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イギリス/グラスゴー特派員ブログ ギブソンみやこ&ローランズ真弓

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2008年6月 5日

今に生きるビクトリア朝の暖炉


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今に生きるビクトリア朝の暖炉

前回は、友人の家に伝わる古いアルバムをご紹介しましたが、そのとき、アルバムの背景に写っていた古風な暖炉に目をとめられた方も多かったのではと思います。実は、花のタイルで飾られたこの暖炉、ビクトリア朝の1890年ごろのもの。けれども、友人の家にやってきたのは、まだほんの去年のことなのです。


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今日は、今の暮らしに生きるそんなアンティーク暖炉のお話など……。


北国イギリスの家庭では、冬場だけにかぎらず夏のあいだもちょくちょく活躍することのある暖炉。古くから、一年を通して家族の団欒(だんらん)に、来客との歓談の場に欠かせない存在となってきました。ですから、石炭を燃料とする時代が終わりを告げ、ガスボイラーでお湯をわかし、そのお湯を各部屋に循環させる暖房セントラルヒーティングが一般家庭に浸透しても、リビングや応接間として使われる部屋の正面の壁から暖炉が姿を消すことはありませんでした。

1960年代の中ごろから都市部では大気を汚す石炭による暖房は禁止され、暖炉の燃料が石炭からガスや電気へと移り変わっていくにともなって、旧来の暖炉にはガスや電気を燃料とする暖房器具(備えつけのストーブといったところでしょうか)がはめこまれ、煙突はその換気口として使用されるようになったのでした。(ただし、現在でも、田舎では石炭の使用は制限されていないので、石炭の暖炉が現役で使われています。また、都市部でも煙の排出量の少ないコークスを燃料とする暖炉の使用は認められているのですが、コークスは石炭より高価なので、コークスを炊いて旧来の暖炉を使っている家はほとんどありません)


建築時からセントラルヒーティングの備わっている1960年代以降の家々には煙突のない家も少なくありませんが、家のメインルームの正面の壁には、ほとんど例外なくガスあるいは電気を燃料とする暖炉がはまっています。その造りつけの暖炉は、それこそビクトリア朝の雰囲気を伝えるデザインのものから、電熱線の走っているいかにもストーブという面持ちのもの、あるいは、現代のフローリングの部屋に似つかわしいシンプルでモダンなデザインのものまでさまざまです。


このように、今の時代にあっても家の顔と言うべき存在の暖炉を、ほんもののビクトリア時代の暖炉にしようと思いたった友人が出かけたのは、アンティーク専門の暖炉屋さん。イギリスには、アンティークの暖炉を専門にあつかっている店があるのです。1軒めではこれと思う暖炉には出会えなかったのでしたが、2軒めで見つけたのが先の画像でご紹介した1890年代の暖炉だったのでした。こっそりお値段を教えてもらったところ、暖炉の部分は、日本円にすると20万円あまり。周囲のマントルピースやフレーム、足元の石材に、石炭を模したガス暖房具の部分と工事費をふくめると30万円あまりになったそうです。


暖炉に点火すると、石炭を模した暖房具から炎が燃えあがって、そのようすは本物の石炭の暖炉さながら。あまりのリアルさに驚いていると、これもこっそり友人が教えてくれたことには、はじめて暖炉を使ったときに魔法の粉をふりまいておいたからなのだそうです。友人も、その魔法の粉が何でできているのかは知らないのですが、購入した暖房具についてきたとのこと。初回の使用時にこの粉をふりまいておくと、その後、暖炉を使用するたびに、点火してしばらくすると模造の石炭があたかも本物の石炭であるかのようにじょじょにほのかなオレンジ色に輝いて、ふりかけてある粉自体は石炭の表面に付着した燃えかすのように見えるのです。


現在は石炭の使用が禁じられている都市部の家に備えつけられたビクトリア朝の暖炉には、いかにオリジナルの雰囲気を再現するかという現代イギリス人のアンティークヘのこだわりと思い入れがうかがい知れるような気がします。それはまた、どんなに時代が移ろうとも古き良き時代を過去のものにはしないぞという頑(かたく)なな決意のようにも見えるのでした。

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2008年6月 5日
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