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南アフリカ/ヨハネスブルグ特派員ブログ 旧特派員 笠原 由晶

南アフリカ・ヨハネスブルグ特派員が現地からアフリカ地域に至るまで、旅行・観光・食事などの現地最新情報をお伝えします。

2013年8月15日

モノをあげる援助の賛否を考える TOMSのチャリティシューズを例に


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モノをあげる援助の賛否を考える TOMSのチャリティシューズを例に


TOMS(トムス)というブランドを知っていますか?


トムスはキャンバス製のシンプルなスニーカーなどを展開するファッション・ブランドです。これなら似たようなブランドがありそうですが、トムスは1足の靴が売れると途上国にもう1足の靴がプレゼントされるという、One for Oneモデルを確立したことで有名になりました。


そんなトムスは最近、南アフリカ共和国出身のハリウッド女優シャーリーズ・セロンとコラボレーションしたシューズ を発売しました。


「1足の靴が売れると途上国にもう1足の靴がプレゼントされる」という取り組みは一見すばらしい取り組みのように見えますが、実際はどうなのでしょうか。このトムスのチャリティシューズを例に、「モノをあげる援助」の賛否を考えてみたいと思います。


最悪の国際援助? それともグッドアイディア? TOMSのチャリティシューズをめぐる2つの意見

シャーリーズ・セロンによる呼びかけ


僕はトジョウエンジン というWEBマガジンによってこの取り組みを知りました。トジョウエンジンでは、トムスの取り組みをグッドアイデア(原文ママ)の1つとして紹介しています。


▼南アフリカ共和国出身の女優シャーリーズ・セロンとTOMSがコラボしたHIV啓発シューズ

http://eedu.jp/blog/2013/06/06/toms-hiv-african-youth/


一方で、この取り組みに対しては批判的な意見も見られます。例えば別のWEBマガジンMatador は、「7つの最悪な国際援助のアイディア(7 worst international aid ideas)」の1つとして、トムスのOne for Oneモデルを紹介しています。


▼7 worst international aid ideas

http://matadornetwork.com/change/7-worst-international-aid-ideas/


この記事は批判の根拠として、具体的に次のような問題点を指摘しています。


●トムスによる靴の無料配布は、地域内で販売や修理、靴の生産などに従事する人々の機会を奪う可能性がある。


●問題の本質を直視していない。靴を持っていないことが問題なのではなくて、そのような状態を生み出している貧困こそが問題なのだ。


●トムスは靴を中国で生産している(アフリカでは生産していない)。生産コストが安いからだ。大局的に考えた時に、トムスのようなOne for Oneモデルは、世の中の経済的な不平等を生み出す搾取的な構造を正すふりをしながら、むしろそれを強化しているのではないか。


異なる立場から「モノをあげる援助」を考える

さて、「モノをあげる援助」の1つであるトムスの取り組みはグッドアイディアなのでしょうか。それとも、最悪の国際援助なのでしょうか。靴を購入する人、靴を受け取る人、そして、靴を受け取る人の周辺にいる人という、3つの立場から、僕なりに考えてみたいと思います。


●靴を購入する人(寄付者側)にとって

まず、靴を購入する人の(寄付者側とします)立場から考えてみます。すると、これはとてもいい取り組みに思えます。なぜならば、欲しかった新しい靴を買うだけで、僕たちは特に追加の負担をすることなく(実際は価格に転嫁されているかもしれませんが)、貧しい子どもたちを助けることができるからです。


また、自分が1足靴を買うと、途上国にもう1足が届けられるというのはわかりやすいですし、なんだかとてもいいことをした気分になりそうです。


●靴を受け取る人(受益者側)および周辺にいる人にとって

次に、靴を受け取る側の立場(受益者側とします)から考えてみます。確かに、南アフリカには靴を買うことができない人たちがいます。「靴が欲しい」。僕自身、今まで何回も村を訪問する中で、このように言われたことは1度や2度ではありません。ですので、靴を受け取る人にとってはとってもいい取り組みに思えます。


しかし、周辺にいる人たちにとってはどうでしょうか。上で紹介した批判のように、靴の無料配布が地域内での経済活動に悪影響を与え、ある一定の人たちから現金収入を得る機会を奪ってしまうとしたら、これは元も子もありません。


ちなみに、少なくとも僕が今まで訪問した南アフリカの村の周辺では、靴を購入することができます。「貧しい子どもたちに靴を届ける」ことが目的なのであれば、わざわざ自社製品を海外から持ってくるのではなく、現地調達を行えば地域にお金を落とすこともできるように思います。


寄付者側だけではなく、受益者側にもメリットのあるグッドアイディアに期待

1308_toms05.jpg

近くの村の子どもたち


これまでトムスの取り組みを例に、「モノをあげる援助」についてさまざまな角度から考えて来ました。これらをふまえて、僕なりの見解を示したいと思います。


僕は次のような理由から、「モノをあげる援助」に賛成できません(ただし、緊急時などの場合は除きます)。


そもそも、援助は寄付者側の自己満足のために行うものではなく、貧困を解消するために行うものです。したがって、援助を行うにあたっては受益者側のメリットを最大限に尊重するべきです。


モノをあげる援助、特に外からモノを持ってきてプレゼントする取り組みは、モノを直接受け取る受益者には一定のメリットがあるものの、これまで考えたように周辺へのデメリットが小さくありません。これは、決してよい援助とはいえないでしょう。


ですので、トムスのOne for Oneモデルもグッドアイディアだとは思いません。一方で最悪の国際援助とも言い切れませんが、仕組みを大きく改善するべきだと思います。


トムスのOne for Oneモデルは、寄付者側の立場から考えると、楽しく、気軽にチャリティができる優れたモデルです。でも、受益者側に立った場合には、「モノをあげる援助」に共通する課題を克服していません。外からわざわざ自社製品を持ってきて配ることは理にかないません。


また、「1足の靴が売れると途上国にもう1足の靴がプレゼントされる」モデルは寄付者側にとってはとてもわかりやすいですが、そのわかりやすさゆえに、貧困という複雑な課題への理解をかえって遠ざけるのではないかとも懸念します。


ただ、靴を買うことで国際協力ができるというハードルの低さは魅力的です。もし今後「靴をプレゼントする」という支援方法がよりよい方法に変われば、たくさんの人を巻き込むことができ、かつ、受益者側にもメリットがある、まさにグッドアイディアと呼べるようになるんじゃないかなと思います。


「必要なのは教育、医療、雇用」 途上国の立ち上がる意思を持った人たちの声

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村の志あるスパザショップ経営者ダニエル


では、よりよい支援方法方法とは何でしょうか。


南アフリカに暮らして1年半が近づきつつある今、僕がひしひしと感じているのは教育と雇用の重要性です。


教育は今回の話から少し離れますので、雇用について書きたいと思います。これは知人から聞いた話ですが、経理担当の求人情報を発行部数数万部の地方紙に掲載したところ、30人以上の応募が届いたそうです。そこで履歴書を見てみると、応募者の多くが中学、高校はもちろん会計学の学位を取得している大卒者であるにもかかわらず、卒業から2〜3年、中には5年経っているのに一度も仕事に就いたことがない(就けない)という人が少なくない......この話を聞き、南アフリカで職を得ることの難しさを垣間見ました。


仕事がないということは、収入がないということです。5年間も、いや、2年間でも無収入の状態が続いたら、生活は苦しくなります。靴を履けない子どもたちを生み出すのは、こうした状況が積み重なって陥る貧困です。ここでやるべきことは、靴をプレゼントすることでしょうか。僕はそう思いません。これはたいへんむずかしいことですが、例えば雇用を生み出す、スタートアップの資金を提供する、技術習得の機会を提供するなど、自分の手で生活をよくする術を得る機会の提供ではないでしょうか。


1308_toms06.png

My Worldの投票結果


今、世界では、これからの国際開発をどのように行うかの議論が進められていて、この一環として、今後の世界の優先事項を問うMy Worldという調査 が行われています。これによると、途上国の優先順位は「1位:質の高い教育」「2位:よりよい医療」「3位:よりよい仕事の機会」だそうです。


何かをもらうことだけを望んでいるのではなく(もちろんそういう人もいますが)、自分の力で立ち上がる意思を持った人たちはいたるところにいます。例えば僕は以前訪れた村で、志あるスパザショップ経営者のダニエル に出会って感銘を受けました。


そんな人たちを後押しする取り組みが増えることを願っています。


追記:既にいくつかいただいていますが、ツッコミ、ご意見大歓迎です。反映させてよりよい深みのある記事にできればと思います。よろしくお願いします。


photos by: Geecy


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      笠原 由晶
      大学卒業後、料理人見習いなどを経て国際協力NGOに6年間勤務。妻の海外駐在を機に退職し、2012年4月から南ア在住。現在はハウテン州ヨハネスブルグとリンポポ州マカドを往復しながら、主夫業やニュース記事の翻訳を行う日々です。元バックパッカー。1981年京都府生まれ。南アでの愛称は「かちゃ」。ご連絡はこちらへどうぞ。

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