政府支援終了後も引き続いて独自案を練るイギリスの飲食店「The Castle Inn」

公開日 : 2020年09月27日
最終更新 :

日本では来月10月より、政府主導の「Go To イートキャンペーン」が順次始まるようですが、イギリスでは以前紹介した飲食店への支援策「Eat out to help out」(関連記事)が、8月いっぱいで終了しました。

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しかし、そのあともしばらくは同支援策を継承し、お店独自で割引キャンペーンを実施する飲食店がいくつかあります。ケント州にあるガストロ・パブ「The Castle Inn at Chiddingstone」は2020年9月中の木曜と金曜に、政府が実施したキャンペーンとまったく同じ、飲食代(除くアルコール飲料)の最大50%を割引いています(ひとりあたりの割引額は最大£10)。またいつものように、かけ込みで利用してきました。

一帯に広がる歴史的建築物

場所は歴史的建築物の保護を目的に設立された英機関、ナショナル・トラスト(National Trust)管理の村、チディングストーン(Chiddingstone)内にあります。

ここはチューダー様式(Tudor style)の建物が多く残り、特に白壁に太い黒枠がいくつも並ぶデザインが特徴的です。わが家の自宅も一部チューダー様式を取り入れているようで、越してきた当初はまったく知識がありませんでしたが、遊びに来た友人に指摘されました。そんなこともあり、村では「これが本場のチューダー様式!」と興奮しました。

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今回訪れたThe Castle Innの建物も15世紀はじめのものと歴史は古く、暖炉やタイル張りの床、オーク材のパネルや棒などが「グレードII*」に分類されるほど重要な文化財です。

「NIKKEI STYLE」がまとめた記事によると、ナショナル・トラスト「登録文化財総数のうち、国家的にも貴重な建物とされる「グレードI」に区分されるものは、おおむね日本の国宝に相当し、1万件弱」だそうです。The Castle Innの「グレードII」とは、「日本の重要文化財に相当するレベルで2万件強、残りの92%は「グレードII(が付かない)」」とのことです。(出典:なぜ英国の文化財は美しいのか 観光大国日本へのヒント デービッド・アトキンソン小西美術工芸社会長兼社長 クローズアップ|NIKKEI STYLE)

そんな貴重な建物で食事ができるパブなのか、と考えると到着前からテンションが上がりました。

食事がおいしいガストロ・パブ

パブ好きなイギリス人は特に男性の場合、お酒を飲むときは徹底して飲酒に徹し、ツマミはほとんど手をつけない、というより注文すらしないことも多いです。イギリスのパブとは本来このような形態が普通で、パブ内での食事は注目されていませんでした。

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そんな伝統的なパブ文化に新しい風穴をあけたのがThe Castle Innのようなガストロ・パブ。「ガストロ・パブ」という用語は、「ガストロノミー (gastronomy)」と「パブ (pub)」を組み合わせた造語で、パブ内にバーとレストランを併設した飲食店を指します(参照:Synergy Restaurant Consultants 'WHAT'S THE RAGE WITH GASTROPUBS?')。1991年に開業したロンドンのパブ、The Eagle Farringdonが生み出したこの言葉と形態は脚光を浴び、あっという間に海を越えアメリカを始め、世界に広まりました。

けれどこの言葉を使うには「質のよい食事」を提供することが条件のようで、イギリスの権威あるケンブリッジやオクスフォード辞典でも「serving good food」「where high-quality food is served」と定義しているほどです。

The Castle Innは自称こそしていませんが、見たところこのガストロ・パブに該当するはずです。おのずと食事にも期待が高まります。

パブでの注文方法

パブによく行く人というのはそもそもビール好きが多いので問題はないでしょうが、大手チェーン店を除き、イギリスのパブではたいていドリンクメニューがありません。ガストロ・パブはレストラン形式なので席で注文できますが、通常のパブではバーカウンターに行って何でも注文するので、ドリンクも各種カウンターに並んでいるビアタンクを指差して銘柄を指定するスタイルです(現在はコロナの影響で密集を避け、席注文に変更中です)。

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なのでビールに詳しくないわたしは、パブで最初に「お飲み物は?」と聞かれるのが苦手です。わかってはいますが「何がありますか......?」と聞いても「エール(ビール)かラガー(ビール)か......」としかやはり答えてもらえず、「ビールといえばラガーの日本人」の典型のように、とっさに「ラガー(小グラス£2.8)で」と答えてしまいました。

イギリスといえばエールビールが主流で、日本人には驚きの「生ぬるさ」が特徴のひとつです。ビール好きの主人が友人と飲みに行くときは、いつもパブが独自に仕入れるエールビールを注文するのを楽しみにしています。わたしも真似て、おかわりはエールビール(小グラス£1.8)にしてみました。飲んでみるとやはりぬるく、かつエールらしい特徴ある苦味を感じ、わたしとしてはきちんと冷やされたラガービールの方が慣れているせいもあり、エールはやはりちょっと苦手です。好みの問題だと思います。

ガストロに恥じないクォリティ

食事はパブ飯の代表、フィッシュ&チップス(£13)に各種バーガー(£13)、わたしは店名を冠した「The Castle Innキッシュ(£10)」がパブ飯としては珍しいので注文しました。ガストロ・パブのバーガーはたいていどこでも「間違いなくおいしい」、こちらの写真のような見かけをしています。

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キッシュの見かけは看板メニューとして期待した割には普通でしたが、どれも確実に「ガストロ」基準を満たした味です。

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感動したのがデザートのブラウニー(£6)。見かけはイギリスらしく相変わらずの地味さですが、何やら濃厚な黄色いソースがかかっているのも初めてですし、外側はカリッ、中はしっとりでこれまでにないおいしさ。ブラウニーがちゃんと温められているのもうれしいサービス。本場アメリカでブラウニーを味わったことがないせいかもしれませんが、個人的には史上No. 1のおいしさだと感じました。

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お会計もしっかり「-50% September Discount」が適応されており、本日も大満足なり!

現在The Castle Innでは、新型コロナウイルスの影響で営業日、時間、メニューを短縮しています。割引キャンペーンもこれでもう終わってしまいますが、来月以降もまた引き続いて行われることを期待して、今後もウェブサイトの確認をときどきしてみようと思います。また、飲食店によっては来月10月以降も同様のキャンペーンを展開するところがあるので、ほかのお店を新たに開拓することも検討中です。

皆さんも、日本で「Go To イートキャンペーン」を利用して、楽しいひとときを過ごすことができればいいな、と思っています。

◼️The Castle Inn at Chiddingstone・住所: Chiddingstone, Edenbridge, Kent TN8 7AH・アクセス: 電車Tunbridge Wells駅よりバス利用・営業時間:  木 10:00〜16:00、金〜土 9:30〜18:00、日 9:30〜17:00・URL: https://www.castleinnchiddingstone.co.uk/

筆者

イギリス特派員

パーリーメイ

2017年よりロンドン南部で家族と暮らしています。郊外ならではのコスパのよいレストラン、貴族の邸宅、城めぐり、海沿い情報などが得意です。

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