石清水八幡宮 - 今も残る神仏習合の跡

公開日 : 2009年02月02日
最終更新 :
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彼が本宮と間違えたのは山麓の極楽寺や高良(こうら)神社(写真上左)でしたが、極楽寺は既になく、高良神社ももう間違えるほどの様子ではありません。車で行くのでなければ山上まではケーブルカー(男山ケーブル。写真上中)で上るのが一番楽ですが、私は七曲り(写真上右)から大坂の参道を上って行きました。京阪電鉄の八幡市駅からは20分ほど(人によってはそれ以上)です。

途中、二の鳥居の手前から入る裏参道(太子坂)もありますが、急勾配の石段の連続なので上りではお薦めしません。

石清水八幡宮は平安時代の始めに奈良・大安寺の僧・行教が鎮護国家のため神託によって豊前(現大分県)の土着の神であった八幡神(宇佐八幡)を勧請したことが始まりとされ、都の鬼門を延暦寺が護っているのに対し、石清水八幡宮は武勇の神として裏鬼門を護ることになりました。

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行くまではまったく頭になかったことですが、ここにはかつて「男山四十八坊」と言われたほど多くの宿坊があり、沢山の僧侶たちが起居し、八幡宮に仕えておりました。

僧侶が神に仕える!? はい、間違いではありません。わが国への仏教の伝来後、日本のネイティブの神と外来の仏とが融合する現象が生じ、各地に神宮寺が建立され、後に「神仏習合」と言われることになったのはご存知の通り。

その後「日本の神の本来の姿(本地)は仏であり、この仏が人々を救うため神に姿を変えて示現した(迹(=跡)を垂れた)のだ」とする説(本地垂迹説)が現れました。

石清水八幡宮の祭神はその名の通り八幡神(応神天皇を首座とする三座)ですが、このような考えからその本地仏は阿弥陀三尊とされ、名称も「石清水八幡宮護国寺」となり、八幡神は「八幡大菩薩」の異名をとるようになりました。そして出家姿の八幡神が造像されるようになり、今も東寺や奈良の東大寺、薬師寺などに「僧形(そうぎょう)八幡神像」として祀られています(いずれも国宝)。

日本の宗教の歴史は神仏習合の歴史とも言い換えられそうなほど長い神と仏の融合の時代があったわけですが、これを解消したのが明治政府の「神仏分離令」でした。そしてこれが神道家らなどによる暴走(廃仏毀釈)を招き、奈良の興福寺では僧たちが復飾(還俗)させられて春日社の神官になり、今は国宝になっている五重塔が売りに出されたという話は有名です。そして石清水八幡宮においても仏教色の排斥は例外ではありませんでした。

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今、多くの神社には神仏の習合があった気配すらありませんが、石清水八幡宮にはその名残が多くの宿坊や護国寺の跡として残っています。でもそれらの場所はほとんど荒れるに任せる状態になっていました。(写真左から泉坊松花堂跡の碑、松花堂の露地跡、泉坊跡全景)

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石清水八幡宮とその周辺には見所が沢山ありますが、神仏習合の形跡を目にしたことは少なからぬ驚きでした。そして神と仏は別の存在であるのが当り前の現在から見て、往時は神前で読経がなされ、境内には香の煙と匂いが漂っていたのかも知れないなどと想像すると、ただただ奇怪で不気味な感じさえします。

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(写真上左:石清水八幡宮の名前の由来となった摂社の石清水社。鳥居正面の泉殿内部に清水が湧いています。鳥居の右が石清水社本殿。八幡宮の本宮は泉殿の背後の山上にあります。 写真上中:エジソン記念碑。アメリカの発明家エジソンが白熱電球のフィラメントに男山の竹を使ったことを記念したもの。京阪電鉄の八幡市駅前にはエジソンの胸像があります(写真上右))

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