色彩の魔術師 〇色を識別するゴッドアイ、ティツィアーノ展

公開日 : 2013年06月09日
最終更新 :

只今、ローマの中心部にてティツィアーノ展を開催しています。

大人気の展覧会もいよいよ終了間近となりました。(2013年6月16日まで)

今回、なぜ大人気なのか、その理由と見所ポイントを特集します。

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↑ 悔悛するマグダラのマリア 1531~35年頃。 

マグダラのマリアは娼婦であったことをキリストの前で懺悔します。

画像掲載許可取得済み

Tiziano Vecellio, Maddalena, 1531 - 1535, Olio su tavola

Galleria Palatina di Palazzo Pitti, Firenze

© Ministero per i Beni e le Attività Culturali

ティツィアーノとは、泣く子も黙るイタリアのルネサンス時代の大画家で、俗に"色彩の魔術師"と呼ばれています。

イタリアの高校生向けの美術史の教科書でも、ティツィアーノは非常に多くのページがさかれていて、筆者も大学の試験では必ずといっても良い程、毎回根掘り葉掘り質問され、冷や汗ものでした!

そんなティツィアーノの展示会は、例外なくイタリアでも話題で2度、3度と訪れる人も少なくないようです。

入場者の割合は筆者が訪れた2回とも、イタリア人がほとんどでした。それだけティツィアーノが愛され、注目され続けてきたことを感じます。彼らにとっても誇りであり、偉大なんですね! 

5.JPGのサムネール画像

↑ ティツィアーノ展が行われている建物は、大統領官邸のあるクイリナーレ広場にある。

夏目漱石は明治40年に東京美術学校文学会の開会式に講演を依頼された際、

「普通の人が一色を認める所においてティツィアーノは五十色を識別します。

これは単に画家だから重宝だというばかりではありません。このように選択肢が多い人は、人間として比較的融通の利く生活が遂げられるという意味になります。」 というスピーチをしました。

1490年頃にヴェネツィアの近郊で生まれたティツィアーノは90歳近くまで長生きをし、海外の王侯貴族から注文が来るなどイタリア国内に留まらず、海外でも大成功し、晩年まで名声は衰えませんでした。

公私共にあらゆる成功を手中に収め、なるほど融通の利く人生を送ったのかもしれません。

彼は、色彩に重点をおくといわれる、"ヴェネツィア派"を代表する巨匠で、肖像、風景、古代神話などあらゆる絵画分野に秀で、独自の筆遣いと色彩感覚に特徴があります。

晩年は盲目となり、筆を使わず、指で絵の具をこねるようにして描いたものも多いです。

それでは個人的ですが私のお奨め見所7点です。

1.とにかく色の多彩さをご覧下さい!

色彩の魔術師とはいいますが、緑色はあまり好まなかったんですよ。通常、とある聖人の服の定番色は緑色ですが、ティツィアーノは赤にしています。

2.肖像画のモデル人物の顔に心理状態が良く現れていて、生きているよう。

3."皇帝カール5世と猟犬"の肖像画では、犬がご主人をいとおしい目で見ています。今にもクンクンいいそうです。

カール5世は狩りのお供をしてくれるこの犬が大好きで、ふたりはいつも一緒でした。

4.肖像画のモデル人物が身に着けている、服装や装飾品を良く観察してみて下さい。ティツィアーノが生きた時代の人の服装ですね。例えば、当時の人はあまり清潔にしていなかったので匂います。ある肖像画の女性モデルさんは臭い匂い(体臭)を紛わす為、バラの花を練りこんだペーストを玉にし、それをベルトに仕込んで身に着けています。

手には動物の尾から作ったミニ毛皮状の"ノミ飛ばし"を持っています。風俗がよく分かりますね。その他には男性の手袋も観察ポイントです。

5.展示コースは、入り口からほぼ作品の年代順に進むようになっており、彼の画風の変遷が良く分かります。

年をとるにつれて、色彩はどんどん暗くなり、早いタッチで描いた絵になっていきます。若い頃はじっくり丁寧系でした。

6.十字架にはりつけにされたイエスキリストの脇腹から血がどくどくとしたたり落ちていますが、通常あまりないことです。

7.色彩を重視するため、デッサンは得意でないと非難されることもありましたが、今回はなんとデッサンもひっそりと展示してあります。

6.JPGのサムネール画像

↑ 写真中央が入口。切符売り場は中にある。週末は入場の為の列ができる。

ブックショップは切符売り場の隣にあり、今回のティツィアーノ展のカタログや"色のマエストロ達"のヴェネツィア派の書籍などが充実しているので、ティツィアーノファンの方必見。

インフォメーション:

会場 Scuderie del Quirinale (スクデリーエ デル クイリナーレ)

住所 Via XXIV Maggio 16, Roma

開館時間 日曜~木曜日は10:00~20:00、金曜および土曜日は10:00~22:30 

(ただし切符の販売は閉館1時間前に終了)

入場料 12ユーロ

行き方 最寄り駅地下鉄A線 Piazza delle Repubblicaで降り、徒歩でクイリナーレ広場まで向かうか、またはVia Nazionale (ナツィオナーレ通り) にあるバス停40-60-64-70-117-170-H番のいずれかのバス停で下車し徒歩。

*ティツィアーノ展会場から、徒歩5分以内でトレヴィの泉に行けます。

筆者

イタリア特派員

阿部 美寿穂

ローマからイタリアの日常やイタリア旅行に役立つ情報などをお送りしています。

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