大きな慈悲で救ってくださる長谷寺の観音様

公開日 : 2018年05月17日
最終更新 :
筆者 : 大向 雅
DSC03246 (2).JPG

長谷寺(はせでら)は、真言宗豊山派総本山の大寺院です。ご本尊は十一面観音で、西国三十三所観音霊場の第八番札所とされており、日本でも有数の観音霊場としてもその名を全国に轟かせています。

DSC01732 (2).JPG

創建は奈良時代前半と推定され、寺伝によると天武(てんむ)天皇の御代、686年に僧の道明(どうみょう)が初瀬山の西の丘(現在、本長谷寺と呼ばれている場所)に三重塔を建立したことが始まりとされています。

平安時代になりますと長谷寺には多くの文化人が参詣され、紫式部の「源氏物語」をはじめ、菅原孝標女の「更級日記」、藤原道綱母の「蜻蛉日記」といった様ざまな歌や物語に登場するようになりました。1024年には藤原道長が参詣した記録ものこされていて、中世以降は武士や庶民にも観音信仰が広がりました。

長谷寺はもともと東大寺の末寺でしたが、平安時代中期には興福寺の末寺となり、16世紀以降は覚鑁(かくばん)によって興された新義真言宗の寺院へと変わっていきました。そして天正16年(1588年)、豊臣秀吉により根来寺を追われた新義真言宗門徒が入山し、専誉(せんよ)によって現在の真言宗豊山派が確立され、全国に約3000もの寺院を抱える一大宗派へと成長しました。

DSC09650 (2).JPG

入口の仁王門から本堂までは399段の登廊(のぼりろう)を上るわけですが、最初の直線はほとんど段差を感じないような階段ですので、意外と楽に感じられるかもしれません。

DSC09124 (2).JPG

階段の途中には宗宝蔵と呼ばれる宝物館があり、中には国宝・銅板法華説相図が展示されています。これは釈迦が説法していたところ、地中から巨大な宝塔が出現した場面を表現したもので縦83.3センチ、横75.0センチの鋳銅の板に宝塔と諸仏が浮き彫り状に鋳出されています。

千仏は、薄い銅板を型に当てて槌で叩き出して成形した押出し仏で、銅板の下部には長文の銘が刻まれており、「戌年に飛鳥浄御原で天下を治めた天皇の病気平癒のため僧・道明が作った」と書かれています。これが即ち686年天武天皇の病気平癒のために長谷寺を創建したという根拠といわれています。

DSC07543 (2).JPG

国宝の本堂は、本尊を安置する正堂(しょうどう)、相の間、礼堂(らいどう)から成る巨大な建築で、前面は京都の清水寺本堂と同じく舞台造になっています。本堂は奈良時代の創建後、室町時代の1536年までに計7回焼も失しており、現在の本堂は、徳川家光の寄進を得て、1645年から工事に取り掛かり、5年後の1650年に落慶したものです。扁額には大悲閣と書かれています。

大きな悲しみと書きますが「悲」という漢字は元来、救う・助けるという意味ですので大きな慈しみをもって衆生を救うという意味です。

DSC03266 (2).JPG

京都の清水寺と同様に崖の上に大きく舞台が張り出した造りになっていますので四季折々のロケーションも抜群です。

IMG_2052.jpg

高さ10メートル以上ある本尊・十一面観音像も8代目ですが、1538年にはすでに完成しておりましたので、新本堂建設工事は本尊をいっさい移動せずに行われました。そのため、内内陣の中に本尊を祀り、外側に内陣を造るといった複雑な構成となっています。つまり内々陣はまるで巨大な御厨子のようになっています。

また、御本尊は一般的な十一面観音像の像容とは異なり、左手には通常の十一面観音像と同じく水瓶を持たれていますが、右手には数珠とともに地蔵菩薩の持つような錫杖(しゃくじょう)を持たれています。伝承によれば、これは地蔵菩薩と同じく自ら人間界に下りて衆生を救済して行脚する姿を表したものとされており、他の宗派(真言宗他派も含む)には見られない独特の形式だそうです。

120511 (2).JPG

普段の参拝では、御本尊の上半分だけしか拝することはできませんが、3/1~5/30の特別公開(要・別途特別拝観料1000円)の折にはこの大きな観音さまの御足に触れてお参りできます。

機会がありましたら、ぜひお参りください。

【記載内容について】

「地球の歩き方」ホームページに掲載されている情報は、ご利用の際の状況に適しているか、すべて利用者ご自身の責任で判断していただいたうえでご活用ください。

掲載情報は、できるだけ最新で正確なものを掲載するように努めています。しかし、取材後・掲載後に現地の規則や手続きなど各種情報が変更されることがあります。また解釈に見解の相違が生じることもあります。

本ホームページを利用して生じた損失や不都合などについて、弊社は一切責任を負わないものとします。

※情報修正・更新依頼はこちら

【リンク先の情報について】

「地球の歩き方」ホームページから他のウェブサイトなどへリンクをしている場合があります。

リンク先のコンテンツ情報は弊社が運営管理しているものではありません。

ご利用の際は、すべて利用者ご自身の責任で判断したうえでご活用ください。

弊社では情報の信頼性、その利用によって生じた損失や不都合などについて、一切責任を負わないものとします。