パールハーバーに見るトルコ人の日本観

公開日 : 2001年07月08日
最終更新 :

パールハーバーがまもなく日本公開となるらしい。トルコでは6月始めには公開されていたから、今回の日本公開はかなり遅い感じである。やはり問題のある映画とみなしてのことなのか?アメリカではこの映画の影響で、日本料理店が襲撃に遭ったという噂も聞く。

トルコ公開の前にも、在住日本人の中にこの不安があった。トルコ人は感情の起伏が激しい民族である。終わったばかりのサッカーリーグの熱狂と、暴走するファンの路上パフォーマンスが記憶に新しい。この街にはまだまだ東洋人が少ないから、どこに誰が住んでいるなんていうことも一目瞭然。アパートの窓に石、投げこまれたらどうしよう?

本来であれば、おそらく世界中でトルコ人ほど、日本びいきの国民はいない。何故か、とこれまた明確な理由もない。例えば、オスマントルコが送ったエルトゥール号が、日本の串本沖で遭難した際の日本側の手厚い対応が、美談として良く知られている。また日露戦争を上げる人もいる。スルタン廃止と近代化への道を目指したとき、共和国初代大統領アタトゥルクが無血革命の見本としたのが明治維新であったこととか、同じく敗戦した国でありながら亡国の危機を乗り越え、短期間のうちに経済大国の地位を揺るぎ無いものにしたことへの共感と敬意であるとか、もともとトルコ人と日本人は、中央アジアを起源として西と東に分かれた兄弟であるとか...それは様々な説があって、一言ではとても説明できない。ただ確かなことは、この国では日本人は、ほぼ手放しで歓迎されているということだ。

そのトルコ人に、「《パールハーバー》は本当の出来事なのか?」と真顔で質問されて、私はびくっとした。いや、でも、歴史的事実は変えられまい。「まあ...そうね。戦争だからね」とわかったようなわからないような返事を返す。幻滅したかしら...怒ったかしら。恐る恐る彼の顔を盗み見る。しばらくして彼は言う。「でもまあ、戦争には相互の理由があるもんだ。日本にだって事情があったはずなのに、またアメリカは自分に都合のいい一つの視点からだけ論理を展開しようとする。パールハーバーを攻めるなら、原爆を二つも落っことしたのはどこの国だっていうんだ?」

いやはや。心配することはなかったようだ。日本バッシングは何故かアメリカバッシングにすり替えられてしまった。映画はトルコ人の最大の娯楽の一つだから、それからも何回かこの話題にはなったが、結果は多かれ少なかれ、彼の自説に近いところに落ち着いた。

恐るべしはトルコ人の日本びいき。なんだか苦笑いの出る、痒い気持ちである。

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