アメリカの警官が見せた、人種差別反対グループに寄り添う心【ニューヨークの新型コロナウイルス事情】

公開日 : 2020年06月01日
最終更新 :

NYPDのパトカーに、火炎瓶を投げて炎上させたのは

日本では理解が難しいかもしれませんが、多民族国家であるアメリカでは、人種差別という負の遺産があります。2020年5月25日ミネソタ州のミネアポリス市で白人警官に押さえつけられ、黒人男性のジョージ・フロイド氏が死亡した人種差別に関する事件がありました。アメリカ国民の怒りが爆発し、抗議のデモは全米50都市に広がりました。そしてニューヨークでも、ブルックリン、マンハッタン、スタテン・アイランド、クイーンズなど市内各所で抗議運動やデモ行進が継続されています。ニューヨーク市が、6月8日に再開する直前にこの事件が起きたのは、州知事や市長はもちろん、ニューヨーカーの私たちにとっても残念でした。

NYPD(ニューヨークの警官)がデモ行進の女性を突き飛ばし(状況不明)、パトカーが放火されて燃え上がる光景を見たとき、まさかニューヨーク市で起きているとは思えず、呆然としました。ニューヨーカーがすることとは、信じられなかったからです。ニューヨーカーは、スマートでタフだから、こんなダサいことはしないはず。いろいろ調べて、どこからか来るデモ隊屋(仕掛けて利用している?)が、抗議グループを煽っている場合もあるそうです。パトカーに火炎瓶を投げて炎上させたのは、ニューヨーク州北部キャッツキル(Catskill)から来た女性と報道されていました。キャッツキル(Catskill)は山地の自然にあふれた保養地で、ニューヨーク市からはずいぶん離れています。

■参照記事

Catskill Woman, Brooklyn Residents Charged For Allegedly Throwing Molotov Cocktails At NYPD Vehicles- CBS NewYork  2020年5月31日

人種差別に対する怒りが、和らいだ瞬間

米大統領は抗議グループが過激になるのであれば、米軍を出す用意があると語ったとき、アメリカで内戦になったらと恐怖を感じました。クオモNY州知事が言ったとおり、怒りを武力で鎮圧するのは間違っています。ニューヨーク市で抗議のデモが起きたとき、NYPD(ニューヨークの警官)がデモ行進の女性を突き飛ばしたり、ペッパースプレー(唐辛子入りスプレー)をかけたりしたのが報道され、私たちニューヨーカーはずいぶんがっかりしました。新型コロナウイルスでヒーローだったお巡りさんが、こんなことをするなんて。そのあと、抗議グループの怒りもさらに高まったため、ニューヨーク市長などの行政機関で「抗議グループに手出しをしてはいけない」と申し渡したようです。そのため、NYPD(ニューヨークの警官)はやられっぱなしで、多くの警官が負傷したと聞きます。

繰り返される人種差別の怒りは、怒りで返せば、限りなく怒りが増大します。

そのとき、全米の警官がとった美しいポーズをニュースで見ました。抗議グループに同調する意思表示で、警官が膝まづいたのです。その姿に、抗議グループからはどよめきが起こり、喜びが湧き上がり、警官の肩を抱き握手を求めました(ソーシャルディスタンスはどこへ? )。

警官は、ニューヨークのタイムズスクエアで、クイーンズのジャマイカ地区で、

ニュージャージー州で、ミネソタ州で、ミズーリ州で、テキサス州で、全米で膝まづきました。

下記のCNNニュース記事で、その美しい姿の写真をご覧いただけます。

ミシガン州の保安官は、保安官の武装を脱ぎ、抗議グループと共にデモに加わっています。そのときのうれしそうな抗議グループの顔が印象的です。下記の動画で見ることができます。

Sheriff takes off riot gear and joins peaceful protesters/CNN

マーティン・ルーサー・キングJr.が語った「憎しみを憎しみで返すことは、憎しみを倍増させる。憎しみは解決にならず、愛だけが解決することができる」は、このことなのだと思います。新型コロナウイルスで、新たな日常(New Normal)が始まるのであれば、負の遺産である偏見や人種差別は過去に置いていきたいものです。

■参照記事

While tensions between police and protesters boiled over in some cities, other officers joined the movement- CNN Com 2020年6月1日

SEE IT: Commanding officer of Queens NYPD precinct takes knee at protest- NEW YORK DAILY NEWS  2020年5月31日

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[Photo by Hideyuki Tatebayashi] Do not use images without permission.

ホワイトハウス外でデモが起きているとき、米大統領は地下のシェルターに隠れていた

2020年6月1日のCNNニュースによると、5月29日金曜日の夜、抗議のデモがホワイトハウスの外に集まったとき、ドナルド・トランプ大統領はしばらくの間地下のシェルターに隠れていた、とホワイトハウスの関係者と法執行機関が語ったそうです。

米大統領としての声明もなく、地下に隠れていたとは、かなりカッコ悪いですね(苦笑)。

■参照記事

Trump briefly taken to underground bunker during Friday's White House protests- CNN Com 2020年6月1日

全米で179万191名、アメリカは世界一の感染者数。

NY時間2020年6月1日午前 4:32:47 時点の、感染症研究のエキスパート米ジョンズ・ホプキンス大学Johns Hopkins Universityの公式ウェブサイトによると、世界の感染者数は618万1781名。アメリカの新型コロナウイルス感染者数は179万191名で、世界最多の感染国。アメリカはダントツの1位で、2位のブラジルの約3.5倍の感染者数。3位ロシア、4位英国、5位スペイン、6位イタリア、7位インド、8位フランス、9位ドイツ、10位ペルー。アメリカ、ブラジル、ロシアがワースト3を占めています。ロシアは死亡数が少なく回復数が多いのに対し、英国は死亡数が多く回復数が少ない、逆のデータが出ています。インド、ペルーの感染者数が増えています。

【新型コロナウイルス感染国ワースト5】2020年6月1日

世界の感染者数 6,181,781名(死亡372,303名)(回復2,646,874名)

1.アメリカ 1,790,191名(死亡104,383名)(回復444,758名)

2.ブラジル 514,849名(死亡29,314名)(回復206,555名)

3.ロシア 405,843名(死亡4,855名)(回復175,877名)

4.英国 276,156名(死亡38,571名)(回復1,190名)

5.スペイン 239,479名(死亡27,127名)(回復150,376名)

■参照記事

Johns Hopkins University. NY時間2020年6月1日午前 4:32:47 時点のデータによる

2020年5月31日現在 ニューヨーク州感染者数37万770名

2020年5月31日付在ニューヨーク日本国総領事館の「総領事館からのお知らせ」メールによると、現在のニューヨーク州の感染者数は37万770名。死亡者数は2万3905名。ニューヨークは世界の感染の震源地となり、アメリカは感染国ワーストワン(恐怖)。

ニューヨークシティで、感染者数が多い順番は、クイーンズ、ブルックリン、ブロンクス、マンハッタン、スタテンアイランド。いずれも人口密集地であることから、感染者数が連日増加しています。私の住むクイーンズ区は、人種のるつぼニューヨークシティの中でも、特に多様な人種が集まるエリア。6万1000人を超え、感染率はNYCの中で約30%とトップ。しかもエルムハースト病院(Elmhurst Hospital,Queens,NYC)の医療現場の惨さが世界中に伝わっています。いわば、世界一の感染拡大地域で、私はまだ生き延びています(泣)。マンハッタン区の感染者数が少ないのは、お金持ちはすでに、セカンドハウスを持つほかの州や、他国へ移動済みだからです。( )内は前日の数。

クイーンズ区:61,975名(61,827名)

ブルックリン区:55,900名(55,727名)

ブロンクス区:45,253名(45,116名)

マンハッタン区:26,653名(26,576名)

スタテン島区:13,522名(13,505名)

詳細につきましては、在ニューヨーク日本国総領事館の新型コロナウイルス関連情報で確認することができます。

5月31日現在、当館管轄内における新型コロナウイルスの感染者数及び死者数は以下のとおりです。( )内は前日の数

○ニューヨーク州:感染者数 370,770名(369,660名),死者数 23,905名(23,848名)

・感染者数内訳(主なエリア)

ニューヨーク市:感染者数 203,303名(202,751名),死者数 15,256名(15,227名)

NY市の内訳

クイーンズ区:61,975名(61,827名)

ブルックリン区:55,900名(55,727名)

ブロンクス区:45,253名(45,116名)

マンハッタン区:26,653名(26,576名)

スタテン島区:13,522名(13,505名)

ナッソー郡:40,396名(40,373名),死者数 2,615名(2,615名)

サフォーク郡:39,643名(39,532名),死者数 1,949名(1,941名)

ウエストチェスター郡:33,481名(33,429名),死者数 1,499名(1,492名)

ロックランド郡:13,151名(13,128名),死者数 458名(457名)

○ニュージャージー州:感染者数 160,445名(159,608名),死者数 11,698名(11,634名)

○ペンシルベニア州:感染者数 71,926名(71,415名),死者数 5,555名(5,537名)

○デラウェア州:感染者数 9,498名(9,422名),死者数 366名(361名)

○ウエストバージニア州:感染者数 2,010名(1,974名),死者数 75名(75名)

○コネチカット州フェアフィールド郡:感染者数 15,549名(15,502名),死者数 1,277名(1,267名)

○プエルトリコ:感染者数 3,776名(3,718名),死者数 136名(133名)

■ 在ニューヨーク日本国総領事館

299 Park Avenue, 18th Floor, New York, NY 10171

筆者

アメリカ・ニューヨーク特派員

青山 沙羅

はじめて訪れた瞬間から、NYに一目惚れ。プロ・フォトグラファーの夫とNY在住。

【記載内容について】

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