家に軟禁、国勢調査

公開日 : 2000年10月22日
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困ったことになってしまっている。10月22日、トルコ国勢調査の日。直前になって、ツーリストまでがホテルや空港に軟禁という発表がなされた。地震以来落ち込んでいた旅行客がやっと戻り始めた矢先の出来事に、旅行業者、観光業者からは大抗議が。しかし前日になって発表された最後の決定でも、観光省大臣ムンジュは「朗報」と称してこう語っただけだった。「ツーリストは1日中ホテルに監禁というわけではなく、台帳登録が終わり次第外出を許可される。そんなに問題が起こるとは思えない。訪問中の国家の大事な事業である。トルコ国に敬意を表し、5分程度の時間を提供していただけると信じている。」なんのことかと思われるかも知れない。トルコの国勢調査は、基本的に5年に一回行われる。公務員が家一軒一軒を訪問し、国民の頭数を数える日。その日一日家から一歩も出るな、という外出禁止令が出るのであるが、いままでそれが外国人にまで適用されたことはなかった。訪問は、簡単なもので、前回は訪問されなかったというトルコ人もたくさんいたし、雑貨屋も開いていたから、トルコ人の中でも無視する人はかなりいたのである。どうしても仕事がある人は、前もって申請し、許可を得ることになっている。前回のときは、空港にお客様を迎えに行かねばならず、タクシーがないのではと心配した私だったが、当日になってみればほぼ通常通り、観光客や外国人居住者にはなんの影響もなかった。今回も当初はそうだったのである。普通は5年に一回のはずだが、今回は97年の実施から3年しか経っていない。新聞は、税金の正確な配分のためやら選挙が早まる気配やら書きたてるが、真相のところはわからない。とにかく、今回は政府はかなり厳しく調べること、抜けなく訪問が行われること、5分間ほどであるが43項目による口頭質問が行われること、朝5時から7時の外出禁止令を破ったものは最高6ヶ月の禁固または罰金...など、いつもとはなにやら違う厳しい報道が続いていた。だから「その日、トルコは観光客のものとなる」と書かれていたのである。ところが直前になって、今回の調査は外国人をも含むという発表がなされた。公共交通期間もストップ、その日到着の観光客も夜7時までは、空港やバスターミナルで待機というのである。当然大きなブーイングが起こった。居住許可を持つ外国人の中には「ばかばかしい、私は無視する」という意見もたくさん聞かれた。トルコ語も英語も知らない外国人にはどうやって質問する気なのだ?という声に、サバー新聞は政府の回答としてこういう記事を載せている。「トルコ語も英語もわからない外国人には現地語で対応する。日本人には日本語で、トルコ人にはトルコ語で。以下は質問の例である。Is ariyor musunuz?(求職中ですか?)=Shigoto,sagashitemasuka?,Okuma/Yazmayi biliyor musunuz?(読み書きができますか)=nihonngo,kakimasuka?nihonngo,yomimasuka?こんな言葉で聞かれたら、答えるより先に笑ってしまうじゃないか。大体何の意味があるのだ?観光にやってきたツーリストを閉じ込めてまで、やることか?観光を基幹産業のひとつとする国として、問題じゃないか?ありえない、観光省がだまってないよと希望を託した観光大臣の答えも冒頭の通り。いよいよ調査されることになってしまった者の一人として憤慨する私に、トルコ人が前日のテレビ番組の話をした。不法滞在者の話である。トルコは観光が大事な産業の一つであることもあり、今まで外国人の入国に大変甘かった。それが今、日本人の労働許可申請も認可されにくくなってきている。今回の国勢調査の外国人やツーリストへの適用は、多くなりすぎた不法滞在またはツーリストビザでの不法労働者の駆逐の意味合いが含まれるというのである。当日。結局、ツアーは取りやめて家でごろ寝して過ごす。あいにくの?雨。怠惰なトルコ人公務員が、全部本当にまわるわけないじゃん、と思っていたのだが...来ましたよ。12時半。分厚い台帳の4ページを埋める43項目。おお、これかい。なんだかまじまじ、見てしまった。5分もかからない質問が終わって、無罪放免となった私は、人の良さそうな調査員に聞いてみた。「あのー、外国人には外国語で、日本人には日本語で質問するって新聞に書いてあったんですけど?」おじさんはハハハと笑った。「まあカタコトの英語くらいならなんとかなるけどね。」まあやはり、それくらい徹底してやるよという脅しか。...そろそろ、スルタンアフメットは観光客の手に奪回されたかなと思う午後3時。7時または延長があった場合は10時まで外出禁止のトルコ人の皆様、ご苦労様です。私もこの雨じゃ、もう出かけないけどね。

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