にわとりの目で、目が点になった話

公開日 : 2011年10月19日
最終更新 :
筆者 : 柴山 香
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ドイツへ来て間もない頃ですので、かれこれ10数年前の話です。

日本から来た某視察団の歓迎パーティーが開催されることになり、日独双方の参加者が、わいわいがやがやホテルのバンケットルームに集っていました。そして、代表者のスピーチの通訳を仰せつかったのが、まだまだ駆け出し通訳だった私。

さて、スピーチ3番手くらいに壇上にのぼったドイツ人の市長さんが、ドイツ人のすぐれた発明品をあれやこれやと自慢気に紹介していったのですが、その中で、「にわとりの目につける薬」という表現が出てきました。

「は?」

まずい。一瞬思考が停止してしまいました。「何、それ?」「にわとりの目の専用目薬?」「まさか、そんなもん無いでしょ」「いや、医学の国ドイツだし、あり得るかも」....。

実は当日、聴衆の中に日本語堪能なドイツ人がいて、マイクを持ったまま顔面蒼白の私に助け舟を出さんと、「Scholl(ショル)のことだよ!Scholl!」と声をかけてくれたのですが、Scholl(ショル)というのはドイツ語の姓で、とりわけ、反ナチス運動の「白バラ」を率いたことで有名な人物。「え?え?にわとりの目薬と反ナチス運動を、どう結びつけて訳せばいいの?」

混乱の渦の渦巻き回転速度が、さらに早まっただけでした。

わずか数秒の間にありとあらゆる想像力と創造力をひっかき集めたものの、結局は時間切れ。「にわとりの目につける薬」というベタ直訳しか思い浮かばず、マイクを通してこの世にも奇妙な邦訳を聴かされた日本視察団のみなさまを、「は?」状態に陥れる失態を演じてしまいました。

あの日の失敗以来、Scholl社製造の「魚の目除去薬」を見かけるたび、顔から火が出そうになる私です。

註:「にわとりの目」(ドイツ語)=「魚の目」のこと。

Scholl(ショル)社は、魚の目取り薬を開発するなど、高品質のフットケア製品で有名な老舗メーカー。ドイツ系移民の息子であるW. Schollが、アメリカのシカゴで起業した。

本日の画像:

Scholl社製の魚の目除去リキッド。

刷毛で患部に治療薬を塗り重ね、3〜4日したところで「薬の層」をはがすと、魚の目も一緒にぺろんとはがれてしまうというもの。

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