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イタリア/ジェノバ特派員ブログ 浅井まき

イタリア・ジェノバ特派員が現地からヨーロッパ地域に至るまで、旅行・観光・食事などの現地最新情報をお伝えします。

2018年5月30日

「ヴァン・ダイクとフランドルの友人たち展」鑑賞レポ!


「ヴァン・ダイクとフランドルの友人たち展」鑑賞レポ!

今回は現在ジェノバ市内で行われている展覧会のレポートを書きたいと思います。私が先日行って来たのはメリディアナ宮にて7月8日まで開かれている「ヴァン・ダイクとフランドルの友人たち(Van Dyck e i suoi amici fiamminghi)」展です。

メリディアナ宮

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(メリディアナ宮の入口は坂の中腹。)


展覧会が行われているメリディアナ宮は世界遺産「ロッリ制度の邸宅群」に登録された邸宅の一つです。「新通り」が建設される以前からこの辺りの不動産を所有していた有力貴族グリマルディ家の屋敷で、1541~45年に建設されました。日時計(meridiana)があるためメリディアナ宮と呼ばれています。
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(優雅なホールはパーティなどにも使われる)


中へ入ると落ち着いたシックな雰囲気のホールがあります。天井の装飾が上品で美しいです。展覧会は一階部分で行われていますが、2階に上がるとローマでミケランジェロの作品を研究しのちにスペイン宮廷でも活躍した16世紀の画家ルカ・カンビアーゾによる素晴らしい天井フレスコ画を見ることができます(有料)。





フランドル画家とジェノバ

ジェノバとフランドル地方(現在のオランダ、ベルギーなど)との関係はとても深いです。というのも、ジェノバはもともと中世からヨーロッパ北部でも商業や金融活動を行なっていましたが、16世紀ごろには当時フランドル地方を領土としていたスペインと強力な同盟関係にあり、この地方での商売を有利に行うことができたのです。多くのジェノバ商人や銀行家がアントワープに支店を構えて取引を行っていました。
イタリア各地でルネサンスが盛んだったころ、ジェノバは内政の混乱などのため芸術振興への関心が薄く、流行に乗り遅れてしまいました。政治も経済も安定してきて、融資契約を獲得すべく新たに建設した邸宅に他国の賓客を招くようになると、やはり流行りの絵や内装が必要、ということで、ようやく内壁や天井のフレスコ画や壁にかけるための絵やタペストリーを買うようになりました。ところがジェノバでは、ルカ・カンビアーゾら一部の例外はあるものの、地元の絵画市場がまだ成熟しておらず、まずは外国のものを買ってくるしかありませんでした。その購入先はローマやミラノなどイタリア半島のほかに、商売関係の深かったフランドル地方が主でした。





ルーベンスとジェノバのフランドル勢

ジェノバでフランドル地方の絵画が飛ぶように売れる、となると、フランドル地方の画家が自らジェノバに出向いてくるようになります。17世紀に入り、フランドル地方でのジェノバ人の商業は政治環境の変化などもあり徐々に撤退していきますが、今度はフランドル画家たちがジェノバに"コロニー"を作る番でした。最初にジェノバで大きな名声を得、のちの文化に大きな影響を与えたのが17世紀初頭にジェノバでも活動していたルーベンスです。(ルーベンスについてはまた別の機会に詳しく書きたいと思います)
そのルーベンスの築いた土壌を頼って故郷のアントワープからやって来たのがヴァン・ダイクでした。
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(ジェノバ、「赤の宮殿」所蔵のヴァン・ダイクによる肖像画)


1621年にジェノバに到着し工房を構えたヴァン・ダイクですが、すぐに売れっ子となりました。宗教画なども多く手がけていますが、際立って数が多いのは肖像画です。ヴァン・ダイクの描く繊細で優美な人物像はたちまち人気を博し、多くの貴族や富裕層の人々が彼に肖像画を依頼しました。
また、ヴァン・ダイクの絵画はジェノバの地元の画家たちにも大きな影響を与え、17世紀半ば以降はジェノバ人の画家たちが活躍の場を広げるようになりました。





ヴァン・ダイクとフランドルの友人たち展、見どころは

展覧会としての規模は大きくないですが、展示されている作品は粒揃いです。
まず、17世紀にジェノバで活動していた主なフランドル画家の作品が展示されています。ウィルデンス、デ・ワール、ヤン・ルースらはフランドル"らしい"情景やタッチを組み込んだ風景画や日常を描いた絵、そして静物画をジェノバに持ち込みました。彼らに学んだステファノ・カモッリら17世紀のジェノバの画家の作品を見るとその影響の大きさがうかがえます。
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(看板になっているアンサルド・パッラヴィチーノの肖像)


そして主役であるヴァン・ダイク作品の登場です。展覧会の"顔"となっているアンサルド・パッラヴィチーノの肖像、体温が感じられそうなほど生き生きと描かれています。その正面には宝石商プッチョの肖像画。この人物は貴族ではないのですが、売れっ子のヴァン・ダイクに肖像画を依頼するということは、かなりのやり手で裕福だったことが伺えます。そして中央に展示された貴婦人の肖像画は、飾り襟の繊細なレースから一見して上等とわかるような衣装の生地の質感まで丁寧に描かれており、圧巻です。
最奥の展示室ではヴァン・ダイクの手がけた宗教画が展示されています。特にキリスト磔刑図は迫力があり素晴らしいです。





以上は私個人の感想ですが、他にも数多くの傑作が集結しています。美術がお好きな方だけでなく、どなたでも楽しめることは間違いないでしょう。開催期間中にジェノバに立ち寄る方は是非訪れてみてください!
ヴァン・ダイクとフランドルの友人たち展(Van Dyck e i suoi amici fiamminghi a Genova 1600-1640)
Palazzo della Meridiana
Salita San Francesco 4, 16124 Genova
2018年7月8日(日)まで開催中。
料金:€7,00
開館時間:火~金曜...12~19時、土日祝...11~19時。※月曜休館
Web: http://www.palazzodellameridiana.it/mostra-van-dyck-suoi-amici-fiamminghi-genova-1600-1640-dal-9-febbraio-al-10-giugno-2018/
※展示室内撮影禁止

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カテゴリー イベント・行事・お祭り 文化・芸術・美術
2018年5月30日
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      ジェノバ特派員
      浅井まき
      大学卒業後、社会人を経て2015年渡伊。イタリア北部リグーリア州の港町ジェノヴァに住み始めてはや3年目。現在はジェノヴァ大学の大学院史学研究科に在籍。日本と大きく異なるイタリアでの大学院生生活に四苦八苦しつつ、17~18世紀のジェノヴァ共和国に関する研究を行っている。自分の専門以外にも西洋史全般、美術、現代音楽、グルメ、スポーツなどへの関心大。晴れた休日には近郊へ写真撮影に行くのが楽しみ。 DISQUS ID '@disqus_n3hiU5o4o9

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