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イタリア/ジェノバ特派員ブログ 浅井まき

イタリア・ジェノバ特派員が現地からヨーロッパ地域に至るまで、旅行・観光・食事などの現地最新情報をお伝えします。

2018年7月 7日

ジェノバとイングランドの間に"国旗使用料"未払い問題が浮上!?


ジェノバとイングランドの間に"国旗使用料"未払い問題が浮上!?

世界各国の国旗にはそれぞれ深い由来や由緒があるものですが、様々な理由から似たような国旗(または市旗)を使用している国や地域もありますよね。とはいえ、例え他の国や地域の旗と見分けがつかないくらい似ていても、長い間慣れ親しんだ国旗を変更するということはなかなか考えづらいものがありますね。
Pic.12-1.jpg
(ジェノバの旗は白地に赤の十字)


ところが、ここへきてジェノバ市長のある発言がイギリスでも大きく取り沙汰されています。
(引用:2018/7/5付 英ガーディアン紙web版 )

"イングランドの市民がワールドカップに乗じて聖ジョージクロス旗をパブや窓の外、車に掲げているなか、イタリアのある市長がこの赤十字の使用について数世紀にわたる延滞料金を督促することを示唆している"

(引用:2018/7/6付 英ザ・サン紙web版 )
"高慢なイタリア都市のリーダーたちはなんと、我々が数百万に上るであろう250年分の未払債務を返済するよう説得する書簡を女王陛下に送ろうと考えている"

これは一体どういう問題なのでしょうか。
この記事ではジェノバとイングランドの間に浮上した「聖ジョージクロス旗使用料未払い問題」についてクローズアップしてみたいと思います。




約250年分の使用料未払い?

(引用:2018/7/4付 伊クオティディアーノ紙web版 )

"「女王陛下、遺憾ながらお知らせしなくてはなりません。我々の記録を確認したところ、あなた方は直近247年分の(国旗の)使用料を未だ支払っておられません」" (ジェノバ市長マルコ・ブッチ氏)

Pic.12-2.jpg
(聖ジョージ=聖ジョルジョ。ジェノバのサン・ジョルジョ宮正面のフレスコ画より)


ジェノバの市旗(旧ジェノバ共和国の国旗)は白地に赤の十字、いわゆる「聖ジョージ・クロス」と言われるもので、イングランドの国旗はこれと"全く同じもの"です。
元々ジェノバが使用していたのをイングランドが後から採用したもので、サッカーのイングランド代表の試合を見ると、この国旗があちこちに揺れているのがわかります。
Pic.12-5.JPG
(ジェノアCFCのサポーターたちもあちこちで使用しています)


とはいえ、このシンプルな旗は特に珍しいものでもなく、イタリアでは同じ旗をミラノ、イヴレア、パドヴァなど実に45の都市が使用している、非常にメジャーなデザインです。
ではなぜイングランドがこの国旗を使用するのにジェノバが使用料を請求するのか。その所以は実に中世までさかのぼります。





イングランドがジェノバの国旗を借りた理由

Pic.12-4.jpg
(15世紀のジェノバの艦隊:ジェノバ、ガラタ海の博物館所蔵、Christoforo de Grassi 「ジェノヴァの風景」、パブリックドメイン<ウィキメディア・コモンズ より引用>)


ジェノバがこの赤十字の国旗を採用した時期ははっきりとはしていませんが、1096年前後にはその使用が確認されています。この旗は十字軍の旗印としても採用されていました。

12世紀から15世紀頃、地中海でジェノバ共和国と言えばヴェネツィアと覇権を争う強力な海洋国家。とりわけイタリア半島以西の西地中海や、さらに黒海ではジェノバの海軍力が非常に行き届いていました。
中世の地中海と言えば海賊が多発する危険な海でしたが、そんな海賊たちもジェノバの軍事力を恐れ、白地に赤十字のジェノバ共和国旗を掲げた船には手を出しませんでした。


この旗を掲げることで、ジェノバ海軍によって保護されていると示して商船への海賊被害を防ごうと考えたのが地中海を航行するイングランドの商人たちでした。1190年、イングランド王国は正式にジェノバ共和国に対してこの旗の使用の承諾を請い、その見返りとして毎年一定の使用料を支払うことを約束しました。


この使用料はジェノバがオーストリア軍によって一時占領された1746年まで支払われた記録が残っているそうですが、それ以降の支払いは確認されていないとのこと。
市長は市内の古文書を調査し、その金額を算定しているところだとしていますが、本当に約250年分もの使用料を支払うことになればその額はいくら大国のイギリスといえど馬鹿にならないものになりそうです。




Pic.12-3.JPG
(ジェノバの街中にも随所に掲げられています)


もちろん、ブッチ市長は最後に半分冗談だとつけ足したうえで、「これはジェノバ市にとって最高のマーケティングになりますね」と語っています。
ただし、かつての経済大国で、現在でもイタリア随一の"ドケチ"として有名なジェノバでは

"お金の問題は極めてシリアスである"(引用:クオティディアーノ紙、同上)
のです。



西日本での洪水の被害に遭われた方の一人でも多くの無事と早期の回復をお祈りいたしております。

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2018年7月 7日
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      浅井まき
      大学卒業後、社会人を経て2015年渡伊。イタリア北部リグーリア州の港町ジェノヴァに住み始めてはや3年目。現在はジェノヴァ大学の大学院史学研究科に在籍。日本と大きく異なるイタリアでの大学院生生活に四苦八苦しつつ、17~18世紀のジェノヴァ共和国に関する研究を行っている。自分の専門以外にも西洋史全般、美術、現代音楽、グルメ、スポーツなどへの関心大。晴れた休日には近郊へ写真撮影に行くのが楽しみ。 DISQUS ID '@disqus_n3hiU5o4o9

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