これがなければクリスマスは始まらない「イギリスのカード文化」

公開日 : 2020年12月09日
最終更新 :

IT化が進んだ現代では、手紙やハガキのやり取りもプリントされたものが多く、手書きの習慣が以前より廃れてきて久しいですが、イギリスでは誕生日や各種記念日、クリスマスなどに手書きのカードを渡す機会がとても多いです。

カードで深まる交流

今年もやってきました、この季節。毎年12月に入ると、わが子の級友からクリスマスカードが届き始めます。届くといっても配達は校内の臨時「ポスト」に入れるだけなので、無料です。上級生たちが手分けして各クラスに届けてくれるのですが、2020年の今年は新型コロナ対策でこの便利な仕組みはお休みに。

それでも各生徒がお互いに手渡しすることは許されているので、例年どおりわが家の棚も順調にいただいたカードで埋まってきました。カードのサイズはさまざまで15cm四方の正方形がメジャーですが、子供同士の場合はいわゆる「ばらまきカード」ともいえるので、それよりうんと小さい高さが10cm未満のものが主流です。

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ときどき通常サイズやさらに大きい特大サイズ、変わったデザインのものがあったり、中にコイン型のチョコレートが入っていたりもするので、毎回封筒を開けるときはワクワクします。そのほかお世話になった先生やご近所さんにも配ります。お隣さんからはいつも、カードとあわせてサンタクロースやスノーマンといった大きなチョコレートもいただくので、子供たちは大喜びです。

郵便事業の普及を目的に広まったカード文化

この時期になると雑誌の特集などでよく見かけるトリビアですが、こういったカード文化が根づいた発端は、どうやらこのクリスマスに関係がありそうです。というのも、イギリスでクリスマスカードを送り合う習慣が生まれたのは1843年、当時郵便事業に携わっていたとある役人によるものだそうです。まだ一般家庭に郵送というシステムが行き届いていない頃、普及をはかることを目的に出されたアイデアでした。

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すっかり習慣が根づいた頃には、リボンなど飾りがついたお手製のカードがはやり、郵送には適さないことから次第に手渡しされるようにもなってきました。そして1915年に現在イギリスのカード業界最大手、ホールマーク(Hallmark)社がホール3兄弟によって創設されました(出典:whychristmas?com)。そういえば、わが家には日本から持ってきていた手持ちのカードがあったのですが、裏をひっくり返すと見事にMade in UKとなっていて、しかもこのホールマーク社のものでした。日本で買ったものがイギリス製だったなんて、買った当時は夢にも思いませんでした。

イギリスの社交ではずせない誕生日カード

クリスマス以外でカードの出番が多いのは誕生日のときです。2020年の今年は新型コロナのおかげですっかり影をひそめてしまいましたが、もともとイギリスでは子供の誕生日会を派手にすることが多いです。

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招待された際は、プレゼントと一緒に必ずカードも持参します。プレゼントが誰からのものなのか、あとでわかるよう名前代わりでもあるので、カードはテープでしっかり留める必要があります。

大人でも会社やプライベートで親しい人へ贈ることがよくあります。プレゼントを決めかねて誕生日当日に間に合わなかったとしても、カードだけはとにかく先に渡すことが重要だと聞きました。

ユニークなカード・メッセージ

皮肉屋が多いといわれる英国人。政治家などへの辛辣なブラックユーモアも大好きです。それはカードの表紙や中に書かれているメッセージにもよく反映されていて、キラリと光るセンスが散りばめられていたり、思わずクスッと笑ってしまうようなものまであります。

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特にキャラクター的に最もいじりやすいのか、父の日やお父さん向けの誕生日、退職祝いといったカードにおもしろいジョークが多いです。「お父さんに教わった最も大事なことは......いかにお金を蓄えるかってことだよ」とか、普段から家庭で使われている呼びかけでもあるようですが、父親のことを「オールド・マン」と書いてあったり、「パパは目を閉じてテレビをみる専門家」と皮肉っていたりします。

対して母の日のカードにはベタな「お母さん、いつもありがとう」のような無難なものが多いです。そのほか送別カードや出産祝い、回復祝い、お悔やみカードなど、カード専門店のみならず(そんな業種があること自体に驚きですが)、大手のスーパーであればどこでもたいていはなんらかのカードが置かれています。

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用途別に実に細かくジャンル分けされているので、来年あたり新型コロナが落ち着きイギリスへいらっしゃることがありましたら、一度手にとってみてください。イギリス人のユーモアを感じられる、グリーティング・カードをおみやげにするのもよいのではないでしょうか。

筆者

イギリス特派員

パーリーメイ

2017年よりロンドン南部で家族と暮らしています。郊外ならではのコスパのよいレストラン、貴族の邸宅、城めぐり、海沿い情報などが得意です。

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