路地裏に佇む優雅な館、スピノラ宮国立美術館
今年はヨーロッパも大変な熱波だそうで、ここジェノバでも毎日暑い日が続いています。
そんな中ですが、8月6日日曜日は毎月恒例、イタリア国内の国立美術館が無料開放されるイベントがあります。
以前の記事<ジェノバ・王宮を徹底解説!>でジェノバ市内にある2つの国立美術館のうち「王宮」をご紹介しましたが、今回はもう一つの「スピノラ宮国立美術館」をご紹介したいと思います。
(スピノラ宮)
迷路のような路地を抜けて...
(路地裏に突如として現れる優雅な邸宅)
さて、この美術館を訪れるにはまず美術館の入っている"スピノラ宮"を探すという最初の難関を突破しなければなりません。なぜなら、この館は観光地として整備されたいわゆる「新通り」に並ぶ邸宅ではなく、中世から続く旧市街の中心、建物が密集したエリアの狭く入り組んだ路地の中に隠れているからです。
そのため、日光の届かない暗く狭い路地を通っていかなければなりません。治安はどうなの?と不安になるかもしれませんが、昼間であれば人通りもかなりあるので見かけよりも遥かに安全です。むしろ、こうした路地こそがジェノバの本来の姿なのです。
経路は大きく2つ。
ガリバルディ通りとカイロリ通りの境にある道(Via ai Quattro Canti di San Francesco)を海側に下り、Vico della Scienzaを右へ。サン・ルーカ通り(Via San Luca)を東へ進み、Vico di Pellicceria通りを上へ。そのまましばらく歩いていくと、黄色い壁面に白の漆喰の装飾が素晴らしいこの優美な邸宅はすぐに見つかります。
往時の調度品や装飾の残る華麗な邸宅
この邸宅は1593年、フランチェスコ・グリマルディによって建設され、1599年に迎賓館リスト「ロッリ」に登録されました。その後何度か所有者が代わり、18世紀初めにスピノラ家の手に渡りました。
第二次大戦中には空爆により大変な被害を受けますが、できる限りの修復が施されたのち、1958年、国に寄贈され、美術館となっています。
(洗練された装飾が施された内部)
入口から階段を上り邸内に入ると、豪華な内装が残るサロンに出ます。そこからロの字型の邸内を探索し、上階へ昇っていくという順路になります。
邸内の装飾や調度品類はこの館の代々の所有者の意向により17~18世紀当時のまま残されており、当時の貴族の暮らしの様子がうかがい知れる、とても貴重な空間です。
(キッチン)
また、中2階では19世紀当時のまま保存されたキッチンを見ることができます。かまどや調理器具なども残っています。
所蔵品も一級品ぞろい
この美術館の見どころは内装だけではなく、所蔵品ももちろん一見の価値ありです。
16~17世紀のヨーロッパ絵画を中心に、地図、銀器、陶磁器などの工芸品から薬品壺などの雑貨類まで幅広いコレクションを展示しています。
中でもとくに美術ファン垂涎の一品はアントネッロ・ダ・メッシーナの「エッケ・ホモ(Ecce Homo)」でしょう。15世紀にイタリアで初めて油彩画を採用した画家で、ヴェネツィア・ルネサンスに多大な影響を与えた人物です。この絵は全部で4点残っている同題材の一連の絵画の一つです。
もう一つ興味深い作品を上げるならば、ルーベンスによる「ジョヴァンニ・カルロ・ドーリアの騎馬肖像」でしょう。17世紀初頭にジェノバを拠点に活動していたルーベンスは、共和国の長・ドージェを務めたアゴスティノ・ドーリアの息子で30歳のジョヴァンニ・カルロを勇壮な騎馬姿で描きました。
(ジョヴァンニ・カルロ・ドーリアの肖像)
実はこの絵、1940年に競売に出された際、ムッソリーニの助言により、あのヒトラーが購入しています。大戦期間中をドイツのヒトラーの元ですごしたのち、戦後に故郷ジェノバに帰ってくることとなったのです。
こうして、巨匠ルーベンスの手で溌溂と描かれたジョヴァンニ・カルロ・ドーリアはスピノラ宮国立美術館の"看板息子"となったのです。
スピノラ宮国立美術館(Galleria Nazionale di Palazzo Spinola
Piazza Pellicceria 1, Genova
料金:6ユーロ
開館時間:火-土 8:30-19:30(※夏季の金曜日は22:30まで開館。9月まで)
日 13:30-19:30
※月曜、祝日休館
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