外出できないメルボルン③ 8月30日は入植記念日

公開日 : 2020年08月27日
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メルボルンはステージ4の制限措置が5週目を迎えました。ビクトリア州内の新規感染者・死亡者数は減少傾向にあるようですが、ダン・アンドリューズ州知事は非常事態宣言の1年間延長を提案しています。人の往来もなくなりすっかり静まり返ってしまった町は、185年前にヨーロッパ人が入植してから発展を遂げてきました。大きなイベントが多いメルボルンのなかではあまり目立ちませんが、毎年8月30日の「メルボルン・デー」には市内で記念イベントが開催されます。

■バス海峡を渡ってヤラ川北岸に上陸

1835年8月30日、タスマニアのロンセストンを出発した開拓団が、スクーナー船のエンタープライズ号に乗って現メルボルンの中央を流れるヤラ川北岸に上陸しました。当時、タスマニアでは農業が盛んになり土地が高騰しており新たに放牧地を探す必要があったためで、バス海峡(ビクトリア州とタスマニア島の間の海峡)で働くクジラ猟師やアザラシ猟師の間で長年噂になっていた北方の肥沃な土地を目指してやって来ました。そして最初に上陸して居住したのが、現在の移民博物館(旧税関の建物)のあるウィリアム通りとフリンダース通りの角のあたりです。この地が居住地となったのは、川を阻む小さな滝があり海水と真水が分かれる地点であったのと、北岸の地面は居住地に適していたからといわれています。この滝は1880年代に洪水防止のために壊されています。

■最初の一団は大工、農夫と猫

最初に上陸したのはジョン・ランシー船長率いる開拓団で、エンタープライズ号船長のほか、大工や左官工、農夫、鍛冶屋とその家族や使用人たち、そしてネズミよけの猫1匹でした。彼らはまず住居や店舗用の小屋を建て、土地をならして畑を作りラディッシュや麦を育て始めました。1935年末、一団のなかの鍛冶屋の妻がメルボルンで初めてとなる白人の男児を出産しました。彼女の銅像は市内のフィッツロイ公園に建てられています。約1年後、メルボルンの人口は男性142人、女性35人の計177人にまで増加しました。また、メルボルン・デーの象徴とも言われるエンタープライズ号は、そのあと港湾貿易船として活躍し、1847年にニューサウスウェールズ州北部で沈没してしまいました。入植してしばらくの間は町の名前も決まらず、バトマニアやベアブラス、グレネルグなどいろいろな名前で呼ばれ、1837年、イギリス首相で2代目メルバーン(Melbourne)子爵ウィリアム・ラムにちなんで、メルボルンが正式に名前になりました。また市旗は、イングランドの国旗にあるセントジョージ十字にヒントを得て白地を赤色の十字で四分割し、中央には英国王室の王冠、四方に羊、牡牛、船、鯨が配されています。これらはすべて、当時のメルボルンの経済を支えた主要産業を表しています。

■本当の創始者は誰なのか?

「メルボルンの創始者」というといつも複数の名前が上がり、なかでも有名なのがジョン・バットマンとジョン・パスコ・フォークナーです。当時、タスマニアに渡って農業で成功を収めていたバットマンは、1835年4月に新たな放牧地を探してバス海峡を渡り、ヤラ川河口のポートフィリップに到着すると、6月には先住民クリンの領土のほぼ全土を「バットマン契約」と言われる詐欺同様の方法で手に入れました。このとき彼は、のちにジョン・ランシーたちが上陸した土地を見つけ日記にも記していますが、彼が本格的に移住を始めたのは同年11月。一方、同時期にタスマニアで実業家として成功していたフォークナーは、1835年にエンタープライズ号を買い、新しい定住地を求めて7月21日にランセストンを出帆しましたが、寄港地で債権者たちに勾留され、前述のジョン・ランシーがフォークナーの代理人としてヤラ川北岸に上陸しました。フォークナー自身がメルボルンに来たのは同年10月とされており、いまだにメルボルンの創始者ははっきり決められないままでいます。

■「メルボルン・デー」記念イベント

毎年8月30日には、エンタープライズ公園Enterprize Park(Cnr William&Flinders Sts、ヤラ川北岸のメルボルン水族館近く)での市旗掲揚、子供市長の表彰式、先住民のパフォーマンスのほか、メルボルン誕生記念カップケーキや記念品の無料配布などが行われます。今年2020年は外出制限措置下にあり、8月26日現在での詳細は不明とされていますが、将来、この時期にメルボルンを訪れるのであれば貴重な文化体験ができると思いますよ。

<写真:Melbourne Day Committee>

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