日本茶カクテルとフレンチの可能性 ミクソロジストと星付きシェフを招いたイベントがパリで開催【ジャポニスム2018】

公開日 : 2018年11月23日
最終更新 :
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2019年2月まで、フランスにおいて日仏友好160年を記念した「ジャポニスム 2018:響きあう魂」が行われています。パリを中心としたフランス国内でさまざまな日本イベントが行われ、伝統文化からポップカルチャーまで、日本を知るきっかけにあふれています。

その一環の公式企画「日本の食と文化を学ぶ」シリーズとして、日本茶の持つ魅力と可能性をフランスにおいてより広く深く知ってもらうことを目的とした「日本茶レクチャー・ペアリング試飲会」が、11月19日にパリの料理学校コルドンブルーで開かれました。

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今回の日本茶レクチャー・ペアリング試飲会では2部構成で行われました。第1部は「日本茶大使によるレクチャーと試飲」、第2部は「日本茶カクテルとフランス料理のペアリング」です。

第1部を担当したのが、フランスで日本茶の普及活動を精力的に行っている、日本茶大使である飯森リカさん。お茶の歴史や種類と試飲を合わせて、お茶というものを総合的に理解します。煎茶、番茶、玉露、抹茶の違いなど、日本茶の基礎となる講義の他に、「茶」は英語では「Tea(ティー)」、フランス語では「Thé(テ)」ですが、どういう経緯でその呼ばれているのかという豆知識も教えてもらいました。

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「茶」の語源は中国の広東語「チャ」と福建語「テー」だそうで、広東語経由で広がった地域が「チャ」をベースとした呼び方で、福建語経由で広がった地域が「テー」をベースとした呼び方になったそうです! お茶に詳しい人なら当然の知識なのかもしれませんが、私は知らなかったため目から鱗が落ちました。

ちなみにヨーロッパは概ね福建を経由して海路でお茶が広がったため、概ね「ティー(英語)」「テ(フランス語)」「テ(イタリア語)」「テ(スペイン語)」になっていますが、ポルトガルだけは「シャ」。それはポルトガルは植民地をマカオ(広東)を経由してお茶が運ばれたため、広東語系の呼び方なんだそうです! いろいろとつながっているんですね。

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お茶の基礎を理解したら、第2部では日本茶の可能性を探るべく、日本茶カクテルとフランス料理のペアリングを試しました。4杯のカクテルと3皿のコースです。カクテルを担当するがスピリッツ&シェアリング株式会社の代表取締役社長を務める南雲主于三さん。料理を担当するのがレストランESのシェフである本城昂結稀さんと、同店でシェフパティシエを任されている井高真理子さんです。

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南雲さんは日本で今注目されているミクソロジスト(さまざまな食材を混ぜてオリジナルカクテルを作り出す人)。自身のイマジネーションを具現化したカクテルを提供するバーも、東京でいくつか経営しています。本城さんが営むレストランESは、パリ市内7区にあり、開業1年目にしてミシュラン一つ星に輝いたお店。それぞれの世界で先頭集団を走る方々のコラボで出されるメニューが、おいしくないわけがありません。

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まず食前酒として出された煎茶と玉露のカクテル「Beyond the Nature」。水出しで甘みを出した煎茶をベースに、煎茶をジンに漬け込み煎茶の味にボリュームを、玉露をベルモットに漬け込みフルーティーさを加えたそうです。大葉を青さのアクセントに、香り付けにレモンを用いています。

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特に印象的だったのが、グラスから香る超熟のコニャック。コニャックを少量だけグラスに注ぎスワリングすることで、グラスに香りが閉じ込められているそうです。そしてグラスを鼻腔に近づけた途端、コニャックの芳醇な香りがふわりと漂い、その後にカクテル自体の香りがやってくるという、緻密な計算に基づいて作られています。

2杯目の煎茶のカクテル「Sencha Gin Tonic」は、煎茶を漬け込んだジン(ビーフイーター)をトニックウォーターで割ったもの。煎茶のカテキン(渋み)とテアニン(うま味)が、ユズのピールと大葉にバランス良く合ったカクテルです。料理はホタテのカルパッチョとウニ、ベルガモット、シソです。ウニとホタテの甘さ、そして少しの塩気をカクテルがさわやかに包んでくれます。ジンの銘柄によって味わいが変わってくるそうで、南雲さんによると、ぴったりの相性を探すのもこのカクテルの楽しみとのことでした。

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3杯目はほうじ茶のカクテル「Resonance」。深煎りのほうじ茶に30年熟成のシェリー、ベリーフレーバーのあるベトナムのカカオニブを漬け込み、ポートワインを少量加えてあります。40年熟成のコニャック、ダニエルブージュ トヴューで事前にグラスをスワリングし、果物香とランシオ香をグラスに閉じ込めてあるそうです。そこに静かにカクテルを注ぐことで、カクテル本来の香りが分けられ重層的なカクテルになるといいます。

合わせた料理はリドヴォー(仔牛の胸腺肉)のソテー、シャントレル(ホウキタケ)、ジロール(アンズタケ)、キノコのエマルジョン。ほうじ茶系は料理に合わせやすいそうで、カカオの香ばしさとキノコの森の風味がとても合い、キノコのエマルジョンとからめられたリードボーが溶け合います。

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4杯目はデザートです。ココナッツのエスプーマ(泡状ムース)とココナッツのクリーム、パッチョンフルーツのシャーベットとジュレ(ゼリー)、マンゴーとマスカルポーネのクリーム、カカオのシュトロイゼル(そぼろ状のトッピング)に、抹茶のカクテル「Nouvelle Vague」を合わせました。

抹茶はデザートとの相性がとても良く、チョコレートやミルクなどと合わせることが多いそうですが、今回はパッションフルーツとのペアリングを楽しみました。南雲さんによれば、抹茶が持っている可能性は大きく、果物と抹茶の組み合わせが新しい波になればとの思いからカクテルを「Nouvelle Vague」と名付けています。バニラをアクセントに、甘みとココナッツウォーターのさっぱりした味わいが共存し合い、料理と喧嘩しません。

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南雲さんは2年前からお茶の新しい価値観に注目しており、お茶の新しい面を伝えられればといいます。ティーペアリングは年々知られてきていて、日本茶に限らず、中国茶などは魚介との相性が良いそうです。日本茶の場合も、煎茶、ほうじ茶、抹茶という、それぞれの3種類の特徴を生かして料理にも合わせられます。

日本茶のフランスへの輸出も年々増加しています。昨年の輸出量は前年比で60%増を記録しました。これから、ますますフランス国内で注目度が上がっていきそうですね。

筆者

フランス特派員

守隨 亨延

パリ在住ジャーナリスト(フランス外務省発行記者証所持)。渡航経験は欧州を中心に約60カ国800都市です。

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