芸術の秋、イタリアで芸術家を目指すということ〜バレリーニ編

公開日 : 2013年10月29日
最終更新 :

 ナポリでは10月末だというのに24度という夏のような気候が続いています。半袖の人もまだたくさんいます。来週あたりから涼しくなるそうですが、日中は歩いていると汗をかくほど。海水浴をしている人もいたほどです。

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 とはいえ、暗くなるのが早くなり、焼き栗屋さんが街角に立ち、ついに今日サマータイムが終わり、秋らしくなってきました。食欲の秋!ナポリではみんな年から年中食欲旺盛なので、芸術の秋について書こうと思います。

 イタリアの経済危機は今や世界でも知られていますが、不況の際に一番に影響を受けるのが残念ながら芸術家。多くの歌劇場や美術館が負債を抱えていると聞きます。

 そんな中で苦労をしている職業の一つにバレリーニがいます。イタリアでバレエというのはあまりイメージにないかもしれませんが、各歌劇場ではオペラシーズンの他にバレエのシーズンも持ち合わせています。また、オペラの中でもバレエシーンがあるものが多くあります。ですので、オーケストラや合唱と同じように契約バレリーニを抱えているところがほとんどです。

 しかし、サンカルロ歌劇場では古くからいたバレリーニが数名残っているだけで、新人をもうずっと取っていません。バレリーニの正社員枠を増やせ!とストライキが行われるほど。若手バレリーニは公演の度にオーディションを受けてポジションを勝ち取らなければならないので、生活の保証がないのです。

 イタリアにはRoberto Bolle(ロベルト・ボッレ)という世界トップのバレリーノがいます。ミラノやニューヨークで活躍する彼はイタリアの国宝とも言われるほど。(ここだけの話。ボッレは私が昔一度だけ働いて辞めたナポリの日本料理屋のオーナー兼モデルのイケメンとゲイカップルです。)

 そんなトップダンサーの影響もあってか、バレリーニを目指すこどもはたくさんいます。イタリアのMTVでは一年程前にサンカルロのアカデミアバレエ団(附属バレエ学校)がドキュメントを組まれていました。厳しいレッスンに耐え、苦労しながらポジションを勝ち取ったり、ライバル同士だけど助け合ったりして成長していく姿が視聴者の興味を引いたようで、かなり視聴率が良かったそうです。

 その中のメインでドキュメンタリーに追われていたバレリーノが教えてくれたのですが、その視聴率のおかげで劇場はかなりの収入を得たそう。でも、バレエ学校の生徒達には何の報酬もなかったとか。毎日のようにプライベートまで公開されて迷惑だった、と。

 まあ気持ちはわかるけれど、その分ファンがたくさん獲得できたはずだからね。

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 今年の「さまよえるオランダ人」の公演の時に、私の隣でエキストラの役者として公演にのっていた子がこのバレエ学校の出身だったのですが、劇場附属のアカデミアを修了したところで将来に何の保証もなかったとぼやいていました。いろんなところのオーディション受けて、とにかく舞台に立っていくしかないと言っていて、その後の同劇場の「リゴレット」公演のエキストラオーディションの際に、演出家から上を脱げる子を探してると言われたのにもYESで応じて、勝ち取ったんだそうです。あっぱれ。でも踊るシーンはありませんでした。

 とにかくプロのバレリーニとして生き残るのは本当に大変なことのようです。怪我も多く、体作りが基本で、食事にも気をつけて、毎日レッスンを受けて...。

 私はバレエを見るのが大好き。何を隠そうオペラより好き!体と音楽だけで全てを表現するなんてすごい!彼らの身体能力も全て努力の賜物なのが伝わってくるから、余計に感動します。

 とにかくバレリーニは現役でいられる年数も音楽家に比べると短いわけだし、もっと保証されるべき職業だと思います。

 土日に、このバレエ学校の公演がサンカルロ歌劇場にて行われました。若いうちにこんな大きな劇場に立つ機会に恵まれるなんて本当に幸運なこと。まだまだ荒削りな生徒という感じではありましたが、その度胸に拍手。MTVの放送のおかげもあって劇場内はほぼ満席。ゲストで踊ったLuca Giaccioは迫力満点で、凄みのある縁起でした。

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 ちなみにイタリア語でバレリーニは複数形。バレリーナが女性の単数で、バレリーノが男性単数形を指します。

 ヨーロッパを旅する際は言葉がわからなくてもストーリーを楽しめるバレエ公演もお見逃しなく。

 バレエ学校の公演の中で何人のバレリーニがプロとして生き残れるのか。明日のバレリーニを目指す若者たちを応援したい!(歌手の私もそれどころではない立場ですが...汗)

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