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日本国内/別府特派員ブログ 藤井 さなえ

日本国内・別府特派員が現地から日本地域に至るまで、旅行・観光・食事などの現地最新情報をお伝えします。


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大分自動車道速見I.Cから車で約5分。大分県日出町と杵築市の境の山中にある「水の口湧水」は、豊の国名水15選に選ばれている県内屈指の湧き水スポットです。
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湧水量は日に3,000〜5,000トンにも及び、湧水池の周囲には水汲み場と親水公園「水の口湧水公園」が併設されています。
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山と農地に囲まれ、民家もまばらなこの場所に、ポツンと一軒の豆腐屋が営業しています。
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豆腐屋の名前は「山豆苑」(やまずえん)。便利がいいとはいえない立地にもかかわらず、お客さんが絶えない人気の豆腐店です。
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山豆苑は創業約20年。現在は店主の髙村典伯(のりひろ)さんと奥様の典子さんの二人で営業しています。豆腐作りと接客は主に典伯さんの担当。典子さんは配達を受け持ち、お客さんの多い土日に限り典子さんも店頭に立ちます。


髙村さん夫妻はもとは大分の人ではありません。典伯さんは大阪生まれ、典子さんは東京生まれです。
「僕の父は熊本県の小国町の出身で、大阪に出て働いていました。でも父が70歳を過ぎて、田舎でゆっくりしたいと故郷の小国町に帰ることにしたんです。」
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「しかし、小国町ではなかなか気に入る物件がなくて、とりあえず知人の紹介で大分県の内陸部に位置する「山香(やまが)」に移住することになりました。僕は引っ越しの手伝いのために付いて来ただけだったのですが、両親に「行かんでくれ〜」と泣きつかれて。結局、僕も一緒に大分に残ることになりました。」
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最初にこの場所で豆腐屋を始めたのは、典伯さんのお父様だったそうです。
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「この店をオープンする以前、水の口は湧水地としてまだ整備されていませんでした。それでも、湧き水の存在を知る人が数多く訪れていたので、ここで何か商売ができないかという話をしていたんです。すると父が突然、『水の口で豆腐屋をやろうと思う』と言い出して。」


典伯さんのお父様は、その時すでに70代でした。当然、家族は大反対です。典伯さんも会社に勤めていたので、「後で手伝えって言っても無理やで?」と言って止めました。しかし、お父様は「誰がお前らに手伝え言うたんかい!ワシの楽しみでするんじゃ〜!」と言いはり、豆腐屋を開業。

そんなお父様も93歳と高齢になり、最近はほとんどお店には出ていません。しかし今でも、真夜中に「何か食べさせてくれ」など、わがままを言うことも少なくないんだとか。豆腐屋さんというと朝が早いイメージがありますが、夜中に起こされるのは相当辛いのでは?
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「朝早いというより、夜中から作業しないと間に合いません。豆腐って、食品衛生法で冷やしてからじゃないと売ってはいけない決まりになってるんですよ。だから、夜のうちに作って冷やしておかないと、翌朝に間に合わないんです。」


夜のうちに仕込んだ豆腐は、水にさらして10度以下に冷まします。
「水の口湧水の水は自然に湧き出したものですが、うちのはボーリングで掘って自噴しています。水の口湧水と少し水の味が違う、というお客さんもいますね。」
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これは豆腐をパック詰めする機械です。手動で一つずつパックする機械は、もう今ではめずらしくなりました。

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思わぬきっかけで豆腐屋をやることになった典伯さんですが、お父様から受け継いだ手作りの味わいが話題を呼び、今では遠方からわざわざ買いに来るお客様も少なくありません。

「うちの父が育った家庭では、家族で食べる豆腐を自宅で作っていました。祖母が豆乳ににがりを入れて豆腐を作っていたのを思い出して、父は豆腐屋を始めようと思ったそうです。」


現在、山豆苑で販売されている商品は、木綿豆腐・おぼろ豆腐・こんにゃく・納豆・油揚げ・豆乳・おからなど。

スーパーなどには基本的には卸していませんが、わずかながら他店でも取り扱いがあるそうです。
「金曜日だけは、「トマ王」さん(大分県日出町にあるトマト農園)の販売所に豆腐を配達しています。でも、7月中旬でトマトが終わってしまうので、トマ王さんでうちの豆腐が買えるのもそれぐらいの時期までです。あと、唯一卸しているスーパーが、杵築にある「スーパーコマツ」さん。ここには日曜日だけ出しています。あとは杵築にある家内の実家です。常時置いているわけではないんですが、のぼりが出ているときは販売しています。」


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「納豆は週一ぐらいで仕込みます。納豆って作るのに3日かかるんですよ。」
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「こんにゃくは柚子・青のり・唐辛子の3種類です。かたまりを一個ずつビニール袋に入れて販売しています。」
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今回は特別に、こんにゃくと豆腐をお店で試食させていただきました。
柚子こんにゃくは、乾燥させて砕いた柚子の皮を混ぜ込んでいるので、自然な柚子の香りが口いっぱいに広がります。大きな皮に当たると、ちょっと得した気分。
とうがらしこんにゃくは刺身でもおいしいですが、余ったらサイコロ状に切ってごま油と醤油で炒め、一味をかけると酒のつまみにピッタリ。
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「こんにゃくはポン酢で食べてもいいですし、柚子胡椒をお好みで付けてもおいしいです。梅肉も合うんですよ!シンプルにお醤油だけというのもオススメです。」
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豆腐は冷や奴でいただきました。昔ながらの素朴な木綿豆腐でありながら、しっとりときめ細かくホロホロと崩れるような優しい口当たりが特徴です。国産大豆を100%使用し、大豆の味がしっかりと感じられます。付け合わせは、豆腐を卸している「トマ王」のトマトです。
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油揚げは一般的なものよりも肉厚なので、煮物にしても食べごたえバツグン。おからはマヨネーズと和えて、ポテトサラダのようにしても美味しいそうです。
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典伯さんと一緒に山豆苑を切り盛りする、奥様の典子さん(右)。典子さんはご両親が大分出身で、東京で生まれ育ちました。お父様の定年退職をきっかけに、お父様の故郷である杵築に家族で戻ってきたそうです。典伯さんと典子さんの出会いは、このお店でした。


「山豆苑を知ったきっかけは、地元の機関誌に掲載されていた記事だった」という典子さん。昔から豆腐が大好きだったこともあり、さっそく山豆苑を探しはじめました。

「何度か探しに行って3回目ぐらいのときに、地元の人に場所を教えてもらい、ようやたどり着くことができました。でも到着したのが午後3時過ぎだったので、お義父さんに『豆腐はもう無いんじゃわ、店も終わってるんじゃわ』って言われて。その時、豆腐の代わりにと、典伯さんがこれをくれたんです。」
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「これはおからを3回絞って最終的に出たキメの細かいおからです。一度に細かい布で絞ると目詰まりするので、荒いの→中くらいの→細かいの、という順番で3行程に分けて作ります。30丁分の豆腐からこれだけの量しか採れないんですよ!わたしはこのおからの玉を『玉コロコロ』と呼んでいます(笑)」と典子さん。

「典伯さんから手渡された玉コロコロを持って車で帰っているときに、ふと『わたしあの人と結婚するみたい』って、すごく感じたんです。それ以来、お義父さんから「お豆腐が売れません、買いに来て下さい...」と、毎週のように電話がかかってくるようになって。求めに応じて、わたしも毎週この店に買いに来るようになりました。」


その当時、典伯さんは典子さんに対して感じることはありましたか?
「な〜〜〜んにも感じてません(笑)。あの頃は本当に大変で、恋愛どころじゃなかったです。夜10時頃起きて、ここに出てきて準備して、そこから日中もずっと働いて。だから夕方になると、魂が抜けたみたいな状態です。彼女が欲しいなんて考える余裕はありません。考えていたことといったら、『早く帰って寝たい...』ということばかりでした。」


そんな典伯さんの状態を見て、典子さんは「わたしがいないとこの人は死ぬ」と思うようになりました。
「私は38歳でこの店に嫁にきました。当時は豆腐とおあげしか作っていなかったのですが、私が嫁に来たことでお義父さんが『こんにゃくも作りたい』と言い出して。でもしばらくやって辞めてしまい、典伯さんがこんにゃく作りも引き継ぎました。で、こんにゃく作りを放棄したら、次は『納豆がやりたい』と。納豆も適当にやり始めて、飽きたらこの人に丸投げ(笑)。そんな感じで、店の商品が増えていきました。」
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高校生の頃、中国針の鍼灸師になるのが夢だったという典伯さん。典子さんも配達の合間に、杵築でリンパセラピーの店を経営しています。
「いずれは使っていない川沿いの小屋を改装して、湧水を沸かしたお風呂を作って宿をやりたいですね。リンパセラピーのお店もこの場所で開きたいと考えています。やりたいことはたくさんあるんですが、今は親の介護もあるので商品の対面販売がやっと、という状態です。」
と、お二人は将来の展望を語って下さいました。


自由人のお父様に振り回されながらも、昔ながらの豆腐を作り続ける髙村さんご夫婦。国産大豆を贅沢に使い、手間を惜しまず作られた豆腐は、まさに豆腐好きのための豆腐といった味わいです。皆さまもぜひ、日出町の山中にある豆腐屋「山豆苑」にお立ち寄り下さい。


【山豆苑・基本情報】
住所:〒879-1509 大分県速見郡日出町南畑3950−1
電話:0977-72-8102
営業時間:9時00分〜15時30分(売り切れ次第終了)
定休日:水曜日・木曜日



2019年6月28日

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別府市のお隣・日出町(ひじまち)の山間部に位置する「赤松温泉」。爆音で演歌が流れていることから「演歌物泉」の異名を持つユニークな日帰り温泉です。
珍スポット的な雰囲気の施設ですが、温泉は本格的。何時間でも入っていたくなる、ぬる湯の名湯です!!


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赤松温泉は別府から車で約20分。杵築市山香に向かう国道10号線沿いに、黄色い食堂の建物と、キリンのハリボテが建っているのが目印です。
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以前この食堂は、トラックドライバーを中心に賑わっていましたが、日出バイパスの開通を機に客足が遠のき、現在は休業しています。
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国道を挟んだ向かいには、西のサンリオピューロランドこと「ハーモニーランド」のお城が見えます。
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「赤松温泉→」の矢印にしたがって進むと、広大な敷地の奥に何やら黄色い巨大なテントが。
このテントが、日帰り温泉の建物です。
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赤松温泉のオーナーさん。どことなく、日出町出身のスーパーボランティア・尾畠さんに通じる雰囲気の持ち主です。

赤松温泉は、先代がハーモニーランドのオープン時にホテルを建設する目的で温泉を掘削したのがはじまりだそうです。だだっ広い敷地は、ホテルを建てるためだったんですね。

しかし掘削に膨大な費用がかかったため、ホテル建設は頓挫。日帰り温泉として営業することになりました
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テントの前に無造作に並べられた盆栽や鉢植えたち。
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さらに赤松温泉にはたくさんの柴犬が飼育されていて、お客さんが近くを通るたびにワンワンキャンキャンとたいへんな騒々しさです。
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こちらがお風呂の入口。こういっては何ですが、非常に雑然としております。
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「第一・第三火曜日は午後三時からの営業と致します」

とのこと。もうちょっとこう…キレイに書けないものか。結局いつ休みなのかよく分からないし。
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こんな感じで外観からすでに突っ込みどころ満載ですが、温泉は本格的です。
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巨大なドームのような浴室内には大きな岩風呂が中央にあり、中でいくつかに仕切られています。温泉は男女を分ける壁の付近から注がれており、下の浴槽に行くに従いぬるくなっていきます。
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湯船の周囲に飾られた、鉢植えの花や観葉植物たち。台がビールケースだったりと、美意識が高いんだか低いんだか?
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ひときわ目をひくのは、入口近くに積み上げられたたくさんの鳥かごです。中ではセキセイインコや文鳥などが飼育されていて、オカメインコがご機嫌な調子でメロディを口ずさんでいました。


表からは柴犬の鳴き声が響き渡り、さらに浴室内のスピーカーからは大音量で演歌が流れています。

演歌が流れる温泉ということで、「演歌物泉」の異名を持つ赤松温泉ですが、泉質はアルカリ性の単純温泉。とろりとした柔らかい肌触りの美肌の湯です。一番ぬるい湯船は40度に満たないぬる湯なので、何時間でもくつろいでいられます。
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なんとシャワーのお湯まで温泉です。これで大人300円はめちゃくちゃお得ではないでしょうか。

リラックスとはほど遠いカオスな空間ながら、不思議と落ち着く赤松温泉。ぬる湯でまったりしながら、地元の人と世間話に花を咲かせば、1時間や2時間なんてあっという間に過ぎてしまうでしょう。

赤松温泉に訪問するときは、時間に余裕をもっておいでください。長湯必至ですよ〜!


【赤松温泉】
住所:〒879-1502 大分県速見郡日出町藤原6371
電話:0977-72-8310


2019年6月14日

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別府市内に100カ所以上あるといわれる共同浴場。そのうちのひとつ「たかさきの湯」は、住宅街の中にあるカフェの敷地内から湧いています。今回は、温泉に入ることができるカフェ「茶房たかさき」をご紹介します。
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別府駅から南に約800メートル。大鳥居がシンボルの朝見地区は、八幡朝見神社の門前町としてひらけました。
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茶房たかさきは、朝見神社の鳥居から徒歩5分ほどの場所にあるカフェです。入り組んだ住宅街の奥で、ひっそりと看板を出しています。
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民家を改築したたかさきの建物。周囲には、春の日差しを浴びて春の花々が咲きみだれていました。
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茶房たかさきのオーナー・髙﨑冨士夫さん。このカフェは髙﨑さんが定年退職してからオープンし、今年で17年目です。

茶房たかさきの建物は以前冨士夫さんのご自宅でしたが、お子様が独立したのをきっかけにカフェに改装することを思いついたそうです。
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茶房たかさきは、駅から離れた住宅街にあるにもかかわらず、日本中からたくさんの人が訪れます。その理由は、カフェの敷地内にある小さな共同浴場が、別府八湯温泉道の札所に指定されているからです。

別府八湯温泉道とは、別府市内の共同浴場や旅館・ホテルの温泉をめぐるスタンプラリーのこと。88カ所のスタンプを集めることで、「別府八湯温泉道名人」の称号が与えられます。茶房たかさきにある、その名も「たかさきの湯」は141番札所です。さらに、九州全域にわたる「九州八十八湯めぐり」では、41番札所となっています。

たかさきの湯は、もとは髙﨑さん家族の温泉でしたが、温泉道からの要請で一般に開放することにしたそうです。ただし、温泉を利用できるのはカフェで飲食をした人だけ。営業時間も、カフェがオープンしている間のみとなっています。
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泉質は単純泉です。貸し切りにして利用します。休日などは順番待ちになることも少なくないので、時間に余裕をもって訪問してください。
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浴室の内部は、岩風呂の浴槽がひとつのシンプルな造りです。壁や扉には、地元の若手アーティストが手がけた絵画が描かれ、華やかな雰囲気がただよっています。

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髙﨑さん自身も温泉が大好きで、ご夫婦揃って温泉道名人の称号をお持ちです。今も奥様と一緒に、別府市内の温泉をあちこちまわっておられるので、おすすめの温泉を教えてもらうのもいいでしょう。
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たかさきのカフェスペースは三部屋つづきで、二部屋に大きなダイニングテーブルが置かれています。
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一番奥の和室は茶室です。外国人のお客様に、ここでお茶を点ててあげると、とても喜ばれるそうです。
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茶房たかさきのお隣には、奥様が営むギャラリーがあります。ギャラリーでは、和小物や食器の展示・販売のほか、洋服などの委託販売もあります。
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ひな人形のコレクションが豊富で、店内には一年を通してひな人形が展示されています。
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ギャラリーは以前、敷地内にある別の建物で営まれていました。現在の建物は、かつて髙﨑さんのご両親の自宅でしたが、ご両親が他界されたのをきっかけにギャラリーをこの建物に移したそうです。前の建物は若手アーティストのアトリエとして貸し出しています。
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奥様は近ごろ体を悪くされたため、ギャラリーはたまにしか開けていないそうですが、茶房たかさきよりもこちらのギャラリーのほうが歴史は古いそうです。
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思い出の着物を使い、かわいいウサギを描いた屏風が特にお気に入りとのこと。茶房たかさきにおいでの際は、ぜひ隣のギャラリーも覗いてみてください。
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【定休日・営業時間】
定休日…火曜・水曜 
営業時間…10時〜17時


2019年5月 2日
2019年3月27日
2019年2月 7日
2019年2月 6日
2019年1月15日
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  • 特派員プロフィール
  • 別府特派員

    別府特派員
    藤井 さなえ
    1977年、大阪生まれ。武蔵野美術大学彫刻科卒。趣味のバイクで日本各地の温泉地を巡るうち、温泉好きが高じて大分県別府市に移住してしまいました。本業・ライター。趣味は温泉・バイク・お酒やグルメ・日用食器収集です。Twitter Instagram

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