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イタリア/ジェノバ特派員ブログ 浅井まき

イタリア・ジェノバ特派員が現地からヨーロッパ地域に至るまで、旅行・観光・食事などの現地最新情報をお伝えします。

2019年1月12日

ジェノバを愛したデ・アンドレ。きょう没後20年


ジェノバを愛したデ・アンドレ。きょう没後20年

あけましておめでとうございます。
前回から少し間があいてしまいました。(実はただいま修士論文と格闘中です)


さて、今日2019年1月11日はジェノバにとって特別な日でした。
今からちょうど20年前、1999年1月11日、ジェノバの生んだ最も偉大な"カンタウトーレ"(≒シンガーソングライター)の一人、ファブリツィオ・デ・アンドレ(Fabrizio De André)がこの世を去りました。60年代に頭角を顕し、ジェノバ、そしてイタリア音楽全盛の時代をつくりあげた功労者ですが、彼と彼の楽曲は没後20年経っても色あせず、当時のファンのみならず若者の間でも多くの人に愛され続けています。こと出身地のジェノバでは当然全員"履修済み"。街を歩けば必ず耳にするほどよく流れています。20回忌の今日ドゥカーレ宮殿で行われたメモリアルイベントには平日にもかかわらず長蛇の列ができていました。

(参照)"デ・アンドレとその楽曲を求め、大行列"(2019年1月12日付、Il Secolo XIX紙web版 )

デ・アンドレはなぜ今でもこれほど愛されているのでしょうか。




"だめんず"だった青年時代

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(ペッリの街並み)

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(出生地のデ・ニコライ通りに設けられた記念プレート)


デ・アンドレが生まれたのはジェノバの西部・ペッリ。裕福な家庭に生まれ、企業経営者で政治家の父に優秀な兄(のちに著名な弁護士となる)をもちますが、自身は勉学や出世に関心が持てず、兄と同じように大学の法学部に入るものの中退。この頃からアルコール依存ぎみで、バールなどの集まるジェノバの路地裏でふらふらすることも多かったようです。
とはいえ、この時期にのちの音楽性を形成する様々なジャンルの音楽や文学、思想を吸収していきます。





ミュージシャンとしての船出、人気者へ

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(当時多くのミュージシャンも集っていたジェノバの路地裏)


大学を中退して音楽の道に進んだデ・アンドレですが、1961年に出した最初のアルバムは大きな成功をおさめず、全国区での知名度はまだまだ。しばらくは父親の経営する教育機関で勤務していました。この時期7歳年上の女性と結婚し、長男クリスティアーノ(現在"カンタウトーレ"として活躍)を授かります。
彼の名を一気に高めることとなったのはオリジナル楽曲"Canzone di Marinella"(マリネッラの歌)の大ヒットでした。この曲をイタリア随一の歌姫であるミーナ(Mina)が歌ったことで爆発的なヒットを飛ばし、作曲者のデ・アンドレも一躍全国区のアーティストとなりました。
ところが、若い頃のデ・アンドレはライブで大勢の観客を前にした演奏がとても苦手で、開演前にはウイスキーを飲んで緊張をほぐし、客席を真っ暗にしなければ舞台に立つことができなかったそうです。この弱点を克服するのには長い年月がかかりましたが、晩年にはステージでのパフォーマンスもリラックスした表情でこなすようになりました。





当局の監視、不倫、誘拐...波乱万丈な私生活

私生活ではなかなか波乱含みの人生を送ってきた人物です。70年代、東西冷戦中の時代で(特にイタリアは当時最大野党が共産党であった)、彼自身は政治活動を行っていないもののリバタリアニズムの影響を受けた歌詞を書いていたことや、社会主義思想に近い人々との交流があったことからイタリア政府当局の監視対象とされ、何度か聴取も受けています。
歌手のドリ・ゲッツィ(Dori Ghezzi)との不倫が報じられたのも同時期です。最初の妻とは離婚し、その後1989年にドリ・ゲッツィと再婚を果たしています。
マスコミの追求から逃れるようにサルデーニャ島の田舎に家を買って暮らし始めたデ・アンドレでしたが、1979年8月、一緒にいたドリ・ゲッツィとともに左派の過激派グループによって誘拐され、4か月に及ぶ監禁生活を強いられることとなりました。父親が身代金を支払ったことで解放されますが、彼はこのときの経験を"Hotel Supramonte"(山上のホテル)という楽曲にて表現しました。





ジェノバを愛し、ジェノバに愛されるデ・アンドレ

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(ボッカダッセもデ・アンドレゆかりの地)
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(ジェノバ方言でCrêuzaと呼ばれる狭い坂道)


1999年に亡くなる直前まで精力的に音楽活動をしていたデ・アンドレ。初期から"La Città vecchia"(古き都)、"Via del Campo"(カンポ通り)などジェノバの情景を歌った楽曲を多く書いています。後期には"Crêuza de mä"(海の小路)をはじめとするジェノバ方言を取り入れた独特な歌曲も多く手掛け、ジェノバ方言の再評価の機運を醸成しました。どの曲も言葉の採用や表現の妙が素晴らしく、何年経っても色あせない美しい歌詞が特徴です。イタリア人に彼のことを訪ねれば、「彼は偉大な詩人だよ」とよく言われます。アコースティックギターを基本とした素朴でゆったりした音楽がその詞と絶妙にマッチしていて、まさにジェノバの街そのもののよう。個人的なおすすめ曲は上記のほかに"Il pescatore"(漁師)という曲です。


Youtubeの公式チャンネルにてデ・アンドレの最後のライブの映像が一部公開されていますので、ジェノバを訪れる際には彼の音楽を聴いてみるのがお勧め。ジェノバの街がいっそう趣深く見えるはずです。

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カテゴリー エンターテイメント・音楽・ショー 文化・芸術・美術
2019年1月12日
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2019/3/18更新

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    浅井まき
    大学卒業後、社会人を経て2015年渡伊。イタリア北部リグーリア州の港町ジェノヴァに住み始めてはや3年目。現在はジェノヴァ大学の大学院史学研究科に在籍。日本と大きく異なるイタリアでの大学院生生活に四苦八苦しつつ、17~18世紀のジェノヴァ共和国に関する研究を行っている。自分の専門以外にも西洋史全般、美術、現代音楽、グルメ、スポーツなどへの関心大。晴れた休日には近郊へ写真撮影に行くのが楽しみ。 DISQUS ID '@disqus_n3hiU5o4o9

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