ランス美術館コレクション『風景画のはじまり~コローから印象派へ』@北九州市立美術館本館

公開日 : 2020年08月20日
最終更新 :
筆者 : Duke

こんにちは、「地球の歩き方」福岡特派員のDukeです。今日は、北九州市立美術館本館で開催中のランス美術館コレクション『風景画のはじまり~コローから印象派へ』を紹介します。

戸畑区の小高い丘の上に建つ市立美術館は、建築界のノーベル賞と言われる「プリツカー賞」を2019年に受賞した磯崎新氏の設計により1974年に開館しました。筒状に伸びるふたつの展示室が宙に迫り出した特徴的な外観で、遠くからこの建物を見上げると、あたかも四角い双眼鏡が北九州市街を覗き込んでいるように見えることから、親しみを込めて「丘の上の双眼鏡」という愛称で呼ばれています。

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入口を入ると受付に先立って、サーマルカメラによる検温やシートによる連絡先・健康状態の確認、混雑時の入館制限など、新型コロナウイルスの感染拡大防止のための措置が徹底されています。その一環として、講演会やギャラリートークなどのイベントは、残念ながら中止となりました。

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エントランスホールの広い階段の両脇には、ロダンとプールデルの彫刻が飾られています。また、階段を上ると、先ほどの筒状の双眼鏡部分へと続き、コレクション展示室やミュージアム・カフェなどが設けられています。

このエントランスホールおよび2階のコレクション展示室の一部については、写真撮影および「地球の歩き方」福岡特派員ブログ掲載の許可をいただきました。

オーギュスト・ロダン「ピエール・ド・ヴィッサン」

百年戦争真っただなかの1346年、英国により包囲された北フランスの港町カレー。時の英国王エドワード3世は、カレー市民を助ける代わりに代表者が丸裸に近い姿で人質になることを要求しました。この作品は、町を救うために敢えて人質となることを志願した市民6人を顕彰するために制作された「カレーの市民」の中の一体です。

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こちらは、東京上野の国立西洋美術館の前庭に展示されている「カレーの市民」像。ロダンは、やせ衰えた市民6人が人質となるために城門へと歩く様子を通して、カレー包囲戦の敗北、英雄的自己犠牲、死に直面した恐怖が交錯する瞬間を表現しました。

オリジナルの鋳型から作られる「カレーの市民」像のエディション数は12とされているなかでこれは9番目。ちなみに、1番目はもちろんカレー市庁舎前に置かれていますが、人質となった6人が英雄的に描かれていないことに憤慨したカレー市はこの像を受け入れず、除幕式が行われたのは、完成してから7年後だったそうです。

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エミール=アントワーヌ・ブールデル「ペネロープ」

32歳から15年間ロダンに師事したプールデルは、彫刻の表現方法をめぐる考えの違いから、やがてロダンの下を離れ独自の道を歩みました。この作品は、ギリシャ神話からとったもので、トロイ戦争に出征した夫オデュッセイヤの帰りをひたすら待ち続ける妻ペネロープ。モデルはブールデル夫人だそうです。

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1階の企画展会場、『風景画のはじまり~コローから印象派へ』の入口......ここから先は撮影禁止です。

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この展覧会では、フランスのランス美術館が所蔵するカミーユ・コロー(1796-1875)やギュスターヴ・クールベ(1819-1877)、ウジェーヌ・ブーダン(1824-1898)、そしてクロード・モネ(1840-1926)、ピエール=オーギュスト・ルノワール(1841-1919)、カミーユ・ピサロ(1830-1903)ら印象派へといたる19世紀フランス風景画、約70点(版画を含む)が紹介されています。

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フランスで風景画というジャンルが成立したのは19世紀初め。それまでの絵画はアトリエで制作されていたのに対し、チューブ式の絵の具が開発されたことに後押しされた画家たちは屋外に出て、自然を主題として絵を描き始めたのだそうです。その先駆者となったのが、コローやクールベ、ブーダンで、モネやルノワールといった印象派に引き継がれ発展していきました。

本展で展示されている絵画の一部は、北九州市立美術館本館(企画展)のウェブサイトでご覧いただけます。

こちらは、北九州市立美術館の所蔵作品を公開しているコレクション展示室。丘の上から筒状に突き出た双眼鏡にあたる部分です。最初の部屋だけ写真撮影が許可されています。

エドガー・ドガ「マネとマネ夫人像」

親しい関係にあったドガとマネは、あるときお互いの作品を交換しました。この絵はドガが描いた、ソファーに寄りかかるマネと(おそらく)ピアノを弾くマネ夫人。マネはこの絵が気に入らずに絵の右側の一部を切り取ってしまったという、いわくつきの絵です。

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ちなみにこの絵は、自分の絵を切り刻まれたことに怒ったドガが取り返し、復元するつもりで下塗りしたカンヴァスを継ぎ足したのですが、結局そのままの状態で放置されてしまいました。

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ピエール=オーギュスト・ルノワール「麦わら帽子を被った女」

色彩あざやかながら、やわらかな印象を与えるルノワールの絵。風景そのものよりも人物、とりわけ表情の描写に徹底的にこだわったところに、モネとの作風の違いを感じます。

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ポール・ゴーギャン「アウティ・テ・パペ(川岸の女たち)」【ノアノア木版画集】1893-94年

タヒチから帰国したゴーギャンは、タヒチの自然や文化について記したタヒチ滞在記『ノアノア(マオリ語で「かぐわしき香り」の意)』を執筆しました。この木版画は、その挿画として制作されたものです。

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ポール・セザンヌ「水浴者」

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1913年に開館したランス美術館は19世紀のフランス絵画を網羅し、特に、コローやブーダンなどの風景画のコレクションが厚いことで知られています。現在は大規模改修工事のため休館となっており、その期間を利用して今回の『風景画のはじまり~コローから印象派へ』が企画されました。北九州市立美術館のあとは、島根県立美術館、ひろしま美術館などを巡回する予定となっています。

ランスはシャンパーニュ地方の古都で、文字どおりシャンパン生産の中心地として知られています。パリ東駅からTGVで45分と思いのほか近く、歴代フランス国王の戴冠式が行われたノートルダム大聖堂や大司教公邸トー宮殿、サン=レミ旧大修道院などの世界遺産をはじめ、世界的なシャンパンメーカーのカーヴ見学や試飲、葡萄畑が広がる美しい風景など見どころも盛りだくさんです。藤田嗣治(レオナール藤田)が設計・内装デザインを手がけ、死後埋葬されたフジタ礼拝堂(正式には「平和の聖母礼拝堂」)もあります。展覧会をきっかけに、まだ見ぬ土地に思いをはせるのも楽しいものですね。

【北九州市立美術館本館『風景画のはじまり~コローから印象派へ』】

・住所: 北九州市戸畑区西鞘ヶ谷町21-1

・開催期間: 2020年7月25日(土)~9月6日(日)

・開館時間: 9:30~17:30

・休館日: 月曜

・観覧料: 一般 1400円、高大生 1000円、小中生 600円

・問合せ: 093-882-7777

・アクセス: (バス)JR小倉駅・JR戸畑駅・JRスペースワールド駅 西鉄バス7M番→美術館前/(車)北九州都市高速「山路」ICから約8分

・駐車場: 210台(無料)

筆者

特派員

Duke

縁あって福岡県北九州市に落ち着いて、はや15年。県外の方はもちろん、地元の方にも楽しんでいただけるよう、福岡・北九州の旬な情報を発信していきたいと思っています。

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