タンザニアの国語、頑張るスワヒリ語・でも裁判ではおかしな状況発生中!

公開日 : 2017年05月05日
最終更新 :
Street in Dar es salaam.JPG

アフリカの代表的な言語の一つ、スワヒリ語はタンザニアの国語です。

スワヒリ語が使われている国はタンザニア周辺にいくつかあり、スワヒリ語圏を形成して

います。タンザニアの北の隣国ケニアでも、英語に並んでスワヒリ語が話されています。

けれども、ケニアの大統領が自国民に向けた公式スピーチを英語で行うところをみると、

ケニアにおけるスワヒリ語の立場が分かるような気がします。基本は英語ということです。

対してタンザニアでは、大統領は常に迷わずスワヒリ語で国民に話しかけます。

タンザニアには約130の民族いるとされており、それぞれは固有の言語を持っています。

スワヒリ語はそれらをまとめる共通語として重要な役割を果たしているのです。

民族の文化と歴史を伝える貴重な地域言語がたくさん存在しているといっても、ご多分

にもれず絶滅の危機に瀕している状態にあるものは少なくないようです。スワヒリ語に

吞み込まれつつあると。

英語でないところはいいなと思いますが、なるがままに任しておいては、それも時間の

問題になりかねません。

国がいくらスワヒリ語の保持に力を入れようとも、英語ができる方が何かと有利とあれば、

人々が英語に重きを置くようになるのも止むを得なくなります。まして、色々な先進情報

が英語で入ってくるとなれば、知る者と知らない者の差は格段に広がります。

スワヒリ語の立場を守りつつ情報格差を埋めようとするならば、あらゆる情報を翻訳して

提供していくことが必要となります。日本人が日本語だけで生活していても情報不足を感じ

ることがないのは、世界のあらゆる情報が日本語に変換されているからですよね。

が、それは莫大な費用がかかること。自国語を守るにも資金力次第というのはとても皮肉な

ことです。

さて、タンザニアでも一般に「教育のある」人は英語が話せることになっており、都市部

では流ちょうな英語を話す人は少なくありません。そのレベルも日本とは比較にならない

ほど高く、硬めの語彙が多く使われるのが特徴です。なお、イギリスの植民地でしたので

普及しているのはイギリス英語です。

街なかで出会う一般的な人々の中で英語が伝わる確率は感覚的には半分程度と思われますが、

庶民的なエリアではさらに低くなります。そのような場所では、ジェスチャーと片言のスワ

ヒリ語でやりとりをすることになります。

公的な書類などは英語版の用意もありますが、不可解なのが法廷での言語の扱いです。

一般庶民を対象にした法廷であっても、裁判官・弁護士が使う言葉や発行される書類は英語

になります。つまり、法廷に立つ当人が英語を理解できない場合は、理解できないまま審議

が進むということです。弁護士による通訳に頼らざるを得ず、大変な不利益だと同情を禁じ

得ません。

一部にそのようなネジレ現象が見られるとしても、タンザニアの日常におけるスワヒリ語の

存在感には影響ありません。

日本語では外来語をそのまま採用しているデコーダーもアイロンも、ちゃんとスワヒリ語

があります。デコーダーは"King'amuzi(キンガムズィ)"、アイロンは"Pasi(パスィ)"です。

Eメールのことを「飛ぶ手紙」と表現する"Barua pepe(バルーア・ペペ)"という呼び方は

面白いと思いませんか? "Barua"は「手紙」、"Pepe"は「飛ぶ」という意味です。

日本語と同様にスワヒリ語はとても母音の多い言葉で、言葉の最後は必ず母音で終わります。

そんなスワヒリ語訛りで英語を発音するとN、S、Tなどの子音で終わる英単語の後ろに

"I"の音が加わります。これが「スワヒリ語訛りの英語」です。

例えば、"Irene(アイリーン)"という名前であれば最後にiが加わって「アイリニ」に、

"Sammuel(サミュエル)"であれば「サムエリ」になるという具合です。日本語の「ー」のように

伸ばす音もありません。"Martin(マーティン)"に至っては「マティニ」になってしまいます!

その法則により、インターネットは「インタネティ(Intaneti)」、スピードは「スピディ

(Spidi)」といった発音になります。

ところで、私たちがシャープと呼ぶ記号(#)は、スワヒリ語で「レールの印」を意味する「アラマ・

ヤ・レリ」と呼びます。シャープ記号を見てレールを連想したことなどありませんでしたが、

確かにレールに見えますよね。

電話は"Simu(シム)"。"Namba ya simu(ナンバ・ヤ・シム)"で電話番号です。

"Namba"はナンバーのことだと分かりますね。やはり、伸ばす音「ー」は無くなっています。

この特徴は月の呼び方にも顕著に表れていますよ。"September(9月)は"Septemba"、"October

(10月)"は"Octoba"といった具合です。詳しくは『タンザニア時間・スワヒリ時間の数え方』も!

タンザニアの独特の時間の数え方がよく分かります!

現代では、"Simu(電話)"といえば携帯電話を指しますが、改めて「携帯電話」と言う場合

は"Simu ya mkononi(シム・ヤ・ムコノニ)"です。"Mkono"は片手を意味します。

「片手に持つ電話」が携帯電話ということですね。

他方、固定電話のことは"Simu ya mezani(シム・ヤ・メザニ)"です。"Meza"とはテーブル

のことですので「卓上電話」という表現になっています。

さて、日本語でバス高速輸送システムと呼ばれるBRT(Bus Rapid Transit)が(2016年春)、

ダルエスサラーム市内で開通しました。

このBRT、英語の会話の中では"DART(ダート)"という愛称で呼ばれていますが、スワヒリ

語の会話では「高速運転」を意味する"Mwendokasi(ムウェンドカシ)"の名で呼ばれていま

す。専用レーンを通るので渋滞知らずの高速なのです。

ところで、タンザニアには、背が高いことで知られる"Wanyamwezi(ワニャムウェズィ)"と

呼ばれる民族がいるそうですが、「背が高い人たち」=「アメリカ人」の発想から、アメリカ

人を"Wanyamwezi"と呼ぶこともあるそうです。

ちなみに、国名としてのアメリカは"Merekani(メレカニ)"。耳に届いた音がそのまま言葉に

なった感じですね。

旧宗主国ドイツとイギリスはそれぞれ"Ujerumani(ウジェルマニ)"と"Uingereza(ウィンゲレザ)"、

フランスは"Ufaransa(ウファランサ)"、ロシアは"Urusi(ウルスィ)"です。どれも何となく元の

音が感じられますよね。 

そして日本は、最後に"I"をつける前述の法則に従って"Japani(ジャパニ)"です。

タンザニア自身に付けられたニックネームもありますよ。

皆さんがタンザニアに来たとき、"Bongo(ボンゴ)"という言葉を耳にすることがあるかも

しれません。"Bongo"はタンザニア/ダルエスサラームを指すニックネーム。そしてそれは「賢さ」

を示唆する「脳ミソ(Brain)」のこと・・・。タンザニア人は自国をとても愛する、誇り高い人々

です。

筆者

タンザニア特派員

西東たまき

2012年より東アフリカ・タンザニアのダルエスサラーム在住です。様々な側面から垣間見るダルエスサラームをレポートします。

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