「製パンコンクールフランス大会2021」でみた、パン職人たちの熱き戦い

公開日 : 2021年11月02日
最終更新 :

【フランス リヨン便り n°63】

こんにちは、マダムユキです。フランスのリヨンからお届けしています。

9月末に開催されたシラ国際外食産業見本市の様子をお伝えしようと思いながらも、ブログの更新がすっかり遅れてしまって、ごめなんさい。

気がつけば、サマータイムが終わり、冬時間を迎えました。日本との時差が7時間から8時間へ。

これから寒い季節が忍び足でやってきます。冷え性の私には辛い、辛い季節の到来です(泣)。

ところで、ずっと、パンについて書こうと思っていたんです。

ご存知のように、パンはフランスの主食で、フランス人にとって毎食かかせない大切な食材です。

フランスで暮らすようになってから、パンの消費量が圧倒的に増えましたが、私にとってパンはいうなれば箸休めのようなもので、メインとなる料理の脇役でした。もちろん、おいしいと評判のパン屋さんをチェックしてはいましたが、「パンたるものは何か」などと、深く考えたことはありませんでした。

そんな私が、パンの奥深さを知ることができたのは、パリと東京にブランジュリ―「メゾン・ランドゥメンヌ」を展開しているパン職人で実業家の石川芳美さんとの出会いです。

初めてお会いしたときに芳美さんが「私、ハード系が専門ですから」と自己紹介され、「はっ、ハード系ですか......」と答えた私の頭の中で、「ハードロックのこと?」「インフラのこと?」「ハードウェアのこと?」「コンタクトレンズのこと?」「えっ、なに?」と、ぐるぐると回転したことを覚えています。

そうなんです。パンには「ハード系」「ソフト系」「セミハード系」があるんです。「へ~、パンって、そんなふうに分類するんだ」と感動しました。

▼2019年のシラ国際外食産業見本市でグルテンフリーのパンのデモストレーションをする石川芳美さん

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言われてみればそうですね。パンは食感で分類することができます。

芳美さんが得意とするハード系のパンは、クラストという外皮が固くて、クラムという内側も弾力性があるパンで、代表的なのがバゲット、ライ麦パン、田舎パン(パン・ド・カンパーニュ)です。

ソフト系のパンはクラスト(外皮)もクラム(内側)もやわらかいパンのことです。バターロールやブリオッシュが代表例ですね。

セミハードはその中間。例えば、イタリアのフォカッチャのようなものでしょうか。日本の食パンもセミハード系かな。

使用する材料から分類することもあります。

小麦粉、水、塩、酵母といった基本材料からつくられるパンを「リーン」なパン、菓子パンや調理パンのように砂糖や卵、バター、乳製品などの副材料をパン生地に含めるものを「リッチ」なパンと呼びます。クロワッサンやデニッシュはリッチパンですね。

ハード系あるいはリーン系のパンは、小麦粉やライ麦、塩、酵母の基本材料だけで作られるので、おいしさの違いで一線を画すには、各材料の品質とパン職人の技術が何よりも重要です。

ソフト系あるいはリッチ系を代表するクロワッサンを例にとれば、幾層にも重ねられた生地がオーブンのなかでふんわりと膨らみ、外はサクサク、中はしっとりとした食感に焼き上げられ、口に含めた瞬間、バターの香りが甘く広がるおいしさを実現するには、材料の品質とパン職人の技術が問われれる、ということです。

完成品としてのパンだけを見てきた私は、目から鱗!パンが出来上がるまでの工程とパン職人の技に興味を持つようになったんです(芳美さんのおかげ!)。

パン職人の仕事を垣間見るには、パン屋さんの仕事場がオープンになっているお店もありますが、実は製パンコンクールが一番なんです。

と、いつものごとく前置きが長くなってしまった! ごめん、ごめん......。

9月末のことですが(もうだいぶ時間がたっているぞ~)、リヨンで開催されたシラ国際外食産業見本市の初日、真っ先に足を運んだのが製パンコンクールでした(9月23日から25日にかけて開催されました)!

クープ デュ フランス ドゥ ラ ブランジュリー(COUPE DE FRANCE DE LA BOULANGERIE)

「製パンコンクールフランス大会」と訳してみましたが、フランスの各地方圏を代表する3人のパン職人から構成されるチームで競い合います。

審査項目は、ハード系、ソフト系、調理パン、プレートデコレーションの4項目からなり、2021年のテーマは「クリスマス」。

1日3チームが出場し、朝9時から夕方6時までの長時間の戦いとなります。

コンクールの様子を写真でご覧ください。

私が写真でフォローしたのは、リヨンが属するオーヴェルニュ・ローヌ・アルプ地方圏の代表チームです。

▼パンコンクール会場

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▼ハード系、ソフト系、調理パンを担当する3人チーム

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▼プレートの飾付けには芸術性が問われます

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▼パン職人というより彫刻家のようです(それを見守るコーチ)

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▼真剣なまなざし(観客も真剣に見ていました)

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▼製パンの材料のみが使用できます

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▼リボンもパン生地からつくられています

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▼だんだん仕上がっていきますよ

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▼ソリが登場しましたね(そうだ、テーマはクリスマス!)

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▼形が出来上がってきましたね

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▼ファンタジーな世界を感じます

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▼ここまでくるとパンと菓子の境界線を引くのが難しいです

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▼出来上がり!

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▼隣チームの様子もご覧ください

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▼フランスはパンも美術品になる

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▼1日で焼き上げたパンが勢ぞろい(すごい数だ)

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▼伝統的なパンから創作パンまで、どれもおいしそう

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▼ハード系のパンだってこんなにおしゃれに焼きあがります

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▼審査員に特徴(使用する酵母や塩・水の割合など)を説明しています

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▼外観、香り、食感、歯ごたえ、味など、細かく吟味されます

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写真では伝わらない臨場感を動画でご覧ください。

コンクールという緊張した環境のなかでも、食に対する熱き情熱と食を楽しむ暖かい雰囲気に包まれていました。

唯一、残念なのは、試食ができなかったこと!

審査員が「ぼくたちは試食できるからラッキーだね」って、観客席に向かって言葉を発していましたが、本当にそのとおり。とってもうらやましかったです!

このあと、パン屋さんにかけこんで、ハード系・ソフト系と買い込んでしまいました。

おいしいパンは嚙み締めれば噛み締めるほど味わい深い。

結論:パンは決して脇役ではない!

次回は料理界のオリンピック「ボキューズ・ドール」を紹介しますね。お楽しみに!

マダムユキより

筆者

フランス特派員

マダムユキ

リヨン在住20年以上。フランス各地の魅力を文化・芸術・建築・食を中心にお届けしたい。

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