全米50都市で人種差別に対する怒りのデモ【ニューヨークの新型コロナウイルス事情】

公開日 : 2020年05月31日
最終更新 :

人種差別に対する怒りは、全米に広がった

2020年5月25日ミネソタ州のミネアポリス市で白人警官に押さえつけられ、黒人男性のジョージ・フロイド氏が死亡した人種差別に関する事件がありました。自由の国、平等の国であるはずのアメリカで、何度も繰り返されるひどい人種差別。アメリカ国民の怒りが爆発し、デモは全米50都市に広がりました。そしてニューヨークでも、ブルックリンのバークレーセンター、マンハッタン(タイムズ・スクウェア、ユニオン・スクウェア、トランプタワー周辺、ハーレム、イーストビレッジ)、スタテン・アイランド、クイーンズのジャクソンハイツやウッドサイドなど市内各所で抗議運動やデモ行進が継続されています。警官がデモ行進の女性を突き飛ばし(状況不明)、パトカーが放火されて燃え上がる光景を見たとき、まさかニューヨークで起きているとは思えず、呆然としました。全米各都市でも、抗議のデモが暴動に発展しており、治安の悪化に不安を覚えます。

件の白人警官はすでに逮捕され、解雇されています。

■参照記事

Protests Over George Floyd Death Reach Trump Tower and Across N.Y.C.- The NY Times 2020年5月30日

米デモ50都市に拡大、死者も 一部暴徒化、警察標的―黒人拘束死 時事ドットコムニュース 2020年5月31日

ミネソタ州黒人死亡、逮捕した元警官を殺人容疑で訴追 検察「最短で立件」 ニューズウィーク日本版 2020年5月30日

米大統領は、地上の揉めごとには興味がない

新型コロナウイルス収束に向けて、皆が自宅待機を守り、騒ぎや争いはなく再開を迎えられるとホッとしていただけに、今回の事件は残念です。全米でデモが暴動に悪化しているのですから、国のトップが鎮静するよう声明を行うべきですが、米大統領はどうしていたのでしょうか。

2020年5月31日 米大統領はフロリダ州のケネディ宇宙センターで、民間開発の有人宇宙船打ち上げ成功を見守っていました。新型コロナウイルスや全米で暴動が起きている地上よりも、宇宙に興味があるようです。

挙げ句の果てに、暴動を収めるために、米軍を出動させる用意があると記者団に語っています。この人は、力づくで押さえ込むやり方を好みます。

■参照記事

民間初の有人宇宙船打ち上げ 米国土から9年ぶり―トランプ氏「新時代開幕」宣言 時事ドットコムニュース 2020年5月31日

トランプ米大統領「軍出動の用意」 黒人男性死亡事件、抗議デモ暴徒化で 時事ドットコムニュース 2020年5月31日

クオモNY州知事はどう言及しているのか

1991年のロドニー・キング事件から今回の事件までの約30年間、同様の事件が何度も繰り返されているこの国。アメリカの偏見と人種差別は何百年もの歴史があり、いまだ状況は変わっていないのが真実。ただし、不正義の怒りは同調するものの暴力は答えではない。暴力は、メッセージや使命の正当性を覆い隠してしまう。

憤慨する気持ちはわかります。

怒りが湧き上がる気持ちもわかります。

問題解決されないことの欲求不満もわかります。

でも、暴力は決して解決にならない。

マーティン・ルーサー・キングJr.は「憎しみを憎しみで返すことは、憎しみを倍増させる。憎しみは解決にならず、愛だけが解決することができる」と語っている。

ブルックリンで抗議活動において発生した暴動については、デブラシオNY市長が独立機関による調査を求めており、それに呼応する形でNY州司法長官に対し調査するよう要請中。(意訳 青山沙羅)

Governor Cuomo Responds to Nationwide Protests Following Death of George Floyd: 'We Have an Injustice in the Criminal Justice System That Is Abhorrent' -- but Violence 'Obscures the Righteousness of the Message and the Mission'-NY GOV 2020年5月30日

私もアメリカが人種差別が存在する国だと知っています。NYは特に、同じ人種同士で集まり、混じり合うことがなく、相互理解ができていません。アジア人に対する偏見もあります。

新型コロナウイルスが収束前の現在、アメリカが長く抱える負の問題が注視されています。

全米で177万384名、アメリカは世界一の感染者数。

NY時間2020年5月31日午前 3:32:45 時点の、感染症研究のエキスパート米ジョンズ・ホプキンス大学Johns Hopkins Universityの公式ウェブサイトによると、世界の感染者数は606万5624名。アメリカの新型コロナウイルス感染者数は177万384名で、世界最多の感染国。アメリカはダントツの1位で、2位のブラジルの約3.5倍の感染者数。3位ロシア、4位英国、5位スペイン、6位イタリア、7位フランス、8位ドイツ、9位インド、10位トルコ。アメリカ、ブラジル、ロシアがワースト3を占めています。ロシアは死亡数が少なく回復数が多いのに対し、英国は死亡数が多く回復数が少ない、逆のデータが出ています。

緊急事態が全国で解除された日本の感染者数は現在1万6721名、死亡者数は894名、回復者数は1万4269名となっています。日本はニューヨークのように、爆発的には増えていません。日本は感染者数を抑えられました。

【新型コロナウイルス感染国ワースト5】2020年5月31日

世界の感染者数 6,065,624名(死亡369,274名)(回復2,566,642名)

1.アメリカ 1,770,384名(死亡103,781名)(回復416,461名)

2.ブラジル 498,440名(死亡28,834名)(回復200,892名)

3.ロシア 396,575名(死亡4,693名)(回復171,883名)

4.英国 274,219名(死亡38,458名)(回復1,187名)

5.スペイン 239,228名(死亡27,125名)(回復150,376名)

日本 16,673名 (死亡 887名) (回復14,213名)

■参照記事

Johns Hopkins University. NY時間2020年5月31日午前 3:32:45 時点のデータによる

2020年5月30日現在 ニューヨーク州感染者数36万9660名

2020年5月30日付在ニューヨーク日本国総領事館の「総領事館からのお知らせ」メールによると、現在のニューヨーク州の感染者数は36万9660名。死亡者数は2万3848名。ニューヨークは世界の感染の震源地となり、アメリカは感染国ワーストワン(恐怖)。

ニューヨークシティで、感染者数が多い順番は、クイーンズ、ブルックリン、ブロンクス、マンハッタン、スタテンアイランド。いずれも人口密集地であることから、感染者数が連日増加しています。私の住むクイーンズ区は、人種のるつぼニューヨークシティの中でも、特に多様な人種が集まるエリア。6万1000人を超え、感染率はNYCの中で約30%とトップ。しかもエルムハースト病院(Elmhurst Hospital,Queens,NYC)の医療現場の惨さが世界中に伝わっています。いわば、世界一の感染拡大地域で、私はまだ生き延びています(泣)。マンハッタン区の感染者数が少ないのは、お金持ちはすでに、セカンドハウスを持つほかの州や、他国へ移動済みだからです。( )内は前日の数。

クイーンズ区:61,827名(61,644名)

ブルックリン区:55,727名(55,446名)

ブロンクス区:45,116名(44,974名)

マンハッタン区:26,576名(26,480名)

スタテン島区:13,505名(13,455名)

詳細につきましては、在ニューヨーク日本国総領事館の新型コロナウイルス関連情報で確認することができます。

5月30日現在、当館管轄内における新型コロナウイルスの感染者数及び死者数は以下のとおりです。( )内は前日の数

○ニューヨーク州:感染者数 369,660名(368,284名),死者数 23,848名(23,780名)

・感染者数内訳(主なエリア) 

ニューヨーク市:感染者数 202,751名(201,999名),死者数 15,227名(15,205名)

NY市の内訳

クイーンズ区:61,827名(61,644名)

ブルックリン区:55,727名(55,446名)

ブロンクス区:45,116名(44,974名)

マンハッタン区:26,576名(26,480名)

スタテン島区:13,505名(13,455名)

ナッソー郡:40,373名(40,226名),死者数 2,615名(2,611名)

サフォーク郡:39,532名(39,445名),死者数 1,941名(1,928名)

ウエストチェスター郡:33,429名(33,349名),死者数 1,492名(1,484名)

ロックランド郡:13,128名(13,100名),死者数 457名(457名)

○ニュージャージー州:感染者数 159,608名(158,844名),死者数 11,634名(11,531名)

○ペンシルベニア州:感染者数 71,415名(70,042名),死者数 5,537名(5,464名)

○デラウェア州:感染者数 9,422名(9,236名),死者数 361名(356名)

○ウエストバージニア州:感染者数 1,974名(1,951名),死者数 75名(74名)

○コネチカット州フェアフィールド郡:感染者数 15,502名(15,409名),死者数 1,267名(1,257名)

○プエルトリコ:感染者数 3,718名(3,647名),死者数 133名(132名)

■ 在ニューヨーク日本国総領事館

299 Park Avenue, 18th Floor, New York, NY 10171

筆者

アメリカ・ニューヨーク特派員

青山 沙羅

はじめて訪れた瞬間から、NYに一目惚れ。プロ・フォトグラファーの夫とNY在住。

【記載内容について】

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