賞品つきコーランスクール

公開日 : 2005年08月28日
最終更新 :

夏が終わろうとしている。日本なら、子供達は夏休みの宿題を必死で片付けているかもしれないが、トルコの公立は9月半ばまで始まらないので、まだまだバカンス気分でイケる。

そうはいってもサマースクールもモスクのコーランスクールも終わり、バカンスの旅行からも一人一人と帰って来て、ゆっくり日常は戻ってくる。そうそう,夏の初めに話題だったあのコーランスクールは何人が皆勤したのだろう。

イスラム教徒であるトルコ人は、アラビア語でコーランを読むのかと思っている方が結構いるが、現在の一般的な学校教育を受ける子供達はアラビア語は一切習わない。宗教校は別だけれど、基本的に公用語のトルコ語、次が外国語の英語というケースが一番多い。しかし良く知られているように、イスラムの聖典コーランはアラビア語で読むのが基本である。トルコ語がラテンアルファベット表記となってから、アラビア語のアルファベットさえおぼつかなくなってしまった孫の状態を嘆くじいちゃんばあちゃんは、特に田舎には多い。そこでモスク主催のサマースクール、コーラン学校が開かれるのである。

まるでヨーロッパそのものの生活も可能なイスタンブールのような都会でも、宗教の基本を知って欲しいとコーランスクールに子供を送る親は、今でも相当いるらしい。しかし全国的に見れば、やはり生徒離れは進んでいたと見える。そんな中、賞品をモスクに展示して生徒を集めるモスクが現れたのだ,今年の夏は。

サムスンのカドゥキョイ村は6万人ほどの住民を持つ土地。その中のモスクのひとつを預かる23歳の若きイマム、ズルネイカン・ゲレン氏は、今年のコーランスクールについてプロモーションを行った。つまりコンピュータ三台、自転車6台、携帯、腕時計50個、サムスンスポール(地元サッカーチーム)ユニフォーム15、スウェットスーツ,靴,ズボンなどいろいろな賞品を用意し、コーランスクール参加者の中から優秀なものにあたえることにしたわけ。果たして去年は50人しかいなかった参加者が今年は初日申込みで85人の満員となり、補欠は250人にも膨れ上がったのだ。若きイマムはいう。「去年までのシステムは現在の子供たちにそぐわないと思っていた。学校に1年のうち八ヶ月閉じ込められている子供たちをまたここで2ヶ月閉じ込めたいとは思わない。これはボランティアであり、愛を持って成す仕事だ。間違っても殴ったり無理やりにさせることじゃない。子供達にも楽しんで、笑って、そしてコーランの勉強を好きになって欲しいんだ。モスクが再び魅力的になって、子供達と仲直りするのが目標だ」

とはいっても賞品で釣るなんて、なまぐさいじゃありませんかと思うのは日本人だけらしい。宗教家たちはそろって彼の新しい試みを評価したし、こんなに豪華じゃなくともご褒美が用意されるというのは昔からあったことなのだそうだ。だいたい彼はこの試みを市民や市と相談して実行に移したそうだし、少なくともサムスンでは好意的に受け止められたってことだ。私はイスラム教徒ではないが、この国のイスラムの実践は人間臭くて、そんなのだめじゃんと思いながらも、ときどきほのぼのしてしまう。今回もまた私は、まあそういうのもいいかと結局妙に納得してしまった1件であった。

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