オスロの地で、日本の伝統楽器を響かせる。奏者にインタビュー

公開日 : 2015年09月23日
最終更新 :
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演奏直前のお二人。楽屋ではリラックスムード Photo:Asaki Abumi

 20日(日)、オスロにあるムンク美術館で日本の伝統音楽コンサートが開催されました。現地に住むノルウェー人や日本人の約200名からの申し込みが殺到した会場。リズムにのりながら体を動かしている人や、スマートフォンで写真や動画撮影をして記録に残す人など、聴衆は日本からの珍しい音を楽しんでいる様子が伝わってきました。

津軽三味線奏者 はなわちえ氏と、篠笛奏者 佐藤和哉氏に、開演前にお話しをうかがいました。

日本と海外の観客の反応というのは異なりますか?

はなわさん

 日本では最初から静かに聞いてくださる方が多いのですが、海外の方々は、自分の好きなタイミングで曲の途中でも拍手をしてくれたり、「ブラボー」と声をかけてくれますね。お客さんの反応や表情が直接伝わってくるのが面白いです。

佐藤さん

 僕は今回が最初の海外ツアーなので、まだあまり経験がないのですが、ドイツでの公演で感じたのが、「音楽だけでもしっかり届くんだな」ということ。日本では言葉と音楽の相乗効果を心掛けているのでが、海外では音楽しかない。どうなるのかなと思っていたのですが、それでも、伝わるものは伝わるので、自信をつけることができましたね。

はなわさん

 日本では若い人が和楽器を演奏していることが珍しいので、楽器に注目されやすいのですが、海外では「日本人だから当たり前だよね」、と思われやすい。楽器だけではなく、トータルで見られている感じがしますね。

公演前日のお昼頃にオスロに着いたお二人。どこを観光したのでしょう?

佐藤さん

 海辺のオスロフィヨルド沿いを歩いて、アナ雪のお城の舞台を見に行きました。あそこのお城は、名前が難しくて覚えにくい(笑)

はなわさん 

 国立美術館ではムンクの叫びをみて。街中には素敵な建物が多いですね。どこを撮ってもフォトジェニック。

『ムンクの叫び』を見て、どう感じられましたか?

佐藤さん 

 ぞっとしました。初めて近くで見てみて、ちょんちょんと少しずれたように描かれたムンクの目、よくみたら傷がついている口。どういう精神状態だったのかな......。大学で美学を勉強したので、知識はあったのですが、実際見てみて、「ああ、イッテらっしゃるんだなぁ」、と思いました。気が狂いそうになって、耳をふさぐほどの自然の叫びは、どんなものだったのだろう。

音楽のデジタル化についてはどのようにお考えですか?

佐藤さん

 デジタルにしたときに、和楽器の魅力はどうしても伝わりにくいんです。

はなわさん

 どんな楽器でもそうなんですが、生が一番いいといわれていますね。デジタルでどんな曲かはわかるとは思うのですが、実際の臨場感や温もりは生のほうが伝わります。私もJ-POPを聞くときに、どんなジャケットなんだろうとか、歌詞カードを見るのが好きだったので、そういうのがなくなるのは寂しい。

佐藤さん

 デジタル化した音は、ひとつのプロモーション。音圧、空気の振動、演者の呼吸。生で初めて伝わることが、和楽器ではたくさんあると思うです。

 よく言われるのが、CDやYouTubeで聞いた人から、ライブの後に、「生で聞くとぜんぜん違いますね!」、と。

 どこまでデジタル化が進んでも、生に興味をもっていただきたい。そのためのツールとしてのデジタル音楽の普及は大賛成。デジタルのみになると、寂しいかな。

デジタル化で海外からの問い合わせは増えましたか?

はなわさん

 増えましたね。YouTubeにアップされているコメントのほとんどが、英語や知らない言語。それは日本で活動しているだけでは得られない反応ですね。

ノルウェーではSpotifyなどが主流ですが、そのような音楽の聞き方はどう思いますか?

佐藤さん

 Spotifyに音楽がのるのは、いいんじゃないかなと思いますね。僕の音楽ものっています。プロモーションの一環としては、あり。

はなわさん

 私はあまり詳しくないのですが、そういう手段で初めて音楽を耳にすることもあるんでしょうね。プロモーションの一環としてならいいと私も思います。それが全部になってしまえば寂しいけど、きっかけになってくれれば。

佐藤さん

 三味線の爪ではじく音とか、「うわ、こんなことやってるんだ」って、生でしか聞けないですからね。CDだとそこまで想像しにくいから、生のほうが音源が楽しく聞けるかなと思います。

ありがとうございました!

お二人は今もヨーロッパを遠征中。またどこかで生で演奏を聴けることを楽しみにしています。

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左より、佐藤和哉氏、ムンク美術館館長、日本国大使夫妻、はなわちえ氏、ピアニスト 広田圭美氏 Photo:Asaki Abumi

最後に、ムンク美術館の館長であるスタイン・オーラブ・ヘンリクセン氏から、コンサートの感想をいただきました。(実は、館長は親日家!)

 「現代解釈を加えた日本の伝統音楽を聴く体験はすばらしいものでした。出光がムンク美術館のスポンサーとなっているご縁もあり、このようなコンサートの開催は長い間の伝統となっています。また日本からのアーティストが来てくれることを楽しみにしていますよ」。

はなわさんのブログには、オスロ観光の様子がつづられています。

Text:Asaki Abumi

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