ロックダウン中に大人気だったデリバリー料理はあの国!「イギリスで食べるインド料理」

公開日 : 2020年09月03日
最終更新 :

「イギリスの食事がまずいだなんて、昔の話」という声を聞く一方、こと「イギリス料理」に関しては、あまり評価が高くないというのも実際のところではないでしょうか。

現に今年2020年3月から数ヵ月にわたってロックダウン(都市封鎖)されたイギリスでは、他国同様デリバリー料理が盛況でしたが、意外にもフィッシュ&チップスといったイギリス料理よりも、新型コロナ以前より人気なのは中華。次点はインド料理、というのが常でしたが、ロックダウン初期の4月に限っていえば、この常連ポジションをくつがえし、インド料理が堂々の1位に君臨しました(参照:Foad, David. "Orders show Indian food is UK's favourite lockdown cuisine" Public Sector Catering 2020.)。

飛躍的に伸びたフード・デリバリー・サービス

2020年4月にフォード氏がウェブサイト「Public Sector Catering」に寄稿した記事によると、「Flipdish」というフード・デリバリーのオンラインサイト集計で、インド料理のデリバリーは4月以前の過去4週間比で、なんと294%増しの4倍になったそうです。

もっとも人気が高かった料理はカレーやタンドリーチキンかと思いきや、意外にも日本ではあまり知られていないパコラ「Pakora」。これは天ぷらに似た野菜のかき揚げ、フリッター(fritter)で、こちらが1番人気だったとか。

僅差でほぼ同じくらい健闘したのが、イギリス人にもすっかりお馴染みになった中華料理で、前月比272%の注文増しでした。その次にやっと出てくるのがさらに身近なフィッシュ&チップスで、3月のロックダウン以来130%増し、以下、需要が伸びているタイ料理が48%、定番イタリアンのピザが82%増しでした。日本では少し前まで「デリバリーといえば宅配ピザ」という印象が強かったですが、イギリスでは意外にも料理別ではこの時点で最下位でした。

実店舗のインド料理屋さん「Taste of Bengal」にて

そんなイギリス人に大人気のインド料理を食べに、「Taste of Bengal」の席を夕飯に予約しました。名前のとおり、インド・西ベンガル州からバングラデシュにかけて広がる地域(ベンガル地方)の料理を出すお店です。

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現代風のコンテンポラリー(contemporary)料理を出すだけあって、店内は小さいながらも暗めの照明と、センスのいい調度品がモダンで落ち着いた雰囲気を演出しています。

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スタッフはマスクをし、入口にはすっかり定着した消毒液とおしぼりもありました。床には1mの距離をとるための表示が描かれており、店内奥へと誘導しています。

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先月に行ったレストラン(参考記事)でもそうでしたが、お客さんは終始入れ替わり立ち替わり現れ、お店には活気がありました。けれどひとつのテーブルが埋まると、その隣のテーブルは大抵空席になっています。どうやらどのお店も、予約時間をずらして受け付け、どんなときでも満席にならないよう手配しているようです。

パン類の多さにビックリ

食事は、イギリスのデリバリーでも大人気だというカレー料理を中心に、タンドリー・グリル肉の盛り合わせとビリヤニ(Biriyanisカレー風味のピラフ)、前菜にチャツネ(Chutneyジャムやペースト状のソース)を注文しました。

ビールはキングフィッシャー(Kingfisher)やコブラ(Cobra)など、インドのもので乾杯。すぐにチャツネが運ばれたてきたのですが、セットで頼んだパパドム(Papadom)という大きな揚げせんべいのようなスナックが秀逸でした。

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インド国外ではインド料理を代表するパンとして、ナーン(Naan)がよく知られていますが、インドではそのほかにチャパティ(Chapati)やロティ(Roti)といったさまざまな種類の「パン類」があります。パパドムもその一種に思えますが、これがまったく期待していなかった分、余計にそのおいしさに驚きました。てっきり味はついていないかと思いきや、しっかりした塩気と脂っ気で、いくらでも食べられそうでした。

ナーンとロティの違いがよくわからず両方頼んでみましたが、ナーンは発酵後へら型に延ばしてタンドゥールと呼ばれる窯の内壁に貼りつけて焼いたもので、ロティは発酵させないパンだそうです(参照:Linh. "What is the difference between naan and roti?" Recipe Marker 2020.)。

インドでは大きなタンドゥールを持つ家庭は少なく、精白した小麦粉で作るナーンは贅沢品だそうです。確かに、ナーンはイースト効果でふっくらと柔らかく、チャパティよりおいしいといつも感じます。インドでは米食文化も多く、南インドではまず供されないようで、ベンガル地方の主食も米だそうです。

野菜系カレーが驚異的な安さ

「ベンガル料理は野菜をふんだんに使うことが特徴のひとつであり、コース料理のようにダール(豆などのスープ)からスタートし、野菜、 魚、肉、と順番に食べていくスタイル。」(参照:"Bengali Food & Cuisine" Cultural India)

と知ったのは、帰宅してからのこと。その割にはわが家のテーブルだけ、はじめのチャツネ以降、やけにいっぺんに食事がきたことに納得ができませんが(確かにほかのテーブルでは、コース風に出されていた。)ほうれん草とジャガイモのカレー(£3.9)や、えびカレー(£7.9)などが特においしかったので、文句はありません。

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野菜系のカレーがとりわけ安かったことにも驚きました。ほかに頼んだオクラカレーもほうれん草カレーと同じ値段で、少食な方であればこれらの野菜カレーにナーンをセットで食べれば、十分な量でもありました。

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デザートはカルフィ(Kulfi)という伝統的なピスタチオのアイスクリーム(£3.25)や、子供用に鳥型のプラスチックケースに入ったチョコレートアイス(£3.5)などを頼みました。ケースをおみやげとして持ち帰りができ、子供ウケ間違いなしです。

デリバリー・サービスでも応援

上記ウェブサイト「Public Sector Catering」の記事にて、「Flipdish」のマッカーシー(Conor McCarthy)最高経営責任者は、4月の時点で「いまのところフード・デリバリーの栄冠はインド料理にあるが、それもいつまで続くのか?」と先の見えない不安定な飲食産業に対して、不安な気持ちを口にしていました。

実際イギリスの日刊タブロイド紙『デイリー・ミラー(Daily Mirror)』のオンライン版では、2020年7月15日時点、資金編集者(Money Editor)のアンドリュー氏(James Andrews)がフード・デリバリー・サービスのデリバルー(Deliveroo)による集計をもとに、「カレーもまだまだ健闘しているが、いま1番人気はハンバーガー」という結果を掲載しました。

それによると、これはイギリス人が普段から行き慣れた地元のパブやレストランが、ロックダウンの影響で依然として閉鎖中であり、そこでいつも食べていたメニューであるハンバーガーを猛烈に欲している影響からだ、と分析しています(参照:Andrews, James. "Britain's most popular takeaway dishes named - see how your area compares to rest of UK" Mirror 2020.)。

再びフォード氏の記事内で、「Flipdish」のマッカーシー最高経営責任者の言葉に戻ると、マッカーシー氏は「テイクアウト料理を注文することは、個人事業主の飲食店を救済することにつながる。すべての人は、ロックダウン後も見据えて地元の飲食産業を応援すべきである」と述べています。

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今回利用したインド料理店「Taste of Bengal」でも、「とてもおいしかった」と伝えると「じゃあ、今度はコレで」とデリバリー・サービスのパンフレットをくれたので、すでに「ロックダウン後」である今後も、デリバリーや再訪で応援したいと思います。

◼️Taste of Bengal・住所: 1 Station Parade , South Croydon Surrey, CR2 0PH・アクセス: 電車Sanderstead駅すぐ・営業時間:  毎日17:00〜22:30・URL: https://tasteofbengalonline.com/

筆者

イギリス特派員

パーリーメイ

2017年よりロンドン南部で家族と暮らしています。郊外ならではのコスパのよいレストラン、貴族の邸宅、城めぐり、海沿い情報などが得意です。

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