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トルコ/イスタンブール特派員ブログ 旧特派員 髙谷 一美

トルコ・イスタンブール特派員が現地から中東地域に至るまで、旅行・観光・食事などの現地最新情報をお伝えします。

2013年6月 8日

ゲジ公園のこと


ゲジ公園のこと

日本でもトルコのデモの映像は伝えられているようです。心配のメールをたくさんいただきますが、6月1日の夜、警察が引きあげて市民がゲジパークを取り戻してからは、集会はあるものの警察との衝突はないのでタキシム周辺は落ち着いていると言えます。そこから首相府関連の施設があるべシュクタシュ、ドルマバフチェ周辺で数日ありましたが、昨日、今日は大きな集会もなく、タキシムは再びテントであふれ、知らない人が見たら何のお祭りだろうと思うような光景になっています。実際、アラブ人観光客が嬉しそうに記念写真を撮っていましたし、子供もうろうろしています。


何のデモだか分からない方も多いと思いますが・・・タキシム広場と言うのは新市街の中心と言われ、独立記念碑があるように共和国の象徴と言うような場所なんですね。このとなりにGEZI公園という公園があります。そんなに大きな公園でもなく、ホームレスなんかもいて、整備が行き届いているともきれいとも言いがたいところがある公園ですが、町の中心部にある数少ない公園で、夏になると大きな木の下のオープンスペースでチャイを飲むのを好む人は多かったと思います。そうそう、この一角にベイオウル区の結婚式場もあって、ここで結婚した人には思い出の場所にもなっているはずです。


タキシム広場の再開発は去年末に始まりました。車が広場の下をくぐるようにトンネルを作り、広場自体は歩行者天国にする大掛かりな工事です。その一部として、ゲジ公園を取り壊し、昔そこにあったという兵舎を再建するということになりました。木が切られることに自然保護団体などは反発し、一回は裁判で停止命令が出たのですが、再び高等裁判で市にひっくり返され、とうとう今日にも明日にもゲジ公園の取り壊しが始まるというので、反対する個人や団体は、公園にテントを張って居座り、工事を断固阻止するべく決意を固めておりました。5月27日の夜になってショベルカーがやってきました。そして、待ち構えていた反対派の邪魔にあったわけですが、ここで警察が介入。公共事業の邪魔をする不法占拠者として、居座っていた人々に対し、放水はまだしも、催涙ガス弾を使って攻撃。「タキシムが戦場に!」煙に巻かれる反対派と警察の激突のようすはソーシャルメディアなどを通じてトルコ中を駆け巡り、市民はこの警察の仕打ちに大抗議。日に日に大勢の人が反対派に加担するようになり、ことはゲジ公園の木が切られる、抜かれるの話だけでは済まなくなりました。この事件直前に国会で可決したアルコール販売への規制強化や子供の数や4+4+4という教育制度の強引な変更や・・・上げるとキリがないのですが、与党の支持率を根拠に進められる強引な政策、特に個人の生活スタイルにかかわる禁止や制約事項には、国民の不満はたまりにたまっており、それが今回の催涙ガスという実力行使で一気に爆発したのだと思います。民主主義を求める!独裁反対!国民の声を聞け!公園に詰め掛ける人は、野党関係者や宗教団体やテロ扇動者などいろいろな思惑をも含んで膨れあがり、警察との激突が起こると石を投げ、車両を焼いたり、政府のATMを壊したりする暴徒もあらわれました。同時にイスタンブールだけではなく、トルコ全土や海外にも運動は広がりました。催涙弾などで問答無用で追い払われることは市民の怒りをあおり、より結束して反抗する要因となっています。イスタンブール以外の都市ではまだ激しい衝突が続いているところもあります。


反対派弁護士たちが訴訟を起こし、公園の工事は一旦差し止められ、警察は公園を開放しました。市民は公園を取り戻したことに一応満足したのか6月2日の朝、雨の降る公園にはほとんど人はいませんでした。午後2時からの集会にはまたたくさんの人が集まり、もはや反政府運動となってはいましたが、公園から警察を追い出した勝利感というかひとつの達成感がその日はただよっていました。その日からまたテントを張った見張り番ははじめられ、どんどん増加して、7日現在では公園を埋め尽くし、それぞれ無料で持ち寄った食べ物、衛生製品などの物資を分け、新聞を発行し、バレーボールをしたり、屋外図書館と称して本を並べたりもして、便乗商法の屋台とあいまってまるでお祭りのような景観になっています。


日系の旅行を扱う会社数社に聞いたところ、旧市街にはほぼ影響はないようで、日本人観光客のツアーキャンセルは非常に限定的なのだそうです。


こんな騒動の最中に、首相は外遊にお出かけになっていたのですが、与党でも周りの人々が軟化しているのに対し、帰国早々空港近くで夜中の3時に1万人とも言われる人を集めた集会を開いてバスの上から会見。帰国前のチュニスからの会見と同じく、あくまでゲジ公園は潰すとまた日に油を注ぐような発言。ただしここに集まった人々は、おおむねエルドアン支持派で、禁止されているはずの集会を首相自体が開いている現実も、アンカラではなくイスタンブールに夜中に帰ってくるという旅程変更も、ものすごい茶番でしかありませんでした。一人の外国人としてみれば、みんなが叫ぶほどの「独裁」はまだなかったと思っていましたが、これでは本当に独裁は完成しかかっていたのではないかと思ってしまうほどでした。
みなに誇れるタキシム広場、安全で清らかなタキシム広場を作ると言う考えに別に反対はしませんが、その計画がこんなにも今、反発の元になったなら、もっとすばらしい公園を作ることでも対応できるのではないでしょうか。なぜここまで自分の計画にこだわるのか、疑問視する政治家も出ています。


収束の時は来た、と昨日から首都アンカラではこの事態を沈静化し、国の被害を最小限に抑えるための討議が行われています。実際の物質的被害に加え、株や外貨、それから日本メディアが大好きなオリンピック招致レースにおける印象の悪化・・・トルコの受けた被害は膨大ですが、それでも手に入れたいものがある国民の意識は明白で、後悔はないように思います。デモは珍しくない国ですが、それでもこんな大きなムーブメントはなかったし、本当に身近にいる友人たちがこんなに積極的に参加した運動もなかった。首相が言うような暴徒も扇動者もいるのは確かでしょう、でも今回のデモの参加者の多くは、私の周りにいつもいた、私の大好きな普通のトルコ人で構成されているように思います。これで止められなかったら、これだけやっても聞き届けられないなら、住む国を変えると言っている友人もいます。今、与党を倒しても、他に頼りになる党はないので、政府辞任コールには「辞任要求してそこからどうするの?」と私もいいたくなるのですが、独裁化やイスラム色を弱めた最初の頃の与党に戻るのか、それともイチからまたどこかの党がやるのか・・・なんか10年前もどうなるんだろう、と思ってたなあ。経済の建て直しなどで実績をつけた与党は今でこそ権力を誇っていますが、初めて政権をとったときは、若く、経験も浅く、やはり他に票を入れるところがなくてタナボタだったような印象でした。あくまで私の私見ですが。トルコに住む外国人として、これからの展開が気になります。少なくともこれだけの人が、特に若者が、政治のことや国のことを考えているというトルコの現実は、少し引いてみると、うらやましく映ったりもします。

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2013年6月 8日
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