宗教的な問題を含む、歴史的な装飾

公開日 : 2022年01月13日
最終更新 :

レーゲンスブルクの観光が再び可能になるのは、一体いつになるのでしょうか。

コロナの影響を受け、町のなかでは色々な変化があります。

観光ガイドを本職とする? 私にとって、とても興味深いテーマが2021年11月8日(土)のに新聞に取り上げられていましたので、今回は少し掘り下げてみようと思います。

今回取り上げるのは、中世のドイツ人(キリスト教徒)がユダヤ人を嫌い、ユダヤ人を不浄の動物とされる豚と一緒に表現し、教会などに彫刻を施していたことに対して"現代社会の考え方にそぐわないことから、彫刻などを破壊するかどうか"という問題を解決したという話です。この彫刻は、一般にJudensau(ユーデンサウ)として知られています。ドイツ語で、Judenはユダヤ人を表し、Sauとは雌豚のことをいいます。ユダヤ人が豚の乳を飲む姿をモチーフにしたものです。

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この彫刻がどこにあるかというと、建物の南側の外壁。下の写真で、赤く印をつけた部分。

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この彫刻の下には解説のプレートが掲げられており、

その解説の文章を、「人種、民族、宗教を超えて、「嫌悪感」というのは人を殺し合うことにつながった歴史があることを伝え、今後それを教訓とすることを望む」というような内容に変更されるようです。

つまり、この彫刻は撤去されることなく解決に向かったとのこと。

実はユダヤ人をモチーフとした彫刻に関する問題はレーゲンスブルクに限ったことではありません。

例えば、私がサッと調べただけでもケルンの大聖堂にも、ユダヤ人をモデルとした中世のモチーフが2ヵ所あります。

ひとつは、祭壇のところにある椅子(Chorgestühl)。1308~1311年頃のもの。

もうひとつは、雨どいの水が流れ出す部分(Wasserspeier)。1280年頃のものです。

Wasserspeierとは? イメージがわかない方のために、レーゲンスブルクの大聖堂のものを参考までに紹介します。(これは、今回のテーマのJudensauには関係ありません)

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写真で、柱に取り付けられた動物の像があります。背中から頭にかけて、雨水が流れるようになっており、口からその水が下へこぼれるように作られています。

ほかにも、例えばヴィッテンベルガー(*)の教会にもレリーフがあります。当時は、頻繁に教会にこの類の彫刻が施されていたようです。

* Wittenberger、ザクセン=アンハルト州(州都マクデブルク)、ライプツィヒから北へ約60km

レーゲンスブルクには、現在もユダヤ教の方がたくさんいます。また980年頃からユダヤ人街があったといわれています。レーゲンスブルクにあるシナゴーグについては、こちらで紹介していますので、是非併せてご覧ください。

今回のテーマですが、本当は非常に奥が深いもので、簡単には言い表せない部分です。

ただ私たち日本人には馴染みが薄く、こんな問題があるんだということを知っておくのも悪くないのではないかと思いました。

私自身は、キリスト教でもユダヤ教でもありません。単なる公認観光ガイドの立場で、気になる内容であったので、ご紹介させていただきました。

言葉足らずの部分、曖昧な部分がありましたら、お許しください。

今回は、レーゲンスブルクの大聖堂の彫刻について書きましたが、大聖堂について過去に書いたブログ記事をご参考までにリンクしておきます。

2017年9月1日 大聖堂・聖ペトロ

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