なんと大きな平城京!

公開日 : 2017年12月21日
最終更新 :
筆者 : 大向 雅
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和銅三年(710年)元明(げんめい)天皇によって、藤原京より遷都された都が平城京だということは皆さまも教科書で習ったことがあると思います。

京都の平安京と違い、都として機能していた時代が短かったため、さしたる兵火の被害も受けず近年まで水田でした。おかげで、かつての天皇の御所でありました禁裏(きんり)と、東院庭園、儀式などを行う大極殿や朝堂院などを含む大内裏(大内裏)と呼ばれるエリアがそのまま現存しており、とても文化的価値が高い場所ということから1998年12月、「古都奈良の文化財」として世界文化遺産に登録されています。

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そうはいっても昔から守られていたわけではなく、幕末の1852年に北浦定政(さだまさ)という役人が平城京の跡地を推定して「平城宮大内裏跡坪割之図」を書かれたのがはじまりで、明治時代に関野貞(ただし)という建築史学者が、田圃の中にある小高い芝地が大極殿の基壇である事を発見したことを発表されました。そして植木職人であった棚田嘉十郎(たなだかじゅうろう)や、溝辺文四郎(みぞべぶんしろう)ら地元の有志が立ち上がり、私財を投げ打ち人生を賭けて平城宮跡の保存に尽力されたおかげで、現在の姿を私たちは見ることができています。現在も朱雀門の手前には棚田嘉十郎さんの銅像が立ち、平城宮跡を見守っておられます。

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1998年に大内裏の正門であった朱雀門(すざくもん)が再建されました。。しかしながら続日本紀などの古代の記録には朱雀門に関する資料は一つもありませんでした。そこで794年に造営された平安宮の朱雀門が二重門であったことから、平城宮も同じく二重門と仮定して造られました。

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そして、その基本的な構造に関しては奈良時代初期の遺構である法隆寺中門を参考にされ、細かい部分に関しましては同じく奈良時代に建てられた薬師寺東塔や、海龍王寺の五重の小塔も参考にされているので、奈良時代建築技術の結集ともいえる、とても貫録がある門なのです。

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そしてこの朱雀門から一直線上に、あるのが大極殿(だいごくでん)と呼ばれる建物です。大極殿とは、天皇の即位礼や元日に行われる朝賀などの国家儀式や、外国使節を迎えるための儀式などがおこなわれた、もっとも大切な施設のことです。

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この建物は平城京遷都1300年記念事業のために約9年の工期を経て2010年に再建されたものですが、この地に眠る創建期の大極殿の痕跡を探し求める研究は途方もない年月が費やされていますし、新しいものを造るといえども1300年前の工法と材料までもを可能な限り再現しなければならない大事業でした。大極殿の構造や様式に関しては、やはり何も記録としては残されていませんが、発掘調査によって基壇部分や階段の痕跡などから規模が推察され、かつてここにあった大極殿が移築された恭仁(くに)京の遺構などをくまなく調査されたそうです。

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そして完成された建物は重層入母屋造(いりもやづくり)で、正面は柱間を解放形式にして側面と背面は壁とされています。朱雀門同様に奈良時代初期に建てられた遺構を中心に、組物や軒は薬師寺の東塔を、内部につきましては法隆寺の金堂を参考にされていて、すべての材料は国産のヒノキとケヤキで賄われています。そしてそこには耐震技術や、強化ガラスといった現代の最新技術も取り入れられて、古代から綿々と受け継がれてきた日本の建築技術の集大成といえる建物なのです。

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こちらは高御座(たかみくら)と呼ばれ、天皇陛下が即位式や国家儀式の際にお座りになる椅子を再現したものです。こちらの復元にあたっては京都御所の紫宸殿に置かれた本物を参考にされています。

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現在は朱雀門周辺で工事が行われていますが、2018年3月24日には「朱雀門ひろば」という形でオープンされます。観光案内、物販施設の「天平みつき館」、飲食、交流施設の「天平うまし館」、団体集合施設の「天平つどい館」が新たに建設され、より平城宮の歴史を身近に感じていただけることと思います。

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