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フランス/リヨン特派員ブログ マダムユキさん

フランス・リヨン特派員が現地からヨーロッパ地域に至るまで、旅行・観光・食事などの現地最新情報をお伝えします。

2021年1月 5日

【今月の1枚】ルーベンス作「東方三博士の礼拝」(リヨン美術館所蔵)


【今月の1枚】ルーベンス作「東方三博士の礼拝」(リヨン美術館所蔵)

【フランス リヨン便り n°47】


新年明けましておめでとうございます。
2020年は新型コロナウイルスのパンデミックによって、私たちの命が脅かされ、日常生活における行動が制限された1年でした。2020年の1年間、世界各国でおよそ8000万人が新型コロナウイルスに感染し、170万人以上が命を落としました。フランスにおいては、感染者の累積数はおよそ265万人、死亡者数においては6万5000人を超えています。
このような痛ましいコロナ禍で迎えた新年ではありますが、ワクチン接種が開始されたいま、ウイルスが1日も早く終息に向かうことを願うばかりです。
2021年が皆様にとって健康と幸せに満ちあふれたものになりますように祈念いたします。


さて、新年を迎え、フランスでは1月6日に公現祭(エピファニー)を祝います。
公現祭は、ギリシャ語のエピファネイア(現れ)を語源とし、復活祭、聖霊降臨祭とならんでキリスト教の最も古い祝い事のひとつです。
新約聖書(マタイによる福音書)に、東方で救い主イエス誕生の兆しをみた博士たちが、ベツレヘムの聖母子を訪ねたことが記されています。キリスト誕生の際に東方からやってきた博士たちによってキリストが公に現れたことを記念する日が公現祭なのです。聖書には博士の数は明記されていませんが、「黄金」「乳香」「没薬」の3つの贈り物がなされたと記されているので、3人ではないかと考えられています。7世紀頃から博士は「メルキオール」「ガスパール」「バルタザール」の3人(三賢王)であり、3つの大陸(アジア、アフリカ、ヨーロッパ)を象徴していると伝えられています。


この公現祭にまつわるエピソードは「東方三博士の礼拝」、あるいは、博士のことをマギといい「マギの礼拝」とも呼ばれ、中世の時代から18世紀にかけて、多くの画家たちがインスピレーションを得てきた画題です。
17世紀のバロック絵画の巨匠、ピーデル・パウル・ルーベンス(Pierre-Paul RUBENS、1577~1640年)もそのひとりです。ルーベンスは「東方三博士の礼拝」を主題に複数の絵画を描いていますが、リヨン美術館が所蔵する1617~1618年に制作された作品をご覧いただきましょう。


MBA_LYON_02.jpg


【データ】
作品名:東方三博士の礼拝(L'Adoration des Mages)
作者:ピーデル・パウル・ルーベンス(Pierre-Paul RUBENS)
制作年:1617~1618年
寸法:高さ251cm、横幅328cm
所蔵:リヨン美術館(Musée des Beaux-Arts de Lyon)


場面は左上から光が差し込む暗い厩舎のなか。聖母が藁の寝具の上に立つ幼子イエスを支えながら、東方からの来訪客を迎えます。長老の博士がイエスの前でひざまづき、イエスの片方の足に接吻します。イエスは博士の頭に手をおき、礼拝を受け入れます。後ろでは兵士や群衆たちがその様子を興味津々に眺めています。


この絵は宗教画というよりも日常の一場面を描いている印象を受けませんか。登場人物の一人ひとりの表情が人間味にあふれ、また、博士の横にいるふたりの小さな男の子の存在が家庭的な雰囲気を漂わせていますよね。確かに、絵画は高さ251cm、横幅328cmの横長のキャンバスに描かれていますので、縦長の祭壇画として描かれたものではなかったそうです。


ルーベンスは、先代の画家たちと同じように、この絵の主人公である三博士に年齢差を与え、老年、壮年、青年として描いています。それにしても豪華な衣服をまとった3人組です。メルキオールは頭がはげた白髪の老人でイエスの足に接吻している人物ですが、毛皮をトリミングした金糸で織られた光沢のあるマントを羽織っています。その後ろにいるのがガスパール。ボリュームのある赤いマントを羽織り、お付きの使用人が長いマントの裾を支えています。よく見ると、ガスパールのピンクのリボンで結ぶサンダルがとってもおしゃれなんです。3人目は褐色の肌をした立派な体格のバルタザール。鮮やかな光沢を放つ金色のトゥニカを着て、しなやかな青いマントを肩からたらしています。
絵を見ている人は、聖マリアの白いドレスに目が留まり、それから、かがんだメルキオールの黄色いマントからガスパールの赤いマントへと視線を移し、後方のバルタザールへと導かれます。
さすが、バロックの巨匠たるルーベンスです。登場人物の配置はしっかり計算されています。横長の長方形の枠組みに、右下から左上に向けて走る対角線に沿ってフリーズを描くように登場人物を並べ、絵を見ている人は三博士を目で追うことで絵の中に引き込まれてしまう......。こうして絵に躍動感を与えているんですよね。


背後に群がる使用人や兵士たちも目が離せません。一人ひとりの表情や態度がとても豊かに描かれていて、とくに彼らの視線は四方に向けられいるので、厩舎という閉ざされた空間というよりも、どこか開かれた空間のなかにいる印象を受けます。さらには、背後にところ狭しと人や馬を配置させて密集感を強調していますが、前面の空間にはゆとりがあります。このように空間密度に濃淡をあたえ、後方から前方に開かれた空間の演出を実現させています。


それがバロックなんですよね~。まとめてみますと、開かれた構図、対照的な色づかい、濃淡のある空間密度、装飾の多用、光と陰影などといった巧みな技を効果的に用いて劇的な空間を演出するのがバロック様式ということです。ルーベンスはやっぱりすごい~。

ところで、ルーベンスは聖マリアを描く際に妻をモデルにすると聞きました。この作品に描かれている聖マリアの淡麗な横顔は最初の妻であるイザベラ・ブランド(Isabella Brant、1951年-1626年)がモデルなのでしょうか?
最後に、とっても気になるのが、絵の中央で大人たちに挟まれて立つカメラ目線で私たちを見ている小さな少年です。没薬を持っているのですが、彼はいったい誰なのでしょう......。調べてみたのですが誰なのか不明、あしからず。


こんなふうに、1枚の絵を鑑賞してみるのも楽しいですよね~。


ルーベンスは「東方三博士の礼拝」をモチーフに10~15作品を制作したといわれています。現存する絵画で有名なのが、1609年から1629年に制作されプラド美術館に所蔵されている作品、1624年に制作されアントワープ王立美術館に所蔵されている作品です。


さて、公現祭に話を戻すと、フランスでは1月6日の公現祭を祝って、フランジパーヌ(カスタードクリームとアーモンドクリームを合わせたクリーム)が入ったパイ菓子「ガレット・デ・ロワ(Galette des Rois)」を食する伝統があります。元来、公現祭はクリスマス(12月25日)から数えて12日目の1月6日とされていますが、20世紀以降、フランスも含め、1月の第1日曜日を公現祭とする国が多いです(ミサの関係でしょうか)。2021年は1月3日の日曜日が公現祭の日で、パン屋さんやお菓子屋さんの店頭に、クリスマスケーキ「ビュッシュ・ド・ノエル」に替わって、「ガレット・デ・ロワ」が並んでいました。やっぱり「ガレット・デ・ロワを食べずに1年は始まらない」です!


▼ガレット・デ・ロワ
EPIPHANIE_2021_01.jpg


今年もどうぞよろしくお願いいたします。


マダムユキより
 
 

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    リヨン特派員
    マダムユキさん
    リヨン在住20年。リヨン第二大学で美術史専攻。中世からルネサンス期の美術品・絵画・建築を得意とする。ワインとビールが生活の友。フランス現地手配会社を経営する。フランス リヨンの文化・芸術・建築を中心に、リヨン情報をお届けしたい。ツアー情報などのお問い合わせはこちら
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