保存状態が最高なイギリスの歴史的遺物、モザイク画が見られる「ビグナー・ローマ村」

公開日 : 2020年10月27日
最終更新 :

イギリスの学校には日本と同じ春、夏、冬とそれぞれ長期休みがありますが、それ以外にも秋休みといってもいい「ハーフターム(half term)」という休みがあります。学校によって毎年10月末までのここ1、2週間がその期間にあたり、その間は通常平日でも公共交通機関や各地が家族連れでにぎわうのですが、2020年の今年は新型コロナのまん延で少し勝手が違います。ロックダウン(都市封鎖)されていない地域を訪問する際は各地、各施設での新型コロナ感染防止対策に従う必要があります。

わが子には休み初日に「ヒマ」とアピールされ、休み明けには絶対聞かれるであろう先生からの「休み期間中はどう過ごしていましたか」という、皆の前での質問に「ずっと家でゲームをしていました」などと答えられてはかないません。そこは先生も心得たもので、休み前にちゃんと「この休み期間中におすすめの訪問先」を案内してくれていました。

モザイク画が目玉のビグナー・ローマ村

子供の社会科見学や遠足先に人気だという「ビグナー・ローマ村(Bignor Roman Villa)」は、サセックス州の国立公園内にある古代ローマ時代の生活様式を保存した施設です。ときは1811年、農夫のタッパーさんがすきで畑を耕していると、コツンとなにか硬いものにぶつかったことからすべては始まりました。

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なんとその下には、紀元後350年にまでさかのぼる広大な村の跡地が埋まっていたのでした。そんな想像が膨らむストーリーを聞くだけでワクワクしてきますが、なかでも建物のあちこちに使われていた、2000年の歴史を誇る色鮮やかなローマ式モザイク画は、ほかのどこよりも間近に見られるとあって人気が高いそうです。

村の住人は誰?

「村」といっても一軒家の集落ではなく、写真のように中庭をぐるりと取り囲む集合住宅のような形態で、館内の説明パネルには「ヴィラ(villa)とは農場のことである」とありました。このあたりの土壌は農耕牧畜に適し、これらの家屋(ヴィラ)はこういった従事者たちの住まいであったそうです。

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それにしてはモザイク画などの設備が随分と豪華なので、ローマ帝国の裕福な富豪などが関係していたのではないか、と推測されています。けれども当時の文献は残されていないので、事実は不明のままです。

すでに存在していた驚くべき文明の利器

イギリスの気候は1年を通して肌寒く、5月であろうが9月であろうが暖房は「寒いと思ったときがつけどき」ですが、そのぶん暖房設備は発達しており通常どの家にも家全体が暖まる、セントラル・ヒーティング機能が標準装備されています。

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このすばらしき文明の利器が、このローマ村でも当時すでに存在していたと知り衝撃を受けました。薪より火力が強い炭を用いて熱を起こす床暖房形式で、建物全体を暖めていたようです。各所に通気孔 (flue)が設けられ、現代の暖房器具に匹敵する機能的な設備で当時のローマ人は快適に過ごしていたのではないでしょうか。

なお、展示場の各部屋は壁が白く塗られていますが、下の方は一部塗られていない箇所がところどころあります。これもまた、ローマ時代からそのまま残されている貴重な遺物です。

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また、屋根はそれぞれ萱が葺かれた特徴的なデザインですが、こちらは冒頭で述べたタッパーさんが作ったもので、彼の名にちなんで「ジョージ式家屋(Georgian Buildings)」と呼ばれています。

風呂好きローマ人の豪華すぎる脱衣所

ビグナー・ローマ村に展示されているモザイク画はそのどれもがかなり保存状態がよく、仔細なデザインまでハッキリ見えるレベルですが、8つのうち南棟の別箇所にある最後の12番エリアは公衆浴場の遺跡が保管されており、特に魅了されます。

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その脱衣所の床に敷かれたヘビ頭の「メドューサ(Medusa)」が描かれたモザイク画が圧巻です。漫画家ヤマザキマリ氏による『テルマエ・ロマエ』でもすっかり有名になりましたが、古代ローマ人のお風呂にかける情熱は日本と同様、あるいはそれ以上だったのか?!と感じ入りました。

モザイク画を模したデザインのカフェ

博物館エリアの横には軽食をとれるカフェがあります。壁には6番エリアの幾何学模様(Geometric Mosaic)を模した絵が描かれており、席数わずか3つのこじんまりとした休憩所です。現在は新型コロナの影響でメニューが限られており、食事をするには物足りないので外のピクニック席でお弁当を広げるか、ローマ村訪問前後にどこかほかで食事することをおすすめします。

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カフェはピクニック席側に窓口が設けてあり、館内利用をしない人でも誰でも利用できます。スコーンと紅茶のセット「クリームティー(£5)」を店内でいただきましたが、テイクアウトしてピクニック席で食べてもよかったなと思いました。

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外ですとイングランド南東部の丘陵地帯サウス・ダウンズ(the South Downs)や草を食む巨大な黒い牛、隣のブドウ園が眺められ自然を感じながらリラックスできそうです。

ローマ村は毎年3月1日から10月いっぱいまでの限定営業なので、今年はもう今週末で休業してしまいますが、学校ごとの個別予約や子供向けのリモート学習は通年受け付けています。大人の学習にもうってつけで、サークルやクラブ活動向けなど、10人以上からの団体割引もあります。

来年2021年の予定はまだ未定のようで、興味のある方は下記のウェブサイトを適時確認してください。小さめの施設なのでゆっくりと鑑賞でき、世界史や美術品などが好きな人は特に楽しめるかと思います。この日もわが家のほかに、日本人のご夫婦も見かけました。

◼️Bignor Roman Villa・住所: Bignor, West Sussex, RH20 1PH・アクセス: 電車Chichester駅より99番バス・営業時間:  10月31日(2020年)10:00〜16:00のみ(最終入館時間15:00)・入場料: 大人 £6.50、シニア £5.00、5歳以上16歳以下の子供 £4.00(4歳以下無料)、学生割引 £5.00、家族割引 £18.00(大人2名子供2名)・URL: https://www.bignorromanvilla.co.uk/

筆者

イギリス特派員

パーリーメイ

2017年よりロンドン南部で家族と暮らしています。郊外ならではのコスパのよいレストラン、貴族の邸宅、城めぐり、海沿い情報などが得意です。

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