バレエ「ジゼル」

公開日 : 2020年03月30日
最終更新 :
筆者 : HIROMI

Bonjour こんにちは!

昨日ご紹介した、パリ・オペラ座Webサイトから今試聴できる演目「ジゼル」について少しご紹介します。

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19世紀半ばに生まれたロマンチックバレエと呼ばれる演目のひとつで、初演は1841年。

当時の振付師タリオーニは、腕の長い娘、マリー・タリオーニに合うようにと両腕を交差させたポーズを振りつけたといわれています。

また、この演目の衣装はロマンチック・チュチュと呼ばれる、膝下まである丈の長いチュチュ。

当時は脚を出すことはまだご法度だったのです。フランスで生まれたバレエがロシアに渡り、超絶技巧を魅せるため水平に広がる形となりました。

バレエは声のない舞台ですから、仕草やポーズで気持ちと物語は進んでゆきます。

実は、脚本を読んでから鑑賞に足を運ぶのが当時のスタイル。

というのも欧米では日本に比べ識字率が低く、バレエを観にゆくということは、字が読める・脚本を手に入れられる客層だったというわけです。

映画のように話の筋を楽しみに行くのではなく、見どころをおさえにいくという楽しみ方ですね。

ですからあらすじを知っているとずいぶんわかりやすいです。

が、やはりネタバレになってしまうのでご注意ください。

▼オペラ・ガルニエのシャガールの天井画。最近では舞台装置の関係からクラシックバレエの演目はこちらではなく、オペラ・バスティーユで上演されます。

この写真のあと、あらすじです。

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ジゼルは踊りが好きな娘。貴族のアルブレヒトはジゼルと恋に落ち、こっそり逢いに村へやってきます。このときの朗らかなジゼルの様子がとてもかわいらしいのです。

また、ジゼルはアルブレヒトの愛を花占いで確かめるシーン。フランスにはマーガレットで恋を占う風習があります。花びらをひとひらずつもいでゆき、最後の一片にこの恋の行く末を託します。

 Tu m'aime. 好き。

 Um peu. ほんのちょっと。

 Beaucoup. とっても。

 Passionnément. 情熱的に。

 A la folie. 心の底から!

 pas de tout. まったく。

フランス流の恋占いはほぼ好きという結果になるのですね。

にもかかわらずこのシーンではハッとショックを受けるジゼル。その表情が恋する乙女そのもので、アルブレヒトがさっと花びらを一片捨てて細工することで、こちらまでほっとします。

ジゼルは心臓が弱く、村の若者たちの踊りに混ざる際も倒れてしまいますが、アルブレヒトと一緒にいられることがうれしくてついつい踊りを続けてしまいます。

一方ジゼルのことを好きな村の青年ヒラリオン。

アルブレヒトが身分を偽りジゼルを騙していることを知り、秘密を明かしてしまいます。アルブレヒトが貴族で婚約者がいることを知ったジゼルは気を失ってしまいます。

そのあとのジゼルはもはや正気ではなく、髪を振り乱し踊り続けます。その表情は悲壮そのもの。

恋にやぶれた衝撃からついには息絶えてしまうのです。

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第2幕、後半はヴィリという妖精たちの踊りから始まります。

悲恋で亡くなった若い娘たちが悲しみのあまり妖精となり、近くにやってきた男たちにその復讐をしているのです。

薄布を纏い、月光に照らされ踊る妖精たちの群舞は本当に霊のようで、白のバレエの真骨頂ともいえます。

トウシューズ(ポアント)はつま先部分に木が入っているため、木の床のステージではコツコツと音がするものなのですが、この舞台では跳ぶシーンでもほとんど音がしません。

人ではなく、霊を演じるため、軽やかに音もなく演じることが要求される難しいシーンです。

ヴィリの女王ミルタがジゼルの霊を蘇らせます。このミルタも主役級の大役です。

この舞台ではエトワールのValentine Colasanteが務めています。

厳かで決して赦しはしないという決意の表情でこちらまで責められているような気持ちになります。

ヴィリたちは日本の幽霊と違い、人間味があふれているように私は感じました。

自分の気持ちを正直に出すお国柄でしょうか。

ジゼルに花を添えに来たアルブレヒト。騙していたとはいえ、ジゼルのお墓の前で涙を流すアルブレヒトに身につまされてしまいます。マチュー・ガニオさん演じるアルブレヒトは涙が似合います。

悲嘆に暮れる彼の隣でジゼルは添え手なくひとりで踊ります。

その際のアダージョというポーズもジゼルの魅せどころのひとつです。

恋する乙女、失恋で正気を失った様子、アルブレヒトが憎いけれど愛しい......言葉はひとつもないのに痛いまでにジゼルの気持ちが伝わってきます。

ミルタの責めにジゼルは必死にアルブレヒトを庇います。

この最後のふたりのパドドゥpas de deuxは言葉も出ないほどに美しいです。

霊である以上、ジゼルは息が上がることも足音を立てることもありませんが、実はこれはたいへんなこと。悲恋の心情に加え、技術的にもジゼルは「堪え」のバレエでもあります。

ジゼルの懇願も叶わずアルブレヒトは息も絶え絶えに踊り続けますが、夜が明けます。

ヴィリたちは森へ帰り、ジゼルも姿を消します。

目覚めたアルブレヒトは残された花を見てすべてを理解するのです......

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現在サイトで試聴できる舞台はジゼル役がDorothée Gilbertドロテ・ジルベール、アルブレヒト役はMathieu Ganioマチュー・ガニオという華々しい舞台。

ドロテ・ジルベールさんとは昨年レペット本店で開かれた握手会でお会いしました。

とても美しい、それでいてチャーミングな方でした。

マチュー・ガニオさんは日本でもとても人気の高い方ですね。

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エトワールとは「星」。プリンシパルのことで主役を担うバレエ団のトップということ。

パリ・オペラ座には男女それぞれに9名ずつ。

☆☆☆試聴はこちらから☆☆☆

※なお2020年4月15日までの公演はすべて休演が決定しています。

今後の状況次第では延長の可能性が十分にあります。

春の夜にはぜひご自宅でパリ・オペラ座の舞台をお楽しみください。

それではまた、à bientôt!

筆者

フランス特派員

HIROMI

2018年より在仏。フランスにて妊娠、出産を経て現在子育て中。

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