教会らしからぬ絵(?)があるサン・サーバ教会。

公開日 : 2014年05月09日
最終更新 :

本日は外国のガイドブックには "教会らしからぬいかがわしい絵(寝室に父の横で3人の少女がヌードで横たわっている)が描かれている教会!" などと紹介され知られているサン・サーバ教会(Basilica di San Saba)をお届けしたいと思います。

この教会は歴史的にも非常に重要な教会なのですが、日本ではまだほとんど知られていません。

ところで、ローマには中心部だけでも主要な大聖堂が30、教会が約290あります。

簡素なものから豪華絢爛な教会(その頂点にヴァティカン市国のサン・ピエトロ大聖堂)がありますが、特にこのサン・サーバ教会は簡素系の教会で、そのシンプルさが美しい教会です。

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↑ 入口です。

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↑ 中に入ります。この皆さんが目にしている部分の現在の教会は12~13世紀の建立ですが、実はこの地面の下にもう一つ、もっと昔に建てられた初期の教会があります。

この初期に建てられた7世紀の教会は、ローマにおいて政治的にもとても重要な位置を占めていました。

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↑ 歴史では7世紀に入ると、キリスト教の東方教会があったエルサレムがじわじわとイスラム教徒に脅かされ始めます。そんな時、迫害を恐れて命からがらエルサレムから脱出してきた修道士達がローマのこの場所(小さなアヴェンティーノの丘)に逃げ込んで来ました!そしてここで何とか頑張ろうと心機一転、コミュニティーを作り始めるのです。そして彼らはもともとこの場所にあった礼拝堂の管理を任されたり、立派な修道院を建て始めます。

そしてこのサン・サーバ教会はローマにおける東方系教会のボス教会(拠点)となるのです。

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↑ 薄暗く、簡素で静かでいい匂いがして(食べ物の匂いではありません)、とても雰囲気のある教会です。

教会の壁などに直接描かれているフレスコ画の中で、この写真中央の絵が "教会らしからぬ絵" といわれる一番有名なものです。入口を背にすると、左身廊にあります。

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↑ こちらです。13世紀のフレスコ画です。

さて、どうして3人の少女がベッドの上で裸で横たわっている絵が教会の壁に描かれてしまったのでしょうか?きちんとピンク色の毛布も掛けていますね!

そして、何故か背を向けたお父さんも一緒のベッドで眠りにつこうとしています。

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↑ アップです。近くで見ると少女達は筋肉もりもりの少年に見えないこともないですが、いずれもロングヘアで、この3人の顔はそっくりなので三姉妹です。

この絵を読む鍵は、少女達の上の方にいる男性です。この男性の右手の動きにご注目下さい。窓から何かを少女とお父さん達へ落とそうと(投げ入れようと)していないでしょうか?実はこの男性こそ、この絵(物語)の主人公なのです!

この絵のストーリーは、"ミラの聖ニコラオスと3人の少女(3人のオールドミスとも!)" を題材にしたもので、この何かを投げ入れる男性は聖人のニコラオス(San Nicola di Bari)です。

聖ニコラオスは270年頃に生まれたキリスト教の主教(司教)です。

彼は、かつては大金持ちであったが事業に失敗して貧しくなってしまった商人の家の窓から夜中に現金を投げ入れるという行為をします。この家は貧しさの為に娘達に売春をさせなければならない程行き詰っていて、持参金がないので誰一人お嫁に出すことも出来ないでいました。

それを知ったニコラオスはこっそり夜中に来て、2回、お金を窓から投げ入れます。この2回分の現金がたいそうな額だったので、父は娘達を結婚させてやることができました。ある時、誰が一体こんなことをしてくれるのだろうかと夜中に密かに見張る父の前に、ニコラオスが現れ、またもや3度目の現金を投げ入れます。そこで父はニコラオスの正体を知り、感謝のあまり地べたにひれ伏してお礼を述べるのです。

この壁の絵はそんな聖ニコラオスの善行を表現したものです。

ちなみに、この聖ニコラオスのストーリーが由来となって、後に、夜中にプレゼントを届けるというサンタクロースが生まれました!

サンタクロースは聖ニコラオスのことだったのです。(ラテン語ではニコラウスと発音するので、"聖" を意味する "サン" を付けると、サンタクロースの発音により近いことが実感できます)

彼の聖遺物(体)は、イタリア半島のかかとの部分のバーリ(Bari)市のサン・ニコーラ大聖堂(Basilica di San Nicola)の中に今でも保存されています。

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↑ スペースの関係で今回は説明はできませんが、他にも美しいフレスコ画がたくさん残っています。

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↑ 写真右手に見える入口から中に入ると、初期教会(7~8世紀)の壁に描かれていた大量のフレスコ画を剥がし取ったものを、もう一度パズルをするように組み立て直したものを展示しています。

一般的な観光客の方は、3人のヌードを見るとさっさと帰ってしまうのですが、実はこちらの部屋に展示されている古い時代のフレスコ画の方がずっとずっと貴重だったりします。お時間が許せば是非見学してみて下さいね!

インフォメーション:

住所    Piazza Gian Lorenzo Bernini, 20 です。チルコ・マッシモ(Circo Massimo)から徒歩約10分。

オープン時間   月曜~土曜日は8時~12時、16時~19時30分。日曜・祝日は9時30分~13時、17時30分~19時30分。

*ご注意:ミサの時間は月曜~土曜日は9時、18時30分、日曜・祝日は10時30分、12時、18時30分です。ミサの時間の見学及び写真撮影はお控え下さい。   

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↑ お知らせするのが大変遅くなってしまい申し訳ないのですが、コーディネートさせていただいた本が出版中です。(2013年5月号 美術出版社さんより)

イタリアのルネサンス時代の大画家 ラファエロ特集で、ラファエロが活動した主な2都市(フイレンツェとローマ)で彼の軌跡を辿ります。美しい写真がいっぱいですので、イタリアに興味がある方は楽しめると思います!

筆者

イタリア特派員

阿部 美寿穂

ローマからイタリアの日常やイタリア旅行に役立つ情報などをお送りしています。

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