストローとの出会いが、私の環境に対する意識を大きく変えたのです。

そこから環境問題について深く勉強するようになり、次第に「自分でエコフレンドリーな製品を作って販売したい」という想いを強くしていきました。その原点は、かつて私がエコストローを手にしたときに感じた喜びです。より多くの人に私の体験をシェアしたい、エコロジー商品との出会いをきっかけに環境問題に意識を向けてほしいと思いました。

そして2018年12月に、EarthTeamを立ち上げました。

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▲EarthTeamのプロダクト「折り畳み式カップ」

――御社の製品はどこで製造されていますか?

すべてタイで製造されています。私自身がデザインした商品もあります。

――主な販売促進方法についてお聞かせください。

私の販売促進戦略は、"ストーリーテリング(Story-telling)"です。EarthTeamの真の事業価値は、実際の商品というよりも「環境保護のアイデア」だと思っています。そのアイデアや商品に込めた想い、背景にあるストーリーを消費者にダイレクトに届けるべく、現在はFacebookやInstagramなどのSNSで発信を続けています。

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▲EarthTeamのプロダクト「ブックカバー」

使い捨てプラスチックを減らして環境を守りたい

――御社では負傷したウミガメのための救済基金を設立していますよね。そのきっかけは何だったのでしょうか?

海洋プラスチックごみ問題についての論文を読むうちに、マイクロプラスチックがウミガメに大きな健康被害をもたらしていることを知ってショックを受けました。最近の研究では、ウミガメがプラスチック片をひとかけらでも飲み込んでしまうと、致命的なダメージを負うリスクがあることが明らかになっています。

ウミガメがプラスチック片を200個以上飲み込んでしまった場合の死亡率は100%、14個の場合は50%、1個の場合は22%、といったデータもあります。2019年にフロリダ州の海岸に打ち上げられて死亡した子ガメの体内からは、104個もの細かいプラスチック片が検出されました。

これらの統計を知って、「このままではいけない、私も何か行動を起こさねば!」という思いに駆られました。いろいろ考えたすえ、私が今できることとして、タイの負傷したカメを救済するための基金を立ち上げ、EarthTeamの収益の一部を寄付しています。

参考:

CNN「死んだ子ガメの体内から100以上のプラスチック片 米海岸」

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――環境問題のために個人でできることとして、どんなことがあるでしょうか?

そうですね。今あるモノを普段の暮らしのなかで大切に使うことや、ごみの再生利用、使い捨てプラスチックの代わりに「エコバッグ」や「マイボトル」を取り入れてみるとか、そういった行動が地球環境を守ることに繋がると思います。

エコビジネスにおける今後のビジョン

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――今後、ビジネスを通して成し遂げたいことはありますか?

弊社のミッションは「より多くの人に環境問題を意識してもらうこと」。だから私が常に目標にしているのは、「より多くの人にEarthTeamを認知してもらうこと」です。とてもシンプルなゴールに思えますが、これを達成するためにはすべきことが山積みで、一生終わりがないような気がしますね。

――最後に、起業を目指す人たちに向けてメッセージをお願いします。

誰もがビジネスを始めるのに十分な自信や準備があるわけではありません。だからこそ「失敗するか成功するか」ではなく、「自分は世の中の人に何を与えられるのか」ということに焦点を当ててみてはいかがでしょうか。そこには必ず価値があって、あなたの価値を買いたいという人がいるはずです。

―Gipさん、すてきなお話をありがとうございました!

▶本記事の英語版(個人ブログ)はこちらから

■EarthTeam 詳細情報

※タイ国内のみの販売です

※問い合わせはタイ語もしくは英語

筆者

タイ特派員

日向みく

バンコク在住ライター。中南米やアフリカ、中東を含む世界43ヵ国を訪れた旅好きです。

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