「安全なミラノ」を願って

公開日 : 1999年01月21日
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読者の皆さま、Buon Anno! 楽しいクリスマス、お正月を過ごされたでしょうか?かくいう私は、お正月明けにかかったインフルエンザのため、かなりひさびさ、おそらく15年来(?)出していなかったような高熱を出して寝込んでおりました。ミラノでは現在インフルエンザが猛威を奮っていますので、旅行に来られる方は予防策を考えて来るとよいのではないかと思います。さて、正月明けのミラノでは、あまりうれしい話題ではないのですが、ミラノという街のセキュリティー=安全性の問題が大きくクローズアップされて取り上げられました。というのも、正月早々『9日間で殺人事件9件』という事態に市民が脅かされたからです。この9件の事件には関連性はないので、『シリアルキラー』の危険な存在とかそういうわけではありません。これは不法な移民と、その移民らを利用しながら不法な商売をする者たちの存在が引き起こした事件です。移民同士の小競り合い、移民を取り仕切るボスたちとの争い、などがこのほとんどの殺人事件の背景です。ミラノの犯罪を仕切るのは今やカラブリアやシチリアのマフィア組織ではなく、アルバニアやコソボから来た移民のボスたちだと言われており、冷酷でかつかなり高度な知識と組織力を持ったグループであるようです。アルバニア政界の大物がこの組織にからんでいるのでは、との噂もあります。ミラノには現在15万人の不法滞在移民がいます。これは市民のほぼ10人にひとりの割合に等しい数に価します。移民の多くはイタリアでの夢のような暮らしを保証する、移民仲介業者に多額の渡航費を支払って、劣悪な状態で海を渡ってきます。それにもかかわらず、イタリアに到着してもほとんどが売春や麻薬取引などに手を汚すことを余儀なくされ、最終的には移民を仲介した組織に搾取されていくのです。年明けのこの非常事態も、こういったシナリオが招いた当然の事態だったのかもしれません。確かにミラノの少し郊外に行くと、空き地や工場跡地に多数の移民が住みついている風景がみられますが、善良な一般市民のモラルとしては「人種差別主義者」のレッテルを貼られるのも嫌い、あきらめの表情で今までこの事態に耐えてきた感があります。15万いる不法移民のうちの約6万人が、正規の滞在許可が得られるよう手続きを申請したということですから、彼らは少なくとも半年はかかると言われている滞在許可の手続きの間中、強制送還されることもなく、『滞在許可申請中につき保留』の身分でイタリアに残れることになるのです。この事態を受けて、警察当局は「ミラノは少し前のニューヨークよりも危険になってしまった。」などと世論から相当の非難を受けました。「ここ数年政界の汚職事件にばかり力を入れていたために、窃盗や売春、麻薬売買といったミクロ犯罪を無視した。」とも。このお陰(?)で市の安全対策は強化され、警備隊の数が大幅に増員されました。パリやロンドンよりも実は安全だという年間犯罪件数の数字などが発表されてもいます。イタリアは自らが外国に移民を送り出した国であるという歴史があるため、そして強いカトリックの精神が根づいているために、さまざまな理由で到着する移民を受け入れようという努力をしています。でも受け入れる側の制度や、体制が整っていない国に入ってきた移民が幸せかどうかは大きな疑問です。裏にある犯罪組織との戦いや、外国人に対する法律の問題もあり、政府がどういった対応を早急に行うかが今後の課題だと思います。『イタリアは危険ですか。』というご質問をたくさんいただきます。確かにイタリアは日本より危険でしょう。でもそれにはこういったさまざまな、国内のことだけでは済まされない社会問題があることも認識して、ヨーロッパ大陸のイタリアという国をながめてみてほしいなー、と日頃思っています。それと最後にひとつ付け足しですが、最近読者の方がメールで新手の犯罪例を教えて下さったのでご紹介します。『リナシェンテ』というデパートはご存知だと思いますが、なんとそこに"ニセ店員"がいるというお話でした。すっかり店員になりすまして客を試着ルームに案内、『バッグはおいていって大丈夫、私が見ててあげるから。』というのが手口で、読者の方がおかしいと気づいてすぐに戻った時には、すでに店員もバッグも消えていたそうです。制服姿でない店員さんが多いイタリアですし、誰でも入れるデパートなので、考えうる巧妙な手口ですね。いろいろな種類の人間が住んでいるイタリアです。みなさんも、こういう手には注意しましょう!

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