太古の天体システム「ネブラの天盤」 〜ハレ前史博物館 〜

公開日 : 2008年11月28日
最終更新 :
筆者 : 柴山 香
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メソポタミア文明の頃にまでさかのぼる占星術(天文学)。我々と同じように、紀元前を生きた人類も夜空を見上げ、奥の知れない星の世界に思いをはせていたのだろう。

考古天文学の分野で20世紀最大の発見といわれるのが、「ネブラの天盤」の発掘だ。「ネブラの天盤」は、ドイツ北東部にあるザクセン・アンハルト州(州都マグデブルク)ネブラ近郊の山間で、1999年夏に発見された、直径およそ32cm、重さ2kgのブロンズ製の円盤を指す。月や星などの天体が金色で明確に描かれており、同時に発掘されたブロンズ剣や手斧を手がかりに、3,600年ほど前に埋められたものと推定されている。当時の天体システムをここまで具象的に表現したものは他に例を見ず、考古天文学史上に刻まれる貴重な発見だ。

「ネブラの天盤」のほぼ中央に描かれるのは満月(太陽という解釈もある)と三日月。すばる星団を始めとした32個の星も散りばめられ、輪郭には夏至、冬至を示唆すると思われる弓も描かれている。興味深いのは、月、星、地平線などの構成要素が、すべて同時期に描かれてものではないということ。それぞれに使われている金色の素材分析結果から、これらの構成要素が、かなり間隔を置いて順次この天盤の上に描かれていったとことが判明している。

もうひとつおもしろいのは、この考古学史上の大発見が、違法発掘者によるお手柄発掘(?)であったということ。不法者によって掘り出された「ネブラの天盤」は、発掘から何年もの間、骨董業者らの手を渡り歩いた後、最終的に某夫妻が700,000DM(ドイツマルク)で売りに出したところを、購入希望者を装った当局捜査員に御用!となったといういきさつを持つ。この某夫妻、天盤を200,000DMで購入したというから、かなり大胆に一攫千金を狙った模様。美術館学芸員と教師だったというこの夫婦、天盤にさえ巡り会わなければ、いまも堅実な家庭を築いていただろうに....。

記念切手(本日の画像)や記念銀貨のモチーフにもなっている「ネブラの天盤」のオリジナルは、ザクセン・アンハルト州立の前史博物館で見学できる。また、天盤の発掘現場であるネブラには、「ネブラの箱船」と称するマルチメディア記念館があり、デジタル・プラネタリウムなどの天体関連展示が人気。

また、州立前史博物館があるハレは、バロック最大の音楽家のひとりであるヘンデルの生誕地としても有名な町。ヘンデル没後250周年にあたる2009年は、ヘンデルゆかりのイベントも目白押しなので、ハレ観光局のサイトでぜひ事前チェックを。

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