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オーストラリア/メルボルン特派員ブログ 加藤 伸美 さん

オーストラリア・メルボルン特派員が現地からオセアニア地域に至るまで、旅行・観光・食事などの現地最新情報をお伝えします。

2020年11月26日

オーストラリアでペットの最期を考える


オーストラリアでペットの最期を考える

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RSPCA Australia:Royal Society for the Prevention of Cruelty to Animals Australia(オーストラリア王立動物虐待防止協会)は、動物福祉のために活動する非営利団体。 



オーストラリアは自然に恵まれた国です。そして自然とともに生きる野生動物から家庭のペットまで、すべての動物たちは人間が守るべきさまざまな法律の下で手厚く保護されて幸せに暮らしています。今回、筆者の飼い猫(19歳・メス)がその生涯を閉じるにあたり、日本とオーストラリアの「動物の最期」の考え方の違いをあらためて知ることになりました。ただ、日本とオーストラリアだけでなく、世界中のどこでも「動物の幸せ」が最優先であることに決して違いはありません。



■「飼い猫」がわが家に来たのは、2000年のシドニー・オリンピックの翌年です。ある日訪れたパース郊外の猫シェルタ―のケージのなかで、ほかの仔猫たちよりもひと回り小さい黒猫が元気に走り回る姿に目が留まりました。そしてふと振り返った仔猫の青い目の美しさにすっかり心を奪われ、里親になることにしました。そのあと、夫の仕事の都合でシドニー、メルボルンと転居しましたが、飼い猫はいつも私たちの生活の中心でした。強がりなくせに臆病者の気分屋で、まさしく猫を体現しているような猫です。ずっと家猫だったので大きな病気や事故もなく、病院とは無縁の生活でした。15歳を過ぎた頃から不調が見えるようになり、獣医師から老猫にありがちな甲状腺亢進症と診断されてからは毎日薬を飲むようになりました。



■2020年10月に外出制限措置が部分的に解除され、いよいよメルボルンが再スタートをした頃から、寝ている時間が長くなりました。かかりつけの獣医師は彼女はもう目が見えていないし聞こえてもいない、関節が痛いためにジャンプもできないだろうと説明してくれました。オーストラリアでは高齢のぺットはペット自身の幸せを考えて安楽死をすすめるのが普通だそうです。また、獣医師は、「でも、私は日本人ですから、日本人の文化的背景もわかりますし、筆者さんのお気持ちを尊重しますよ」と言いました。そのあと、飼い猫は目が見えないのでときどき壁にぶつかりながらも、エサ場やトイレにも自分で行き、日向ぼっこも楽しみながら相変わらずのツンデレでした。猫としての生活は不自由そのものでしたが、彼女にとっては「愛されていることが生きている意味」なのだろうと思いました。



■ところが数日前、エサが飲み込めず歩き方がおかしいことから、救急クリニックへ連れて行くことになりました。コロナ禍以来現在でも、ペットクリニックは飼い主を建物内には入れてくれません。看護師にキャリーケースごと預けて飼い主は駐車場の車のなかで待機し、診察中に獣医師から携帯に電話がかかってきて説明をしてくれます。この日は駐車場で2時間以上待ち、ようやく獣医師から連絡が入りました。私たちの選択肢は「今夜このまま安楽死をさせるか、検査入院をさせるか」の二択だそうです。安楽死は、即座に却下です。検査入院は、いつものクリニックにはカルテがありますし、知らない場所に飼い猫だけを預けることはストレスや容態の急変を考えるとやはり却下です。食い下がる獣医師に「いますぐ連れて帰ります」と答えました。引き取り時には「何が起きてもクリニックへの責任は一切問いません」という書類にサインをしました。



■翌日、日本人獣医師は安楽死を提案しました。「獣医の立場としては猫の苦痛を取り除く処置をしなければなりません。筆者さん、ご自身が目も見えず音も聞こえず、全身に激痛がありながら生きている100歳の老人であることを想像してみてください」。1年ほど前に聞いた、安楽死を選んだ知り合いの話が思い出されます。彼女の飼っていた老犬も、ちょうどいまの飼い猫と似たような状況で、獣医師からは早々に安楽死をすすめられ決心がつかないまま容態が悪化してしまい、とうとう決断したのだそうです。「うちにも老猫がいて薬を与えています。薬を飲ませないと毎日フルマラソンをしているような状態で、最後は朽ち果てるように死んでしまうそうですよ」「朽ち果てるように死ねるならそれは幸せじゃない? 薬で生きながらえさせるって人間のエゴじゃないかしら?」 それ以来、人間のエゴと安楽死の狭間でずっと葛藤していました。前回の検診で獣医師にその話をすると「薬をあげていることは延命ではないです。生きている間に苦痛がないようにしているだけです。だから、寿命がくれば亡くなります。クオリティ・オブ・ライフなんですよ」。いま、目の前の飼い猫は、もう食べることも飲むこともできず、歩き始めては後ろ脚から崩れ落ち、転んでそのまま起き上がれず、垂れ流して身体が濡れても成すすべもありません。このまま生き続けさせることで彼女は幸せなのだろうか。いま私がしていることは自分本位で、彼女自身を苦しめているだけなのではないだろうか。オーストラリアでは動物虐待に当たることなのだそうです。



「飼い猫」は今日、幸せを最優先に旅立っていきました。

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カテゴリー 生活・習慣・マナー
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  • 特派員プロフィール
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    メルボルン特派員
    加藤 伸美 さん
    神奈川県藤沢市出身。1999年に結婚を機に来豪し、パース、シドニー、メルボルンと転居。以来ライター兼翻訳者として働きながら、実はパティシエへの野望を抱いて資格を取得。大昔に旅行記、少し昔に翻訳児童書を出版。数年前から学生時代の続きとして海外旅行を再開し、おもに現地発着ツアーへの参加を趣味としている。特技は似顔絵ケーキ作りで、オーストラリアのスイーツに造詣が深い。
    Instagram: https://www.instagram.com/noboo2017/ DISQUS ID @disqus_5AFVjJFvWv

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