本当に深刻?歌劇場の経済危機

公開日 : 2013年10月03日
最終更新 :

 あと一週間日本にのんびり滞在するつもりだったのに、歌劇場からのお達しで、九月末のコンサートの一週間以上前にはナポリで準備しておくようにと。

 このご時世イタリアで生き延びるためには、失業するわけにはいかない!泣く泣く滞在を前倒しして帰ってきました。

 が!帰ってきてみるとなんと劇場は大揉め。ニュースや新聞にも大きく取り上げられるレベルのストライキを起こしており、九月末のコンサートも前日になってキャンセル。

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 政府としては、ミラノのスカラ座とローマのオペラ座とナポリのサンカルロ劇場と、パレルモのマッシモ劇場は国の重要文化財として保護されているため、援助すると保証しているのだけれど、もちろんその中で劇場がきちんと経営していく必要があり、今になって過去の汚職が拭いきれなくなった模様。

 コネが大きく物を言うイタリアでは、家族や親戚を職に就かせることはよくある話。就職試験もなしで事務職や会計職に就いた人がたくさんいるのは事実。そして、3人で働ける枠に、30人もの人を雇ってしまったことも事実。そしてそんな部署が音楽家よりもよっぽど高い給料をもらっていたりするのです。

 むしろ音楽家はお金よりも歌劇場で演奏したい気持ちが勝ってしまい、足下を見られることになるのです。だって、サンカルロ歌劇場でソリストで立てるって言われたら、無報酬でもいいから歌いたくなってしまうでしょ。(実際私もその中の一人で、未だに「ラ・ボエーム」の全6公演の報酬を受け取っていないのです!)もちろん弁護士を立てて訴訟を起こすことだって可能なわけですが、狭い音楽界でそんなことをすれば、今後使ってもらえなくなるのは当然のこと。

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 今は労働組合に守られているから、こうやってストライキをみんなで起こすことで給料を守っていけるわけだけれど、チケットも出払っているコンサートを私の意思とは関係なくキャンセルしてしまう(しかも興味深いプログラム)というのは音楽家としては苦痛極まりありません。

 イタリアの歌劇場は今後どうなっていくのか、そして私の運命はいかに...?!

 いまいち深刻に悩めないのは、結局イタリアがどうにかこうにかやっていく国だということがわかっているから。ヨーロッパ全体としても、イタリアの歌劇場が潰れるわけにはいかないのです。

 私が外国人だからどこか他人事のように思ってしまうのかって?いやいや、そんなことはない、イタリア人だってfacebookに大袈裟に悲劇的な文句を書きなぐったかと思えば、欧州チャンピオンズリーグに夢中になっているんだから。

 心配だけれど心配し過ぎても仕方ないので、今日もおいしいものを食べてストライキを起こして、明日を待とうというのがこの国のやり方なのでしょう。続報をお楽しみに。

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