ノルウェーの大騒ぎ高校生ルス(RUSS)は子どもたちに大人気
赤いオーバーオールを履いた高校生たち
5月前半になると、ノルウェーでは至る所で赤いズボンのようなオーバーオールを履いた若者が大騒ぎをしている光景を目にする。彼らはRUSS(ルス)という、卒業を祝う高校生だ。
ビールを飲んで大騒ぎ
4月17日から次第にルスたちの大騒ぎが始まり、ピークは5月1日のメーデーと、お祭り騒ぎの最終日となる5月17日の憲法記念日となっている。
ルスの多くは、バスを貸し切り、ビールを飲み、時にはタバコを吸いながら街を徘徊する。「ルス」というのは極端に表現すると、オーバーオールを履いている間は「何をしても許される」、特殊なノルウェーの文化だ。高校の授業中にいたずらをしても、先生たちは怒らず、大人たちも(影では心配しながらも)基本的には子どもたちの自由にさせている。
また、お金持ちの親をもつ一部のルスたちは、大量のお金を浪費する。ルスが乗るバス「ルスバス」で使用するスピーカーに、30万クローネ(約400万円)を使う高校生もいるらしく、近年ではルスの過剰なお金の使い方に眉をしかめる大人もいる。
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ルスは子どもたちのヒーロー!
大人が許容しているだけにとどまらず、ルスは子どもたちに大人気だ。特に、「小学生」にとって、ルスは「とってもクール」、「憧れの存在」だ。
この時期、ルスを見かけると、幼稚園児や小学生たちはキラキラと目を輝かせて走って向かっていく。そして、手を伸ばして言う、「ルス名刺、ちょうだい!」。
写真:幼稚園の公園前を通り過ぎるルスたちを見かけ、「名刺!名刺!!」と手を伸ばす子どもたち
名刺をたくさん集めると、「かっこいい」
子どもたちがルスの周りにうじゃうじゃと集まる理由は、「ルス名刺」。ルスはひとりひとりが名刺を持っている。赤いオーバーオールを履いた「赤ルス」は赤いルス名刺を、青いオーバーオールを履いた青ルスは青いルス名刺を、大量にズボンのポケットに入れている。子どもたちはそのルス名刺をコレクションすることが大好きだ。
異なるルス名刺をたくさんもっている子どもが「すごい」ので、誰が一番コレクションできるか、「競争」となる。
ルス名刺に書かれているのは本人の個人情報。名前と学校名は大抵本当だが、それ以外の住所などの情報はデタラメだ(「住所:ママとパパの家」など)。「名前などのプライバシー情報を他人に渡して大丈夫なのか?」と日本人なら気になるところだが、なにごとも「オープン」なノルウェーではあまり問題視されていないようだ。
子どもたちのルス人気の秘密は、「自分が大きくなった時の等身大の未来像が反映されているから」という人もいる。「ぼくも大きくなったら、ルスみたいなことができるんだ!」とわくわく想像するのだ。
だが一番の人気の理由はやはり「ルス名刺」だ。子どもというのは、「なにかを集めること」に夢中になりやすい。そのコレクションの中でも、ルス名刺は期間限定でしか集めることのできない特別なアイテムだ。また、ルス名刺に書かれている内容はデタラメの住所だけに限らず、「口にしてはいけない悪い言葉」も書かれている。家で、親に「そういう言葉遣いをしてはダメよ!」と教えられてきた「言ってはいけない罵り言葉」がルス名刺にはわんさか書かれている、それが子どもたちにとっては「かっこいい」らしい。
高校生がルスでいられるのは5月17日の憲法記念日までだ。首都オスロでは王宮に向かって、子どもたちのパレードが開催される。民族衣装などを着用した大人たちはパレードを見ながら、アイスを食べる。子どもたちのパレードの後には、ルスのパレードが続く。
記念日前日に、「ルス最後の夜」を祝し、大量のお酒を飲むルスたちの多くは、二日酔いでパレードに参加。この日を境に、ルスたちはオーバーオールを脱がなければいけない。
ルス名刺をゲットできるのはこの日が最後のため、子どもたちも必死となる。パレードでは、ルスたちはポケットにある残りの名刺を全部空にばら撒き始めるのだ。ルスたちが落としていく名刺を必死になってかき集める子どもたち。
ルスが歩いた後は、道路に名刺が降り注ぎ、子どもたちは無我夢中で一瞬で道路に出てきて名刺をいそいそと集める。親たちも一緒になって、子どものために名刺を拾うという不思議な光景が見られる。
ルス名刺をゲットした後は、名刺をジーッと見つめている子どもたちがたくさんいる。ちなみに、このルス名刺、集めた後はどうするのだろうか?
筆者の友人たちに聞いてみたところ、「憲法記念日が終ってから、すぐに捨てたかな」という答えが多かった。その年にしか集められない、「一時的なコレクション」だからこそ、子どもたちは集めることに必死になるようだ。
名刺を子どもたちに渡しながら&空にバラまきながらパレードに参加するルスたちの動画
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