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フランス/リヨン特派員ブログ マダムユキさん

フランス・リヨン特派員が現地からヨーロッパ地域に至るまで、旅行・観光・食事などの現地最新情報をお伝えします。

【フランス リヨン便り n°40】


皆さま、こんにちは。
リヨン在住のマダムユキです。


新型コロナウイルスがまだまだ活発に活動を続けていますが、それでも旅を楽しみたい私は、混みあった町を離れ、開放感のある土地にでかけるのが一番と思い、リヨンから車で2時間30分の場所にあるアヌシーへ(実は、何度も訪れている場所なのですが)日帰り旅行を楽しんできました。


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アヌシー湖畔の町アヌシーは、「フレンチアルプスのベニス」「フレンチアルプスの真珠」とも呼ばれ、自然水に恵まれた水の都です。
歴史を紐解けば、アヌシーはスイス、イタリアとの国境に近く、古代ローマ時代にイタリアのトリノとスイスのジュネーブを結ぶ街道筋の宿場町だったそうです。アヌシーが町として大きく形成されていくのは、ジュネーブ伯爵の支配下で、11世紀に入ってからのことです。13世紀に入って、ジュネーブ家が8世紀に建造されたアヌシー城を改装して移り住んでから、伯爵領として発展していきます。1401年、後継ぎに恵まれなかったジュネーヴ家に代わって、今度はサヴォワ家(イタリアのピエモンテを中心とする貴族なので、サヴォイア家とも呼ばれます)の支配下に置かれ、アヌシーはサヴォワ公国の主要都市として発展を続けていきます。フランス革命が勃発した18世紀、サヴォワ家の統治権が奪われ、アヌシーはフランス領に編入されたジュネーブを県庁所在地とするモン・ブラン県の一部となりましたが、1815年、今度はピエモンテのトリノを首都とするサルデーニャ王国に属することになります。しかし、イタリア統一が行われ、1861年にイタリア王国の建国にともない、アヌシーは再びフランス領に編入され、オート・サヴォワ県の町として現在にいたっています。このように、ジュネーブから、サヴォワ、そしてフランス領へと統治権が移行したアヌシーの町ですが、アヌシーの町を歩いていると、サヴォワ公国の国旗をよく目にします。アヌシーのサヴォワへの愛着が強く感じられます。


さて、アヌシーの町ですが、12世紀の古い町並みが残る旧市街は車の侵入が禁じられた歩行者専用地区となっています。パステルカラーの家、色とりどりの花で飾られた窓辺やティウー運河沿いは、とってもロマンチックな雰囲気で、おとぎの国のような美しさ。郷土料理を提供するレストランやおしゃれなブティックがたくさんあるので、何度来ても決して飽きることなく、食事やショッピングを満喫できるのもアヌシーの魅力。また、イタリアを彷彿とさせるアーケードが多く、雨が降ったときに助かるなあ、と思いながら歩きましたが、そういえばこれまでいつ来てもアヌシーは晴れていました。出かける前夜の「てるてる坊主」の効果かな。


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アヌシーの観光スポットといえば、ティウー運河に浮かぶ軍艦のような建物で知られる「パレ・ド・リル(Palais de l'Ile)」。12世紀に建てられ、裁判所や牢獄として使われてきました。建物が湖に向かってとがっているのは、湖から流れてくる水の圧力を分散させるため。1900年にフランスの歴史的建造物に指定されました。現在は、内部が改装されて見学が可能です。牢獄として利用された当時の様子が復元されています。


厚い壁にはめ込まれた鉄格子が牢獄であったこと彷彿とさせます。廊下に2枚の重厚な鉄格子の扉が1m離れて設置され、その鉄格子の扉を介して面会が行われたそうです。囚人と面会者は1m離れて会話をするので、ヒソヒソ話ができず、またこっそりモノを渡すこともできなかったということです。
厨房に設置された大きな暖炉は料理に使われましたが、冬は暖房の機能も兼ねていました。アヌシーの冬はけっこう厳しそうです。
監房は3~4人部屋で、部屋の大半を傾斜した木板が占めています。それがベッドだと聞いて驚きました。なぜベッドが傾いているのでしょうか。小窓から囚人全員の寝顔が監視できるように、とのことではないかと思われます。


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【パレ・ド・リル(LE PALAIS DE L'ILE)】
・住所: 3 Passage de l'Ile - 74000 Annecy France
・電話: +33 4 56 49 40 37
・開館日: 火曜日を除く毎日
・閉館日: 火曜日、11月1日、11月11日、12月24日、12月25日、1月1日
・開館時間: 10月~5月 10:00〜12:00、14:00〜17:00/6月~9月 10:30〜13:00、14:00〜18:00
・感染対策: 入館者数の制限あり
・入館料: 大人€3.80
・URL: http://musees.annecy.fr/Palais-de-l-Ile


旧市街から石畳の坂道を登って、ジュネーブ家そしてサヴォワ家が住居として使用したアヌシー城へ。
重厚感のある角塔が、12世紀に城塞として建てられたことを物語っています。
門を抜けて中庭に入ると、ルネサンス様式の領主の館があり、よ~くみると使用されている石の色が異なり、時代ごとに増改築された様子がうかがわれます。現在は、博物館として使用されていますが、訪問したときは火曜日だったため残念ながら休館。博物館の見学はできませんでしたが、小高い丘の上に建つアヌシー城から、赤い屋根で覆われたアヌシーの町を一望する美しい景色を楽しませていただきました!


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【アヌシー城博物館(MUSEE-CHATEAU D'ANNECY)】
・住所: 3 Place du Château - 74000 Annecy France
・電話: +33 4 50 33 87 30 / +33 4 50 33 87 34
・開館日: 火曜日を除く毎日
・閉館日: 火曜日、11月1日、11月11日、12月24日、12月25日、1月1日
・開館時間: 10月~5月 10:00~12:00、14:00~17:00/6月~9月 10:30~13:00、14:00~18:00
・感染対策: 入館者数の制限あり
・入館料: 大人€5.50
・URL: http://musees.annecy.fr/Musee-Chateau


教会芸術に関心がある方におすすめなのが、サン・モーリス教会(Eglise Saint Maurice)。1422年にドミニコ会派修道院の礼拝堂として建立。当時はサン・ドミニク教会と呼ばれていました。実は、サン・モーリス教会はアヌシー城の横に建てられていたのですが、崩壊してしまったため、サン・ドミニク教会をサン・モーリス教会に改名したのです。というのも、聖モーリスはアヌシーとサヴォワの守護聖人なので、聖モーリスに捧げる教会が必要だったからです。


かつて修道院の礼拝堂であったこともあって、彫刻装飾のない、とてもシンプルな正面ファサードです。教会内に入って内陣まで進むと、向かって左側の壁に、サヴォワ公爵とブルゴーニュ公の顧問を務めたフィリベール・ド・モントゥ―(Philibert de Monthoux)の墓が描かれた葬祭壁画があります。15世紀半ばの作品ですが、この壁画には遠近法が用いられ、だまし絵の手法で描かれています。ルネサンス初期の作品で、奥行きを出そうと頑張っている作者の姿が目に浮かぶようです。
また、身廊と側廊を区切るアーチに、「祈りの捧げる聖人ふたりと、天使に囲まれた栄光の聖母」を表した見事な壁画があります。16世紀初頭の作品です。こちらも床の模様に遠近法が使われています。
壁画マニアの私は、このふたつの作品を初めてみたとき、ぎこちのない遠近法がとても微笑ましく、作品との出合いに喜びを覚えたものです。アヌシーに来るたびに、この教会に立ち寄ってはこれらの壁画を眺め、中世からルネサンス初期にかけての素朴ながらも魅力あふれる作風を楽しんでいます。


なお、聖職者席は18世紀後半の作品で、「巨人に支えられる説教壇」は1715年の作品です。説教壇を支える巨人は1本の木で彫られています。すばらしい木製オブジェですよ。


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【サン・モーリス教会(EGLISE SAINT MAURICE)】
・住所: Rue Saint-Maurice - 74000 Annecy France
・電話: +33 4 50 65 00 45
・開館日: 毎日


アヌシーは哲学者ジャン=ジャック・ルソー(Jean-Jacques ROUSSEAU、1712-1778年)が青年期(16歳~27歳)を過ごした町としても知られています。ルソーといえば、「社会契約と一般意志なる意志」による政治社会の理想を論じた『社会契約論』の提唱者として知られていますが、ジュネーブで生まれたルソーは16歳のときアヌシーにやってきて、そのときにルソーの保護者となった年上の美しいヴァラン男爵夫人(Madame de Warens)と恋に落ちるのです。そのふたりが出会った司教館はいまは音楽学校となっていますが、中庭にルソーの胸像が置かれています。そういえば、ルソーは若かりし頃、音楽家として生きる道を志したこともあったそうですよ。


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中世の面影をいまに残すアヌシーの旧市街を後に湖へと向かい、湖畔の散歩道を進んで、ヨーロッパ公園(Jardin de l'Europe)とル・パキエ公園(Le Pâquier)へ。雄大な山々を背景に、ヨーロッパ屈指の透明度を誇るエメラルドグリーンに輝くアヌシー湖を眺めながら、広々とした公園でひと休み。しばしウイルスの存在を忘れて、開放感に浸ったひとときを過ごしました。


ヨーロッパ公園とル・パキエ公園は小さな橋で結ばれています。その名も「恋人たちの橋(Pont des Amours)」。恋人たちが橋の上で抱擁を交わし、愛を誓いあうデートスポットとして大人気。「若いっていいわね~」と、おばさん根性を丸出しで若者カップルを横目に、橋の名が描かれたボードをカシャっと写真撮影。橋から湖への眺めがとってもすてきなのですが、あまり長居をするとお邪魔虫になりますよ。


湖畔にはクルーズ船や小型ボートが停泊しています。天気がいい日は、アヌシー湖クルーズも楽しめます。対岸のタロワール村まで船で渡ることもできます。ただし、冬季(12月~2月)は休業となりますので要注意。


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食事処には困らないのがアヌシーの町。選択肢がたくさんあり、どこに入っても当たり外れが少ないのでご安心を。今回のアヌシー散策では、ティウー運河沿いにあるレストラン「ル・ボー・ソレイユ(Le Beau Soleil)」で、サヴォワワインと一緒に郷土料理のタルティフレットを味わいました。タルティフレット(Tartiflette)は、炒めた玉ねぎとベーコン、にんにく、ゆでたジャガイモを生クリームで和えて器に入れ、サヴォワ特産のルブロション(Reblochon)チーズをのせてオーブンで焼いた料理です。胃が破裂しそうなほどのボリュームでした。
サヴォワの郷土菓子といえば「ブルーベリータルト」なのですが、残念ながらお腹いっぱいでデザートは断念し、カフェグルマンで胃を落ちつかせました(それでも、プチケーキつきでした)。


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【ル・ボー・ソレイユ(LE BEAU SOLEIL)】
・住所: 6 Quai de l'Ile - 74000 Annecy France
・電話: +33 4 50 51 68 18
・営業日: 火曜日を除く毎日
・営業時間: 12:00〜21:30
・感染対策: 入館者数の制限あり
・セットメニュ: €19.80~
・URL: https://lebeausoleil.fr


最後に、アヌシーの町のあちらこちらに自転車が停められていました。あまりに絵になる光景でしたので、写真に収めました。


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安全・安心してフランスにお越しいただける日を心待ちにしております。
皆さま、引き続き、お身体をご自愛ください。
 
 


2020年9月29日

【フランス リヨン便り n°39】


皆さま、こんにちは。
リヨン在住のマダムユキです。


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フランスは新型コロナウイルスの感染拡大に見舞われています。
フランスの感染状況を簡単にまとめてみました。


2020年09月27日14時現在
●フランス国内における累積感染者数:53万8569人(前日比1万1123人増)
●PCR検査陽性率:7.4%
●累積死亡者数:3万1727人
●過去7日間における感染による新規入院患者数:4204人(内、重篤者数:786人)
●ウイルスが流行している県:全県(101県)


▼県別ウイルス感染状況マップ(2020年09月27日現在)
※濃青色:感染率高、水色:感染率中、薄青色:感染率低
(出典:フランス保健省ウェブサイト Santé Publique)
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上記のマップから、イル・ド・フランス(パリ近郊)、オーヴェルニュ・ローヌ・アルプ(リヨン近郊)、プロヴァンスやオクシタニー、ノルマンディ、ブルゴーニュといった夏のバカンス先に感染ケースが多く見られるようになったことがわかります。


▼フランスにおける感染者数推移
(出典:European Centre for Disease Prevention and Control)
NOMBRE CAS COVID 19-27092020.png
上記グラフから、1日あたりの新規感染者数が3月のピークを超えていることがわかります。


私が住んでいるリヨン市はオーヴェルニュ・ローヌ・アルプ地方に属していますが、当地方も新型コロナウイルスの感染拡大にあることが数字からみてとれます。


●オーヴェルニュ・ローヌ・アルプ地方におけるPCR検査陽性率(9月14日~9月20日):7.2%(前週は6.3%)
●10万人あたりの感染者数(9月14日~9月20日):111人(前週は91.7人)
●1週間あたりの累積新規入院患者数(9月14日~9月20日):508人(前週は376人)


▼オーヴェルニュ・ローヌ・アルプ地方における感染者数(有症状+無症状+他)と陽性率の週間推移
(出所:Santé publique 「Point épidémio régional Spécial COVID-19 Auvergne-Rhône-Alpes」)
ARA_PER_COVID19_POSITIVITE_20200924.jpg
上記のグラフから、感染者数(ならびに陽性率)がS27(6月19日~7月5日)を底に増加傾向にあり、S34(8月17日~8月23日)以降、急激に増えていることが分かります。


▼オーヴェルニュ・ローヌ・アルプ地方における年齢別10万にあたりの感染者数
(出典:Santé publique 「Point épidémio régional Spécial COVID-19 Auvergne-Rhône-Alpes」)
ARA_PER_COVID19_INCIDENCE_20200924.jpg
上記のグラフから、S30(6月30日~6月26日)あたりから15歳~45歳の年齢層の感染者数が他の年齢層よりも多く見られるようになり、S33(8月10日~8月16日)以降、急激な増加傾向にあることが分かります。


▼オーヴェルニュ・ローヌ・アルプ地方における週当たりの新規入院患者数
(出典:Santé publique 「Point épidémio régional Spécial COVID-19 Auvergne-Rhône-Alpes」)
ARA_PER_COVID19_HOSPITALISATION_20200924.jpg
3月のロックダウンを受けて、S14(3月30日~4月5日)以降、新型コロナウイルス感染者の新規入院者数は減少を続けていましたが、S34(8月17日~8月23日)以降、再び増加傾向にあり、上記のグラフからも分かるように3週間前から顕著に増えています。


前回のブログ(【新型コロナウイルスCOVID-19】フランスの新型コロナウイルス対策が強化されました)で投稿させていただきましたが、フランス全土において新型コロナウイルスの感染拡大が確認され、9月23日にオリヴィエ・ヴェラン保健大臣が記者会見を開き、新型コロナウイルス感染拡大を阻止するための措置を発表しました。そこで、リヨンが位置するローヌ県は警戒ゾーンに、リヨン・メトロポール(リヨン都市共同体)は警戒強化ゾーンに指定され、感染対策の措置の強化が求められました。


これを受けて、ローヌ県庁は下記の新たな衛生措置を発表しています。


●9月26日(土)午前6時以降、リヨン近隣の市町村であるSaint-Priest、Rillieux-la-Pape、Sainte-Foy-Les-Lyon、Givors、Francheville、Chassieu、Belleville-en-Beaujolaisにおいて、午前6時から(翌日)午前2時までの間、マスク着用の義務化。
●ローヌ県内において、9月28日(月)午前0時以降、一般に開放された施設における、結婚式、洗礼式、トンボラ大会、アソシエーションの行事、誕生日会、聖餐式、学生のパーティなどの祝祭・家族のためのイベントの禁止。
●リヨン・メトロポールにおいて、9月26日(土)午前6時より、公道や一般に開放された場所での10人以上の集いの禁止(違反者には€135、およそ1万7000円の罰金)。また、学校活動、課外授業、未成年者、プロまたはハイレベルのスポーツ選手、研修などで使用される場合を除き、スポーツジム、公共・民間スポーツ施設、プールの閉鎖。
●9月28日(月)午前0時以降、バー(Bar)の22時以降の閉店。


新学期が始まり、若者たちがカフェやバーなどで深夜まで集う機会が増え、それが若者層の感染を増長させているという見方から、9月28日から22時以降バーは閉店を余儀されます。また、公道や一般に開放された場所での10人以上の集いも禁止です。
フランス政府が夏休みの国内旅行を励行し、それがこのような新型コロナウイルス感染の第二波を招いたという政府批判が絶えませんが、過ぎ去ったことを振り返っても何も始まりません。賛否両論分かれる措置ですが、3月のようなロックダウンを避けるために、ルールを守っていくしかないです。
また、日常の感染予防対策として、(何度も何度もブログに書いていますが)「マスク着用」「手指の消毒」「ソーシャルディスタンスの確保(日本では三密回避ですね)」も引き続き遵守し、ウイルス終息に向けて、私たちができることを続けていきましょう。


皆さまも、引き続き、お身体をご自愛くださいませ。


2020年9月28日

【フランス リヨン便り n°38】


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皆さま、こんにちは。リヨン在住のマダムユキです。
しばらくご無沙汰をしておりました。


旅行業が休業状態ですので、この機会に旅の素材を求めて視察に出かけ、フランスの田舎の美しさを再発見して戻ってきました。私が自分の目で確かめてきたことをこれから紹介させていただきますね。お楽しみに!


さて、日本でも報道されてご存知の方が多いと思われますが、フランスの新型コロナウイルス感染者数が急激な増加傾向にあります。それを受けて、9月23日にオリヴィエ・ヴェラン保健大臣が記者会見を開き、新型コロナウイルス対策の強化について発表しました。その内容を簡単に説明いたします。


まず、政府は、フランス国内を5段階の警戒レベルに分類しました。つまり、グリーンゾーン(Verte)、警戒ゾーン(Zone d’alerte)、警戒強化ゾーン(Zone d’alerte renforcée)、警戒最大化ゾーン(Zone d’alerte maximale)、緊急衛生事態(Etat d’urgence sanitaire)です。分類されたマップは以下のとおりです。


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フランス国内には101の県(デパルトマン)がありますが、そのうち、69県が警戒ゾーンに指定され、さらに指定された警戒ゾーンのうち、14ヵ所(11のメトロポールと3県)が警戒強化ゾーンに、そして、2ヵ所(グアドループおよびエクス・アン・プロヴァンス=マルセイユ)が警戒最大化ゾーンに指定されました。こうして、警戒レベルに応じて、制限措置が講じられます。


在フランス日本国大使館がまとめてくださった内容を以下に転記します。


【警戒ゾーン】
●指定対象:69県
●指定理由:1週間当たりの新規感染者発生数が10万あたり50人以上
●制限措置:
1. 9月28日以降,祝祭、結婚等の各種イベントによる集まりを最大30名未満に制限する
2. その他,各県官選知事が適切な措置を決定するもの


【警戒強化ゾーン】
●指定対象:11のメトロポール(ボルドー、リヨン、ニース、リール、トゥールーズ、サン・テティエンヌ、レンヌ,ルーアン,グルノーブル、モンペリエ、パリ),パリ近郊3県(セーヌ・サン・ドニ、オー・ド・セーヌ、ヴァル・ド・マルヌ)
●指定理由: 1週間当たりの新規感染者発生数が10万にあたり150人以上、高齢者においては10万にあたり50人以上
●制限措置:
1. 9月26日以降、大規模な集会は1000人までに制限する
2. 大規模な地域的イベント、フェスティバル、学生のパーティー等の開催は禁止する
3. 公共の場所(ビーチ、公園等)において10人以上の集会は禁止する
4. 9月28日以降、バーは官選知事が定める時刻(遅くとも22時)に閉店する
5. 9月28日以降、ジム等のスポーツ施設と体育館を閉鎖する
6. 9月28日以降、全ての祝祭場や多目的ホールを閉鎖する
7. 可能な限りテレワークの実施を推奨する


【警戒最大化ゾーン】
●指定対象:グアドループ、エクス・アン・プロヴァンス=マルセイユ
●指定理由:1週間当たりの新規感染者発生数が10万人あたり250人以上、,高齢者においては10万人あたり100人以上、重篤者用病床の占有率30%以上
●制限措置:
1. 9月26日以降、全てのバーとレストランの営業停止とする
2. 厳格な衛生対策を整えている場所(つまり、劇場、美術館、映画館は規制対象外)を除く施設を閉鎖する


保健当局のサイトによれば、9月24日に新規感染者が1万6096人に達し、累積感染者数は49万7237人となりました。私からすれば、新型コロナウイルス感染の第二波がフランスを襲い、このような措置が講じられるのはいたしかたがないという印象を受けたのですが、どうやら今回の政府の措置は物議を醸しているようです。


保健大臣の記者会見後、警戒最大化ゾーンに指定されたマルセイユでは、制限措置の執行にあたり10日間の猶予期間を政府に申請したそうですが却下されました。そこで、マルセイユ市長(代理)が緊急記者会見を開き、「すべてのバーとレストランの営業を停止する」という政府の措置に対して不服を述べました。パリ市長も、ジャーナリストのインタビューで「学校の衛生基準の緩和しておきながら、飲食店に対して制限措置を強化するとは、政府の施策にはまったく一貫性がない」と批判的な見解を表明しました。もちろん、学校と飲食店の衛生基準を同じ軸でみることはできませんが、政治評論家いわく、制限措置の強化に不服というよりも、中央政府が地方政府に諮問することなく、トップダウンで措置を講じたことに地方議員は不服を表明しているとのこと。パリとマルセイユは政治的にも歴史的にも確執があり、それが深まった感があります。マルセイユ市長(代理)は「われわれはフランス第二の都市である」といって会見をしめくくり、パリに従順ではいられないという印象を与えていました。ちなみに、マルセイユ市長は医者であり、医学的観点から当措置を全面的に否定できないのではと、マルセイユ市の不服に対して医療関係者は驚いています。


仏メディアは、このように物議を醸す政府の措置を大々的に取り上げ、専門家たちの討論会がテレビ画面をにぎわせています。テレビ局をザッピングしながら私も視聴しましたが、医療従事者は口をそろえて、これから冬に向い、新型コロナウイルスに加えて、インフルエンザウイルスといった冬の感染症が流行ってくるので、医療従事者・病床数・医療資機材などの不足が懸念され、早期に新型コロナウイルスの感染拡大を制御することがきわめて重要であると訴え、賢明な措置であることを強調していました。


一方、国民側からみれば、特に感染率が比較的低いとされる若者からすれば、「もういい加減にしてよ」「1日中マスクを着けているだけでもたいへんなんだから」といわんばかりに、「22時にバーが閉まったら、そのまま友達のアパルトマンに移動するだけだから、バーよりももっと閉鎖された場所に集まることになるから、この措置はまったく意味がない」というコメント。確かに一理あり。フランス政府は個人宅に集まる人数までは強制的に制限できなかったようです。


当然、今回の措置に対して大反対を表明したのはレストランやバーといった飲食店です。それでなくても、ロックダウンで強制的に閉店したあと、衛生マニュアルに従って店内を整備して、やっと営業を再開したところで、再度の営業制限とあっては、倒産への道を進んでいくようなものだと、将来の不安をあからさまにしていました。また、政府の衛生マニュアルでは、テーブルとテーブルを最低1mの間隔を空けることが指示されていますが、衛生基準をしっかり守っているところと、店内やテラスの面積からルールを守れないところもあり、ルールを守っていた飲食店は、一部の違反者のために全員が罰を受けるのは遺憾であると嘆いていました。


レストランやバーは、ソーシャルディスタンスの確保が難しいこと、マスクをどうしても外さなければならず、会話が弾めば弾むほど飛沫感染を増加させること(WHOでは5分間の会話で1回の咳と同量の飛沫が飛ぶそうです)など、感染予防が緩んでしまう場所であることは確かです。
ウイルスは特に口から体内に侵入することを思えば、飲食店が感染リスクが高い場所のひとつであることは否定できません。一方、飲食店で働く人たちの生活に影響する話になりますので、議論はつきません。


フランスは議論だけで話は終わりません。革命を起こして民主主義を確立した国だけあって、その反骨精神はすごいです。さっそくマルセイユの飲食店は反対表明のデモ行進を行うことを発表しました。リヨンでは、若者たちがSNSで「22時05分、ローヌ川の河岸に集合しよう」と呼びかけています。


3月のロックダウンとは異なり、今回は地域によって措置に温度差があるため、国民全員の合意を得ることは難しそうです。
ウイルスという見えない敵と戦うのは容易なことではないのですが、一人ひとりが「ソーシャルディスタンスの確保」「マスク着用」「手指の消毒」に努め、「人に感染させない」、「人から感染しない」という意識のもとで行動するしかないのですが、お国柄でしょうか、これも全員一致というわけにはいかないようです。


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秋分の日を迎えて、日本も秋めいてきたのではないでしょうか。


リヨンは朝晩の冷え込みが増してきました。
リヨンは「警戒強化ゾーン」に指定され、10月に予定されていた物産展などのイベントの中止が決定されました。12月にはリヨン最大のイベント「光の祭典」が予定されています。まだ、中止の決定は下されていませんが、今後の展開を見守っていくしかなさそうです。


皆さまも、引き続き、お身体をご自愛くださいませ。


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    リヨン在住20年。リヨン第二大学で美術史専攻。中世からルネサンス期の美術品・絵画・建築を得意とする。ワインとビールが生活の友。フランス現地手配会社を経営する。フランス リヨンの文化・芸術・建築を中心に、リヨン情報をお届けしたい。ツアー情報などのお問い合わせはこちら
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