法隆寺・夢殿に封じ込められた仏像

公開日 : 2018年03月08日
最終更新 :
筆者 : 大向 雅
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ここでまた味わいのある門を一つくぐります。勘の良い方ならもうお気づきだとは思いますが...そうです!この門もまた国宝です。

こちらは東大門(とうだいもん)と呼ばれ、三棟造り(みつむねづくり)という奈良時代の建築技法で建てられた最古の楼門と伝わっています。三棟造りの構造につきましては実際に目にして頂ければ分かりやすいのですが、入り口出口両方に切妻造の小さな屋根があり、その上を大きな屋根が覆う形の建築様式、つまり屋根が3つあるのが特徴となります。

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東院伽藍(とういんがらん)は法隆寺境内の最も東に位置するエリアで、法隆寺東院縁起によりますと、天平11年(739年)斑鳩宮が荒廃しているのを見て嘆いた行信(ぎょうしん)という僧が、かつて聖徳太子一族の住居であった斑鳩宮の跡に創建しました。

ここでも改札が有りますのでチケットをご用意ください。

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夢殿(ゆめどの)は奈良時代建立の八角円堂。奈良時代の建物ですが、鎌倉時代に軒の長さを深くして屋根の勾配を急にするなどの大修理を受けているそうです。昭和の大修理の際にも敢えて奈良時代の屋根の形式に戻すことはしなかったため、現状の屋根形状は鎌倉時代特有の姿というのが特徴です。

夢殿で必見なのは御本尊である救世(ぐぜ)観音菩薩像です。飛鳥時代に造像された仏像ですが、夢殿の創建と同時に御本尊として納められ、長年にわたり誰もその姿を見ることを許されない秘仏でした。

江戸時代には約200年間もの間、「厨子の封印を解けば直ちに仏罰が下り寺が倒壊する」という迷信を信じており、法隆寺の僧侶さえ拝むことができなかったと云われています。

明治維新後の日本は西洋化を急ぐあまり、廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)という運動が広まり、あろうことか日本の古社寺に伝わる貴重な仏像が破壊され、焼き払われるなどして失われつつありました。

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しかし、一方ではヨーロッパやアメリカなどでは日本の絵画や仏教美術品などの評価が高まってきており、なんとかその運動に歯止めをかけて貴重な文化財を守ろうと活動していた、東洋美術史家のアーネスト・フェノロサというアメリカ人が文部省図画調査会委員に任命され、当時彼の助手を務めていた岡倉天心(おかくらてんしん)と共に、1884(明治17)年に公式の宝物調査のため法隆寺を訪れました。

そして僧侶たちに美術品という観点から調査の必要性を説き観音像の開帳を迫りましたが、彼らは仏像は美術品ではなく尊像であるとして、聖徳太子の怒りを恐れて封印を解こうとはしませんでした。話し合いは平行線で、長く硬直状態が続きましたが最後にはフェノロサ達の熱意に押され、ついにその封印が解かれることとなりました。

日本の多くの貴重な文化財の価値を知って守ってくれたのがアメリカ人であったというのは何とも不思議な話ですが、この二人の働きのおかげで後に日本では文化財保護法が制定され、国宝や重要文化財といったの概念が生まれたともいわれています。

その後フェノロサはアメリカに帰り、ボストン美術館東洋部長として日本の美術品を紹介し、岡倉天心は現在の東京藝術大学美術学部の前身となった東京美術学校の初代校長を務められ後進の育成に注力されました。

飛鳥時代に造られた仏像は、金堂の御本尊に見られるように面長で杏仁型の目、そしてアルカイックスマイルと呼ばれるやや微笑んだ感じなのが特徴ですが、夢殿の救世観音菩薩像は同じ飛鳥時代の作品でも少々違っています。

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およそ仏様とは思えない大きな鼻としっかりと見開いた眼、そしてかなり分厚い唇をされているので、もはや仏像というよりは人間の肖像のように見えます。もしやこの像は聖徳太子のお顔がそのままモデルになっているのではないかという説が出るのも頷けます。

一説によりますと、この像を彫った仏師はこの像が完成してまもなく原因不明の死を遂げ、また鎌倉時代には像を模刻しようとした仏師がやはり同じように亡くなったという話もあり...。

世の中を救うと書く救世観音菩薩像ですが、厨子の中に厳重に封印された理由がいまいち不明なところから、太子の霊力を恐れた人々が等身像を造り白布で巻いて夢殿の扉を閉ざして封印したというような話もあながち嘘ではないかもしれません。

なお、救世観音菩薩像のお開帳は、毎年春期の4月11日から5月5日と、秋期の10月22日から11月22日の年2回ですので、ぜひその期間にお越しください。ただ、開扉されていない時でもお像の写真は出口の所に貼ってありますので、お参りに来られた時は見逃さないようにしてくださいね。

法隆寺は4回に分けて書きましたが、まだまだ伝えたいことが沢山ある本当に凄いところですので、皆さまもぜひ時間をたっぷりかけて楽しんでいただけたらと思います。

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