【シカゴでがんばる日本人】          たったひとりで映画上映誘致

公開日 : 2021年06月23日
最終更新 :

ハロー! ワッキ―まゆみです。

アメリカは2021年6月11日よりコロナが緩和され、いろいろなことがコロナ禍以前に戻りつつあります。

私の大好きな映画館も通常営業に切り替えて消毒など、コロナ対策万全で再開です!

映画ね......私にはいろいろな思い入れがあるのです。

父親と観た『タワーリングインフェルノ』『ポセイドンアドベンチャー』『ライムライト』『戦国自衛隊』などが印象に残ってます。

そして『アイコ十六歳』も、なぜならば私はオーディションを受け、クラスメート役をゲットし出演したのです~年齢想像しないでね(笑)

映画はいいですよね、時空や場所を飛び越え、好きなキャラクターになれる。

そう妄想、感情移入するには最高! それがいい映画で心に何か残るのってすばらしい!

早く映画館に行って大音響、大画面で映画を観なくちゃ!

**

シカゴに自分の好きな映画をひとりで誘致して、上映までしてしまった!というすごい方がいらっしゃるという情報を聞きつけ、いったいどんな方なんだろう?と、映画好きの私としては、いてもたってもいられずさっそくその方にコンタクトを取ってみました。その方の名前はYukako Y Wrennさん。東京の大学を卒業され、仕事をしつつ、毎年フジロックに没頭し、2006年にアメリカ人のご主人と結婚しアメリカに渡り現在にいたると、何やらいろいろと興味深いお話が聞けそうな予感がします。

Profile

Yukako Y Wrenn

東京の大学を卒業

フジロックに魅了されフジロックを中心に回る日々を過ごす

2006年にアメリカ人の夫と結婚、シカゴに渡米

2009年長男が生まれ子育てをしつつ、合間に写真の仕事などをしながら現在にいたる

【好きな映画】

好きな映画はたくさんあれど人生の一本と言われたら『Smoke』

もう少し挙げてとのことでしたら『Bagdad Cafe』『 Le Grand Bleu(グラン・ブルー)』『狼煙が呼ぶ』『青い春』

7.JPG

ひとり息子のKaito君を囲んでのファミリーショットはとてもすてき!

©Richard Kessler

8.jpg

ご主人のJeremyさんは、和太鼓もたしなむほど日本が大好き

©Dan Katayama

9.jpg

沖縄のエイサー踊りを習うKaito君はとても楽しそうです

10.JPG

そしてYukakoさんもエイサー踊りに欠かせない三線を器用に弾きこなす

ワッキーまゆみ

共通の友達数名がYukakoさんの主催された映画上映会の様子をインスタグラムにポストしていて、初めてそのことを知りました。そのポストには上映会前に壇上でYukakoさんが観客の皆さんに向けてスピーチをされているシーンやすてきな家族の写真を拝見しました! イベントは、2021年4月9日金曜日の午後7時に、シカゴにあるMusic Box Theatreにて開催され、日本の映画で昨今話題を巻き起こしている豊田利晃監督の『狼煙が呼ぶ』(2019)、『破壊の日』(2020)を上映されたということでいろいろお話をお聞かせください! まずは、今回の映画イベントのネーミングはどこから決めたのですか?

1.JPG

今回の上映用の宣伝チラシ(切腹ピストルズ飯田団紅総隊長作)

Yukakoさん

イベントのネーミングは、豊田監督の映画に繋がっているのですが、上映する作品を『狼煙が呼ぶ』と『破壊の日』に決めて、そのイベントのネーミングをどうするかと考えたとき、監督の想いをできるだけ引き継いだ形でやりたいと思いました。2019年に日本全国のミニシアターで『狼煙が呼ぶ』が公開されたときに、映画に込めたメッセージをできるだけ多くの人に届けようと、監督が何ヵ所もの開催会場を回りました。作品の中にある表現や問題提示に関連し、いま立ち上がらなくてはいけない!という意味を込めて、映画の「狼煙」という言葉を使って"のろし一揆"と銘打って全国行脚をしました、その熱い想いをシカゴでも引き継ぎたい!と思い、こちらでのイベントもそのまま"のろし一揆"とさせていただき、英語のタイトルは一揆の直訳としてUprisingを使いました。

ワッキーまゆみ

なぜ今回のイベントを開催することになったのですか?

Yukakoさん

豊田監督の『青い春』や『ナイン・ソウルズ』などを観て好きだったこともあるのですが、監督の作品には私の好きな音楽も使われていたり、私が昔から大好きなバンド、ブランキージェットシティーのドラムの中村達也さんを俳優として起用したりなど、映画と音楽が結びついている関係性があったので、その後も豊田監督の映画情報を常にチェックしていました。2019年6月頃に豊田監督が映画を作ったというニュースを読み、それが16分の短編で監督が自腹で撮ったことや出演している俳優陣が豪華で好きな方たちなのを知り、あと解禁された予告編を観た途端「これは何だ? ものすごくかっこいい!」と思い、すごく興味を持ちました。それが『狼煙が呼ぶ』だったんです。内容はもちろん、切腹ピストルズの音楽が私の心に突き刺さりました。この映画は2019年7月に東京を皮切りに上映がスタートし、日本の小さな劇場など、どこでも声があれば日本全国津々浦々、豊田監督や主演された渋川清彦さんが出向いて上映しますという感じで、その活動がおもしろく、監督の強いメッセージ性のある内容、起用している俳優の面々、音楽と、すべてが私の心に残り、どうしても劇場で、シカゴで観たいと思い、ツイッターに私の想いを呟き始めたのがきっかけです。いつかそれが関係者の目に留まりシカゴに映画を誘致することができるのでは?という願いや希望を込めて、毎日、つぶやきました。

ワッキーまゆみ

えー! 始まりはツイッターのつぶやきからなんですか? それが上映するにまで繋がったということでそれはすごいチャンスを掴みましたね。

Yukakoさん

そうなんです、わらしべ長者じゃないですが、いつかどこかで繋がって実現しないかという思いで2019年10月後半くらいから毎日毎朝『狼煙が呼ぶ』に関連づけてつぶやいていました。あと日本にいる中村達也さん好きの友人が彼のライブに行ったときに、会場で監督が所属しているプロダクションの方を見つけて声をかけてくれて、シカゴで豊田監督の映画を上映したいと毎日つぶやいている友達がいると話しをしてくれたところ「知ってるよ、毎日つぶやいている子だよね?」と言ってくれたのです。そして、上映したいなら相談に乗ると連絡先をいただきました。

ワッキーまゆみ

すごいチャンス到来ですね。夢は叶える、もう上映ができるところに手が届きそうな状態ですが、そこからどう発展していくのですか?

Yukakoさん

それが折角プロダクションと繋がったのですが、その後2020年に入り、コロナが猛威を振るいロックダウンに突入してしまったのです。ただそんな状況下でも豊田監督はクラウドファンディングを立ち上げ、その資金で新作『破壊の日』を完成させ、コロナ禍でミニシアター、映画館などが苦しいときにその映画を上映して手助けをしたいと奮闘していました。私はその様子をずっと追っかけていて、皆が立ち止まるしかないときでも監督が「それは違う、こういうときだからこそできることがあるはず」と行動を起こしている姿に勇気づけられ、それじゃあ、私には何ができるのか?と切に思い始めました。つぶやきはずっと続けていましたが、行動に移さなきゃと思い、豊田監督の想いを思い出し、シカゴにあるミニシアターはどうなっているのか?と調べてみたところ、今回上映したMusic Box Theatreにはプライベートレンタルがあり、その金額なら実費でできる! いまだ!と考え、それを利用して一番大きなスペースを借り上映することとなりました。

ワッキーまゆみ

そこからはとんとん拍子ということで、2021年1月に日本サイドとの連絡を再開し現実のものとなったのですね。チケットセールの方法などはどうされたのですか?

Yukakoさん

今回のイベント情報は自分でホームページを作り、フェイスブック、ツイッター、インスタグラムやシカゴのメディアにお願いして掲載していただいたり、口コミなどで地道な作業をし、定員50人のチケットが上映1週間前に売り切れました。本当にうれしかったです。今回は特に現地の方たちに観て欲しかったのと、挑戦したいという気持ちが強かったので、つてはあまり使わず宣伝をしました。

2.jpg

★Yukakoさんとご主人、息子さんのファンキーな家族©Kimi. Tanaka

ワッキーまゆみ

そしてついに上映当日を迎えることとなったのですが、そのときのことを教えてください。

Yukakoさん

当日は会場が7時オープンだったのですが、家族で5時半頃に映画館に行き、メールのみでやり取りをしていたシアター支配人と初めて顔を合わせ、挨拶をして、開場後、チケットを購入していただいた方にオフィシャルグッズのお札を直接プレゼントさせていただきました。このお札は日本で映画が上映されたとき、観客全員に無料で配布していた物で映画の中にも登場しているものです。パンデミックのいま、皆さんの心の支えというか、ホッとするような何かになればということで、日本サイドから送っていただきました。

3.jpg

★上映会場入口には豊田監督のネーミングが光っています

4.jpg

★Music Box Theatreの一番大きな会場で観客と記念撮影するYukakoさん

5.JPG

★上映前のスピーチで壇上に上がるYukakoさんとご主人のJeremyさん

ワッキーまゆみ

観に来て下さった方はどんな方がいらしていたのですか?

Yukakoさん

今回は特に現地の方をターゲットにして宣伝をしていたので、1割りほどが日本人、あとは現地の方たちで男性が多かったです。年齢的には幅広い層の方たちがいらして、Music Box Theatreに置いたチラシを見て来た方もいらっしゃいました。コロナ禍でミニシアターは存続の危機ということもあり、そういうときだからこそコロナ対策が徹底されていて、手を抜かないていねいな仕事が小さなシアターならではの細やかさで信頼できる対応だなと感心しました。上映直前にステージで英語のスピーチをしてからのスタートとなりました。1本目が終わり、続けて2本目の上映となり、私は一番後ろで観ていたのですが、観客の皆さんは映画の迫力、スト―リーに圧倒されつつも、静かに見入っていると感じました。その中のひとり、学生さんのような若い男性で普段は日本映画は観ない方でしたが、今回はチラシを見て来てくださったそうで、「すごくよかったです! 続編、3部作目もぜひ上映してください!」と言ってくださりうれしかったです。その方も私と同じく、自分の好きな映画を上映したいそうで、「どうして今回上映ができたのか?」など興味津々にいろいろ質問してくれました。今回上映させて頂いたMusic Box Theatreではそれが叶うのでぜひ話しをしてみては?とお伝えしました。

6.jpg

★今回のチラシがほかのチラシなどと一緒に設置されていました

ワッキーまゆみ

それでは最後に、今後の予定や抱負などを教えてください。

Yukakoさん

私は基本、「石橋を叩いて渡る」のではなく、渡る前に叩きすぎて壊すようなタイプなのですが(笑)、この映画と豊田監督の活動やパンデミックを通して、やらずに終わること、そのまま人生を終わることがもったいないと思えるようになったんです。なんでもやれると思う瞬間があればやってみた方がいいし、「人生に失敗はない」という名言を聞いてからは、つまずくことがあっても今後に繋がることを思えば失敗なんてないと思い始めました。今回のイベントはチケット販売枚数に関わらず開催できるよう予算は立てていたので、あとはチケットが売れなくても自費が最初の予算通りになるだけでした。だから、絶対、上映は実現できる!と思ったことがかえってよかったみたいです。先ほども出ましたが、今後は豊田監督の続編、3部作目の『全員切腹』を上映したいと思っていますし、劇場の方からも観客の方が続編が見たいと言ってたよと言ってくださりうれしく思っています。あと何ヵ月かに一度、自分が観たい日本映画の上映会をしたいなと思っていたのですが、今回Chicago Japan Film Collectiveが立ち上がったので、映画好きの私としてはとてもうれしかったです。ハリウッド映画も観ますが単館映画館で上映されるようなインディーズ映画が好きなのでメインストリームじゃないけれど味のある映画がもっとシカゴで観れたらいいなと思っています。ここ最近ではオンライン上映も多くなってきて手軽に映画を楽しめますが、やはり映画館やドライブインシアターという場所に行って、同じ映画を観て周りの人と何かを共感したり共有したりするのは格別な体験なので、これからもオンラインと映画館の両方で映画を楽しめたらいいなと思っています。

ワッキーまゆみ

豊田監督、中村達也さん、切腹ピストルズへの熱い思いが現実となる、そんな夢みたいなことが本当に起こったのは、Yukakoさんの熱い想い、諦めない強さがあったから。今回のインタビューではそのすてきなストーリーを満面の笑みで本当にうれしそうに語ってくださったことがとても印象的でした。シカゴで豊田監督の3部作目、完結編が見られるのもそう遠くはなさそうですね。もしかすると次回は、豊田監督や出演者の皆さんがシカゴにいらっしゃるとか? なんて期待をしつついまから上映がとても楽しみです。

今回のイベントのサイトシカゴのろし一揆はこちら

筆者

アメリカ・シカゴ特派員

ワッキーまゆみ

名古屋、東京、シンガポール、ロサンゼルス、シカゴに住み日本を出て25年。子育てをしつつシカゴライフを満喫中。グルメ、観光、ショッピング、キッズ関連などシカゴ情報を発信しシカゴライフをエンジョイしたい!

【記載内容について】

「地球の歩き方」ホームページに掲載されている情報は、ご利用の際の状況に適しているか、すべて利用者ご自身の責任で判断していただいたうえでご活用ください。

掲載情報は、できるだけ最新で正確なものを掲載するように努めています。しかし、取材後・掲載後に現地の規則や手続きなど各種情報が変更されることがあります。また解釈に見解の相違が生じることもあります。

本ホームページを利用して生じた損失や不都合などについて、弊社は一切責任を負わないものとします。

※情報修正・更新依頼はこちら

【リンク先の情報について】

「地球の歩き方」ホームページから他のウェブサイトなどへリンクをしている場合があります。

リンク先のコンテンツ情報は弊社が運営管理しているものではありません。

ご利用の際は、すべて利用者ご自身の責任で判断したうえでご活用ください。

弊社では情報の信頼性、その利用によって生じた損失や不都合などについて、一切責任を負わないものとします。