湖水地方、ビアトリクス・ポターゆかりの地を訪ねて その3

公開日 : 2011年10月17日
最終更新 :

ピーターラビットの絵本の作者ビアトリクス・ポターが暮らした農場ヒルトップ、絵本の原画が展示されているビアトリクス・ポター・ギャラリーを回ったあとは、ナショナルトラストの新しいアトラクション、レイ城(Wray Castle)を訪ねました。

ロンドンの裕福な家庭に育ったビアトリクス・ポターは、夏のあいだ、両親とともにスコットランドへ出かけるのが常でしたが、1882年、16歳の夏、湖水地方に避暑にやってきてこのレイ城に滞在しました。

ビアトリクスは、その滞在中に湖水地方の美しさに魅せられました。また、このレイ城でナショナルトラストの創始者の1人であるハードウィック・ローンズリー(Hardwicke Rawnsley)牧師に出会って感化を受け、湖水地方の環境保全運動に関心を持つようになっていったのでした。

後年、ビアトリクスが湖水地方を終(つい)の棲家(すみか)とし、湖水地方の環境保全運動に尽力するとともに、死後は、所有していた広大な土地や家屋をナショナルトラストに譲渡したことは広く知られています。ですが、このレイ城滞在が、彼女をそのような将来に導くきっかけとなったことはあまり知られていないのかもしれません。

ところで、堅固な造りには見えるものの、実は、レイ城、防衛や戦闘を目的として建造された本物のお城ではありません。イギリスのお城の中には、本物のお城を住居に改装し、住まいとしている場合も多々あるのですが、お城の外観を持った住居を建設し、その住居が「○○城(○○Castle)」と命名されていることも珍しくないのです。

レイ城が建造されたのは、1840年のこと。リバプール在住のジェイムズ・ドーソン(James Dawson) という外科医によって建てられたとのこと。お医者さんの収入は一般の労働者よりはいいにしても、お城のような構えの住居を建てるほどなのかなあと思ったのですが、どうやらこのお医者さんの奥さんが資産家の家の出で、建築費用はそちらから出たらしいです。

1875年にドーソン氏が亡くなると、レイ城は氏の甥によって相続され、ビアトリクスが両親と滞在したころは貸し別荘になっていました。さらに、時代がくだって1929年、レイ城はナショナルトラストに譲渡されました。現在は、修復中であり、近い将来、ホテルとして開業を予定しています。

レイ城の改修にはボランティアの協力があり、その中でも、日本の観光客の皆さんから大きな協力を得たとのこと。城内には、レイ城の修復作業を行っている人々の写真が展示されていました。例によって建物内部の写真撮影は禁止のため場内のようすはご覧いただけませんが、日本人と思われるボランティアの写真はなかったので、おそらく、一時期、物議をかもした日本人観光客からの寄付金がレイ城の修復にも使われたのではないでしょうか (日本人観光客からの寄付金集めについては、こちらこちらをご覧ください) 。

もしそうであれば、日本からの観光客に還元のできる寄付金の使い道になったのではと感じました。というのは、湖水地方の山や丘の上で日本人観光客の姿を見かけることはほとんどないのですが、わたしたちが訪れたこの日も、レイ城には日本からの観光客と思われる人々の姿があったからです。湖水地方に日本から訪れることのできるアトラクションがひとつ増えたことは何より。将来、ホテルに改装され、宿泊もできるとなればなおさらです。きっと、その宿泊料金っていうのは、それ相応の料金になるのではとは想像できるのですけれどもね。

ところで、このレイ城を訪れたあと、さらに南に位置する湖コニストンへの途上にあるユートゥリー農場(Yew Tree Farm)に寄ってみることにしました。ユートゥリー農場は、ビアトリクス・ポターの所有していた農場のひとつであり、ビアトリクスの若き日の恋を描いた映画「ミス・ポター(Miss Potter)」では、ヒルトップのロケ地として使用されました。現在は、ナショナルトラストのB&B(民宿)となっています。宿泊ができるほか、ビアトリクス自身によって家具や調度がしつらえられたティールームもあるとのこと。そのティールームでお茶をと思ったのですが、場所を見つけるのに手間取ってしまい、閉店時間近くにやっと到着。

ゆっくりお茶をしている時間はなさそうなので、お茶はまたの機会のお楽しみに譲ることにしました。ですが、せっかくたどり着けたので(それほどわかりにくいド田舎にあるのです!)、写真撮影をして、そのあと、出迎えてくれたアヒルに、「これで場所はわかったから、また来るね」とひと声かけてユートゥリー農場を後にしたのでした。

レイ城(Wray Castle)へのアクセスやその他の詳細については、こちらのサイト、ユートゥリー農場(Yew Tree Farm)については、こちらのサイトをご覧ください。

今回の記事は、ギブソンみやこがお届けしました。

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