フランス リヨンで、待望の「国際ガストロノミー館」がオープン!

公開日 : 2019年12月20日
最終更新 :
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【フランス リヨン便り n°3】

2019年11月19日午前10時、フランスで初めてのガストロノミーをテーマとした博物館がリヨンにオープンした。

2010年にフランス料理が「食の伝統」としてユネスコ無形文化遺産に登録され、一国の料理が無形文化遺産に登録されるという画期的な決定にフランス国民が歓喜の声をあげたのは記憶に新しい。あれから9年、「食の都」として世界に名を馳せるリヨンで、フランス初の「国際ガストロノミー館(CITE INTERNATIONALE DE LA GASTRONOMIE)」が門戸を開く。

思い起こせば1934年、美食評論家として謳われたキュルノンスキー(Curnonsky)が「リヨンは食文化の都」であるとリヨンの食文化を讃えてから、リヨンは地産地消の伝統料理を今日まで継承している。

リヨンのガストロノミーの生みの親は、「リヨンの母(Mères Lyonnaises)」と呼ばれる女性料理人。19世紀、貴族家族の専属料理人を務め、家庭料理を広く一般にもてなしたいと願った彼女たちは、19世紀に自らの店を構える。その代表が、19世紀末に「フィリウー母さん(Mère Fillioux)」呼ばれたフランソワーズ・ファイヨル(François Fayolle)のレストラン「ラ・ベル・エポック(La Belle Epoque)」、あるいは、1921年創業、かのポール・ボキューズ(Paul Bocuse)が修業したウジェニー・ブラジエのレストラン「ラ・メール・ブラジエ(La Mère Brasier)」であろう。「ラ・メール・ブラジエ」は現在、マチュー・ヴィアネ(Mathieu Viannay)氏がオーナーシェフを務める2つ星レストラン、別の機会に紹介したい。彼女たちは、シンプルでありながらお腹いっぱいに味わえる家庭料理を振る舞い、今やリヨンのアイコンともなる大衆ビストロ「ブション・リヨネ」の原型を作った。料理の世界は「男性社会」というイメージを覆す革新的な活躍ぶりが伺える。

あれから100年余り、美食とは決して高級料理だけを意味するのではなく、「素材の味を大切」にした地方料理の中にあり、新設「ガストロノミー館」を通じて、リヨンがいかにガストロノミーを愛し、「伝統の継承と次世代への発展」を求め続けているかが伝わってくる。

「国際ガストロノミー館」は、かつて病院としてリヨンの主要な建物であった「オテル・デュー(Hôtel Dieu)」の一部に置かれている。開業した12世紀の時代から、オテル・デューは貧しい人々や旅人たちを受け入れ、食を与え、体を休める場所を提供してきたという。オテル・デューは、2010年に病院としての役割に幕を閉じ、新古典主義を代表する建築家、パリのパンテオンを設計したことで知られるジャック・ジャルマン・スフロ(Jacques-Germain Soufflot)によって改修された18世紀の建物が、4年の歳月をかけ、ショッピングモール、カフェやレストラン、ホテル(5つ星インターコンチネンタル)、オフィス、コンベンションセンターなどを備えた複合施設「グラン・オテル・デュー(Grand Hôtel Dieu)」として生まれ変わった。「国際ガストロノミー館」は、この一環のプロジェクトに組み込まれ、人の健康を守り続けた「オテル・デュー」と、人の健康と密接な関係にある食との因果関係が実に興味深い。

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【データ】

国際ガストロノミー館(CITE INTERNATIONALE DE LA GASTRONOMIE)

場所:4 Grand Cloître du Grand Hôtel Dieu 69002 Lyon France

サイト:https://citegastronomielyon.fr/en

開館日:毎日 10時~19時

休館日:12月25日、1月1日、5月1日

入場料:一般12ユーロ、学生(5~16歳)8ユーロ

総面積:3930m²

地階(日本の1階):チケット売り場、ブティック

1階(日本の2階):巨大なスプーンが吊り下がるドーム、オテル・デューが病院だった時代の薬局やアーカイブ室、リヨン料理の系譜、リヨン人の食卓やリビング

2階(日本の3階):子供の食育の場(子供サイズのミニキッチン)

3階(日本の4階):試食コーナー、食をモチーフとしたアートギャラリー

最寄り駅:地下鉄A線、D線 ベルクール広場(PLACE BELLECOUR)

筆者

フランス特派員

マダムユキ

リヨン在住20年以上。フランス各地の魅力を文化・芸術・建築・食を中心にお届けしたい。

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