無原罪懐胎の祝日

公開日 : 2012年12月08日
最終更新 :

 今日、12月8日は無原罪懐胎の祝日です。カトリック教徒でない限り、聞いたことのない言葉ですよね。私はカトリックの幼稚園に通ったにも関わらず、よくわかりませんでした。

 カトリックの考え方によると、人類はみな生まれながらにして罪人だそうです。欲望、嫉妬、羞恥といった感情を持つからです。そのために、人の命には期限をつけられ、楽園から追放されて自ら食べ物を探さなければならなくなりました。さらにアダムを誘惑してりんごを食べたイブ、つまり女性には出産の痛みを与えられたそうです。この考え方には多くの言及をしたいところですが、本題からずれてしまうのでやめておきましょう。

 実は、イタリア人でも時々間違って解釈してるのですが、12月8日にマリア様が懐妊したわけではなく、12月8日は公式に正教会が無原罪懐胎を認めた日だそうです。なぜ無原罪なのかというと、マリア様は産まれながらにして人間皆が持つ罪を免れていたそうです。ですので、痛みを感じることなくキリストを産んだということになります。受胎告知の絵画はよくテーマになるので、たくさんの画家が作品を残しています。

 日本でダヴィンチ展が東京国立博物館で開催された時にご覧になった方も多いかもしれませんが、フィレンツェのウフィッツィ美術館所蔵のレオナルド・ダ・ヴィンチ作「受胎告知」が有名です。

ダヴィンチ.jpg

 ウフィッツィ美術館は世界中から集まる人でいつも混んでいるので、予約が必要ですが、フィレンツェらしい華やかさのある、素晴らしい美術館です。美術に関して全く無知ではありますが、美術科の友達に説明してもらいながら美術館を回ったのをきっかけに、絵画の中にある物語に興味を持ちました。宗教画を描くにあたっては、描かなければならないものと、描いてはならないものの決まりごとがあるそうです。大天使ガブリエルの持つ「百合の花」がそうです。ダヴィンチはこの百合に、タブーとされている「雄しべ」を描いています。それはマリア様が貞潔なまま神の力によって懐妊したのではなく、人間らしく懐妊したのだというダヴィンチの教会への反発だったのかもしれません。難しいことは専門家に任せるとして、この他に実物を見ることができた「受胎告知」に、エルグレコのものがあります。いくつかある作品のうちの一つがなんと日本の大原美術館にあります。実は幸運にも祖母の家からすぐ近くにあるのです。

エルグレコ.gif

事の重大さを色鮮やかに衝撃的に表現しているところが特徴的で、ダイナミックな作品。

 最後にもう一つ有名な一枚を。フラ・アンジェリコの作品。

アンジェリコ.jpg

 もはや自分の運命がこうなることを知って産まれてきたかのような、静かに行われる告知と受け入れが、私の知っている中で一番好きな作品です。

 イタリアでは、この日は家族が集まってクリスマスツリーやプレゼーペ(キリスト生誕の模型)を飾り、みんなで食事をする日です。この日を境に街も一気にクリスマスムードが高まります。

 そして、この日からクリスマスまでの間に家族がそれぞれに用意したクリスマスプレゼントをツリーの下に置いていきます。24日の0時までの間にプレゼントの数が少しずつ増えていき、これは誰のかな~とみんながわくわくしながらツリーを眺めるのです。

 ナポリのクリスマスは、焼き栗の匂いが漂い、地味なイルミネーションが中途半端に街を彩り、下町ならではの昔からの儀式にちなんだ宗教色を感じられるものです。

 ヨーロッパのキラキラしたクリスマスを期待していくと、少しがっかりするかもしれません。実際私も一年目は拍子抜けしました。(もっとも2007年の冬はマフィアによって全てのイルミネーションが禁止されたのですが)でも、歴史を感じながら、家庭的なあたたかいクリスマスの雰囲気を味わえる街だと思います。

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