軒先の身代わり猿たち

公開日 : 2017年12月07日
最終更新 :
筆者 : 大向 雅
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元興寺を後にして、少しならまちの中を散策しましょう。昔ながらの家が立ち並ぶ通りのあちらこちらで軒先に吊るされた身代わり猿が目につきます。これは自分たちの身代わりとなって厄災から守ってくれるおまじないです。

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今回はこの身代わり猿のことについて解説いたします。

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奈良や京都には庚申(こうしん)さんと呼ばれて親しまれているお堂があり、青面金剛(しょうめんこんごう)という像がお祀りされています。青面金剛はインド仏教由来の尊像ではなく、中国の道教思想からのもので、日本の民間信仰のひとつである庚申信仰の御本尊ですから、あまり馴染みがない方もおられると思います。

かつて、疫病が流行して人々が苦しんでいたとき元興寺の僧が仏に祈っていると1月7日、青面金剛が現れ「汝の至誠に感じ、悪病を払ってやる」と告げて消え去り、まもなく疫病が治まったことが始まりと云われています。

この日が十干十二支の庚申年(かのえさる)の庚申日であったので、それ以来人々は青面金剛象を祀り、庚申さんとして親しんでいる。

道教の教えでは、60日に一度の庚申の日に眠っていると三尸(さんし)という虫が体内から出てきて、天帝にその人間の罪悪を告げに行き、その罪状によって寿命を縮めると云われており、庚申の日の夜には寝ずに過ごすということが平安貴族の間で始まったそうですが、近世にはご近所の庚申講の人々が集まって夜通し酒宴を行うという風習が民間にも広まったとも云われています。

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そして猿が仲間と毛づくろいしている姿が、三尸の虫を捕って食べている格好に見えるので恐れをなして逃げてしまうということから、いつも家の軒先に猿を吊すことで悪病や災難が近寄らないようにするというのが一般的な解釈ですが、これには諸説あります。

例を挙げますと

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猿は人間に最も近いとされていますが、理性がなく本能(欲望)のおもむくままに行動するので、人間も放っておくと欲望のままに行動しそうになるといいます。そこで人間の身代わりに猿をくくりつけることで、人間のなかにある邪欲が動き出さないようにと念じたのが身代わり猿(くくり猿)だという説。

また古来から、赤は僻邪(ヘキジャ)の色とされ厄除けに験があるとされてきたことと、猿は厄を"去る"との語呂合わせから縁起の良い動物とされ、災厄を除いてくれる神の使いとされているという説などもあります。

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こちらの奈良町資料館では、大小さまざまな身代わり猿を販売されていますので、ぜひ家のお土産にしていただければと思います。

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